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長年憧れだったお店に行ってみたら冷めてしまったお話
そこは岐阜駅の近くにあるもつ焼き屋さんだった。煙がもうもうとした店先で串を焼いていて裸電球がぶら下がり、テーブル代わりにしたビールケースが歩道上に出ていて、そこで楽しそうに談笑しながら飲み食いしてる会社帰りの大人たち。高校生の時にたまたま近くを通って見かけた時から惹かれた。お酒が飲めるようになったら、あんな体験をしてみたいものだと。
時は流れて東京に来てから、蒲田を始め、有楽町や新橋や浜松町の立ち飲み屋をあちこち行くようになった。そんな感じのビールケースをテーブル代わりにして歩道で飲んでるようなお店にも何軒か行ったけど、いつも心は岐阜のあのお店にあった。
高校を卒業してから30年目の夏の日、用事があって岐阜へ一人で行った。実家で用事を済ませてから戻ってきた岐阜駅。平日の夕方。これはあの店に行くしかないだろうと、金の信長像を尻目に店に向かった。30年前と変わらない佇まいでそのお店はあった。
「入れますか?」
と店員の女性に聞いたら店内を案内してくれた。本当は外が良かったんだけども、初めての店では店員さんに従うのが良い。テーブルはおそらく複数人向けなのだろう。通されたのは8人も座ったらギュウギュウ詰めになりそうなカウンター状のテーブル席。先客がいる隣を案内された。まずは瓶ビールともつ焼きや煮込みなどを注文。すると隣にまた別の客が来た。座ってはいるもののダークダックス状態。両隣がタバコを吸わないのが不幸中の幸いだったが、隣の人が見てるスマホが目の前に見える状態。東京でもここまでみっちり座らされることはないんだけどね…。
出てきた串もまぁ美味しかった。モツ煮も悪いくなかった。店員の応対は可もなく不可もなく別に不満はなかった。詰めさせられたのもこういうお店だからと思っていたのだけども、なんとなく「コレジャナイ」感があった。最初に頼んだ串をつまみにビール一本飲み干して店を出ることにした。この手のお店に来たらビール数本に、気分次第で日本酒にも行くんだけどね。
消化不良のまