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00年代のトランスサウンドが再び!! リバイバルだけじゃない、その正統進化ともいえるコンピレーションが発売。

今週末10月27日に東京で開催される日本最大級の音系・メディアミックス同人即売会[M3]

この催しで頒布されるwavformeのコンピレーション最新作"WAVES OF EUPHORIA 4"のプロモーションのお仕事を頂き、本作のライナーノーツを書かせて頂きました。

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WAVES OF EUPHORIAとは


"WAVES OF EUPHORIA "シリーズはトランスというジャンル、それも特定の時代に特化したコンピレーションです。2019年にwavformeから1作目が発表され、これまでに3作がリリース。

"WAVES OF EUPHORIA 4"はそのコンセプトを受け継ぐ最新作で、当時からシーンを知る人にも今トランスに夢中な人にも聴いて頂きたいタイムレスな2枚組の1タイトルとなっています。

収録されているのは特に00年前後に世界的な大ブームとなったトランスミュージックの次の黄金期ともいえる00年代中期頃をイメージしたサウンドが中心。この時代はEuropean Tranceと総括されるヨーロッパ系のトランスが盛んでした。

巨大なトランスフェスTrance EnergyやSensationの全盛期もこの頃

Armin Van BuurenをトップとするArmada MusicやAbove & Beyond主催のAnjunabeatsといった現在もダンスシーンの中心にあるレコード会社が最もトランスに熱を入れていた時代でもあり、Tiestoが自身のコンサートでProgressiveからTech Tranceまであらゆるトランスをプレイし、Paul Van Dykは現在のアップリフティング系の始祖のようなサウンドを生み出し、Lost LanguageやColdharbour、AVAがProgressive Tranceのシーンを切り開いた時代。

また、トランスシーンでは多くのサブジャンルが誕生し、主要なDJ達とレコード会社がシーン内で覇権争いをしている時代でもありました。

来年で活動25周年を迎えるAnjunabeats


そんなあの頃のサウンドにスポットをあてた熱が籠ったコンピレーションのプロモーションに関するお仕事を頂き、私としても「これをやらなければ何故25年以上もトランスを好きで居続けているのか?!解説できるのは私しかいない!」位のテンションと熱量で即答させて頂きました。

あの頃に我々を夢中にさせたトランスは現在でも主流や構成を変えて良いシーンを築き上げています。新たなトレンドも多く生み出されてきました。が、もしも「当時のサウンドが今の環境で進化を遂げていたら果たしてどんな音になっていただろうか?」と思う方もいるのではないでしょうか?

現在の環境や技術、知識で作られたそれらはノスタルジックなのか、進化系なのか。その答えがWAVES OF EUPHORIAシリーズにはあります。夢の続きのようなその音を見つけにいきましょう!!


筆者による本作のライナーノーツ


 私が『Waves of Euphoria』シリーズを最初に聴いたのは浜松へ向かう名古屋の車内だった。  忘れもしない2021年の秋。車を運転していた『Dominant Space』のMasaya君のスマホに本作第2弾のデモが届き(彼らもOrbitという曲でコンピレーションに参加していた)、「これをBGMにしながら向かおう」という提案から我々はそのコンピレーションを耳にした。

 車内に流れるのは’00sトランスをリブートした収録曲の数々。特にこの時代を生きていた30〜40代のトランスファンであれば琴線に触れることが間違いないその収録内容は、当時はまだ20代でトランスに夢中だった我々のテンションを跳ね上げた。エピックをテーマにしたそのコンピレーションは、法定速度をしっかりと守る車をまるで走り屋のそれで飛ばしているかのような空気に包み込んだ。その衝撃は今でも脳裏に焼き付いている。

 今回紹介させて頂く『Waves of Euphoria 4』はそんな白昼夢をみせてくれたシリーズの最新作だ。 シリーズはこれまでにも『REMO-CON』や『Hiroyuki ODA』、『Ken Plus Ichiro』 (NISH)といったレジェンド枠から現在『Otographic Music』や『Lostalgic Recordings』からリリースを続ける多くのアーティストをはじめ、国内の多くの人気DJ / アーティスト達が参加している。また、現在ではトランス以外のサウンドをメインサウンドとしているDJ / アーティスト達が当時の熱量で再びトランスを手掛けて参加しているのもこの『Waves of Euphoria』シリーズの魅力と言えるだろう。

 4作目となる本作は当時のいわゆるユーロ系(AnjunabeatsやA State Of Tranceなど)のトランスを中心に、日本でも絶頂を誇ってたハードトランス、『Alphazone』のようなジャーマン系、更に『Lost Language』や『Coldharbour』のようなプログレッシブとユーロ系が混ざり合ったようなサウンドまで。当時のトランスへの愛がなければ決して作り得ないコンピレーションとなっている。

 参加しているアーティストもベテランから当時のライジングスターで、現在までシーンを牽引していた世代、そこにリスペクトを持つ新世代まで。一つのテーマに世代を超えたシナジーを起こしている。おそらく見つめている時代は一緒であっても感じ方や解釈はそれぞれ違うものなのだ。その点もトランスを聴き続けてきたファンにはとても嬉しい。

 本作は21曲もあるので個別に触れられないのが残念だが、筆者である私は『crayvxn』の曲が特に気に入っていて、本作は当時のシーンを追っていたリスナーにとっては特にたまらないノスタルジックな気持ちにさせてくれる1曲だろう。

 トランスという音楽自体、2024年の現在も新しいトレンドが生まれ続けては興隆を繰り返しているので、このコンピレーションの次回作が生まれる頃にはきっと"あの頃"の時代も解釈も少しずつ変わっていくことであろう。順調であれば次回作は5。どんなレジェンドが参加してくれるのか、またどんなライジングスターが生まれているのか?今からとても楽しみです。

DJ NECO [Trance Family Japan / Analog Journey]


製作サイドによる解説 (試聴あり)

wavformeのコアメンバーで本コンピレーションの製作者。また、00年代当時からヨーロッパ系のトランスミュージックの制作に携わるTomohiko Togashiによるコンピレーション全体の解説が届けられたのでここに掲載させて頂きます。

彼自身 DJ / アーティストとして当時から2024年現在に至るまで精力的に活動している存在で、今回の解説では当時のシーンでの背景のみならず発注に関する細やかなオーダーも読めます。特に制作目線からの解説は貴重ですね。


解説されている楽曲はこちらのリンクから全曲試聴が可能。
CD2枚組の為、1はDisc1、2はDisc2の収録曲となっております。
BGMにしながら読み進めて頂けるとより楽しめること間違いなしですよ。


1-01. BEC8723 - Narrativeselfness

このシリーズ一作目からレギュラーで楽曲提供しているBEC8723。
同じ展開を繰り返さないという奇抜な発想と、モダンなテックトランス + アップリフティングを融合させ、ピークタイムにもって来いのアッパートラックに仕上がっている。

1-02. Nhato - Light of Sirius
2006〜10頃のテックトランス全盛期のサウンドをリファレンスにし、現代版へリファインした楽曲というオーダーで取り組んでもらった。
綿密に作り込まれたサウンドから形成される複雑なドロップパートと、スリリングなアルペジオが印象的な壮大なブレイクによって展開する楽曲だ。
各パートの切り替わりが織りなすストーリー性がまさに当時の要素を現代解釈した楽曲になったと言えるだろう。

1-03. Spawn - Silo
このシリーズで数多くのトラックを提供しているSpawn。
ドラマティックなメロディラインとパワフルなサウンドが彼の最大の持ち味であるが、その個性が遺憾無く発揮されたトラックに仕上がった。
強烈なVowelサウンドが印象的なビルドも相まって対比が楽しめる構成も魅力的だ。

1-04. N-sKing - Leisure
アップリフティングを主軸に国外レーベルで数多くのリリースを果たしているN-sKing。
クラシックサウンドというオーダーに対して彼の出した回答は、当時のグルーヴ感をほぼ完璧に現代のサウンドで再現してしまうというものだった。
当時を思い起こさせる流麗なメロディラインと、新鮮な音像の融合を果たした魅力的なトラックになっている。

1-05. illi - Ens Qua Ens
イラストレーターとトラックメイカーの二つの顔を持つアーティスト、illi。
エモーショナルなメロディがクラシックトラックに通じるものがあると感じ、自由に楽曲制作してもらった。
ブレイクから鳴り響く情緒溢れるアコースティックギターとシンセリフの組み合わせは、多感な10代に受けた心揺さぶられる感情を呼び起こしてくれた。

1-06. Sou Enomoto - Ephemeral Life
アップリフティングをメインに国内外でハイクオリティなトラックを量産し続けているSou Enomoto。
ピアノリフを主軸にしたシリアスなビルドから展開し、壮大なブレイクと共に現れるパワフルなメロディラインは必聴。身体中のエネルギーを呼び起こすような目の覚めるサウンドは目を見張るものがある。

1-07. Taishi - Faded Glory
圧倒的な空間表現と重厚な世界観が特徴的な、国内シーンでもNhatoに並ぶ重要人物のTaishi。
トラック全体を自らのフィールドへ引き込むかのように鳴らされるリードシンセはまるで轟音。
感情を底から絞り出したかのような激情的なサウンドによってドラマティックな雰囲気を演出している、必聴の一曲。

1-08. Amane Oikawa - Blue Moment
「メロディ・哀愁感・ドライブ感」といったトランスに必要な構成要素をハイクオリティかつ的確に組み合わせた1曲。今も昔もトランスが好きな人間が愛する要素が全て詰めこまれており、10/18に行った #AOTC での本CDのエクスクルーシブセットではこの楽曲を最後に使用した。
トレンドの移り変わりの激しいシーンの中でも「どう盛り上がってほしいのか」が明確な楽曲というのは非常に貴重だと再認識させられた。

1-09. Wayf4rer - Prosopagnosia
爽快感溢れるシンセリフが特徴的なWayf4rerの楽曲。
全体のサウンドのトーンの揃いが美しく、そこから感じさせる豊かな音像には自分がトランスの最大の魅力と感じている「浸れて踊れる」を強く感じさせてる1曲となっている。

1-10. Tomohiko Togashi - CQ
拙作。2007~10にかけての「Anjunabeats」や、Daniel Kandi主宰の「Always Alive」などのサウンドを目指して制作した。当時の特徴であるエレクトロ要素が垣間見えるユニークなベースラインと、エモーショナルなシンセリフの解像度の高い表現が出来ていると自負している。

余談だがタイトルの由来は「Seek You」の文字遊びである。
我こそは、という方はデモを送ってほしいという想いを込めています。

1-11. Nago - Noctilucent
情景豊かなメロディラインが特徴的なNagoによる本作は、アップリフティングを主軸としながらも弾けるようなPluckサウンドが主軸となった個性的な1曲。
他の楽曲ではSupersawの装飾として使われることの多いPluckサウンドだが、メインに据えてもまた違う世界が見えてくる抜群のセンスを感じるトラックに仕上がっている。

2-01. Tomoya Tachibana - Day Is Done
『Sevensenses Recordings』の作品に数多く参加されていたTomoya Tachibana氏に参加してもらうことが実現した。
個人的にレジェンド的な存在として、彼に楽曲提供をして頂いたのは感慨深いものがあります。
ディープな空間処理と力強いサウンド、そして何よりも一つの型にハマらない縦横無尽なメロディラインが魅力的なトラック。
当時の彼の個性をそのままに、よりアップデートされた世界観を堪能してほしい。

2-02. Maozon - Childhood Memories
本人からの希望があり、2010年ごろの若干EDMの影響を受け始めた「Enhanced Records」などが主にリリースしていた楽曲を再解釈したMaozonのトラック。
トランスは時代によってサウンドイメージが異なるジャンルだが、この楽曲では当時の特徴である縦ノリで突き進む力強いビートが再現されている。
タイトルの通りどこかノスタルジーを感じさせるメロディも印象的だ。

2-03. Clion - Perfect Circle
ここ1, 2年でトランスのトレンドは音数少なめにシフトしてきていると感じている。高い音圧とサウンドのクリーンさを実現するのにとても重要なファクターなのだが、Clionのこの楽曲ではその方法論が最も積極的に取り入れられている。
上記のファクターを実現しつつ聴かせるトラックに仕上げるためには、元の音をどこまで正確に作り込めるかが重要だが、この楽曲の魅力的な部分は職人技のようなスキルによって成り立っていると感じた。

2-04. KaNa - Eightfold
様々なジャンルへの深い造形を高いプロダクションスキルでまとめ上げる実力派アーティスト、KaNa。
暗さの中に希望があるようなメロディライン、コードプログレッションはクラシックトランスの数多くの楽曲で見られる特徴の一つである。本作ではその特徴を取り入れつつも、KaNa自身の個性を存分に堪能できる楽曲に仕上がっている。

2-05. crayvxn - Ventura
収録楽曲の中で特にクラシックサウンドに近い表現が出来ていると感じている楽曲。
細部の作り込みとテクスチャーの豊かさがあり、特に随所で鳴らされるFXのフィルターが響かせるレゾナンスは、当時の楽曲でも多く聴くことができる特徴的なサウンドである。
crayvxnの細部に向けた観察力と高い制作スキルが垣間見える楽曲だ。

2-06. Amutik - Emanation
ハードトランスを軸に制作された今作唯一の楽曲。
強靭なトラックに、ハードトランスの特徴とも言えるダイナミックなメロディラインが目を見張る。
そこにこの曲の特徴である和の要素が融合し、独自の世界観を築きあげていると言えるだろう。

2-07. Kohta Imafuku - Katharsis
フェイザーエフェクトを巧みに使用したリードシンセが、当時のサイバートランスを想起させるサウンドになっている。
こういった当時こそよく聴くことができたが、現在はあまりアプローチされていない技術を再発見できるのも本作の魅力だと考えている。今だからこそ新鮮に感じられるこのトラックはまさにモダンクラシックサウンドを体現していると言える。

2-08. MK - Yesterday
Shadw名義での活動も行っているMK。今回の楽曲は力強いシンセリフとボーカルで構成されており、ルーツに立ち返った楽曲であると言えるだろう。
シンプルな構成ながらも印象的に響くアルペジオが相まり、クラシックトランスのゆとりあるふくよかなサウンドを魅力的に聴かせる一曲。

2-09. Ryo Nakamura - Asteroid
トランスの力強さを感じさせるマッシブなベースラインと、美しいメロディを奏でるPluckサウンドを見事に融合させたRyo Nakamuraのトラック。
プログレッシブハウスでも国内外のレーベルで活躍している彼のメロディラインは、本作でも随一の繊細さを見せてくれる。アルペジオと共に全ての要素が繊細なテクスチャーを生み出しており、必聴の一言。

2-10. Noshi - Fluore
ラストを飾るのは国内レーベルで多くのアップリフティングトラックを手がけるNoshi。
強靭なベースラインのドライブ感、そしてまだ見ぬ未来を予感させるようなメロディライン。
力強さと繊細さが融合したこれぞメロディックトランスと言えるサウンドを体現しており、ラストを飾るにふさわしい1曲だ。




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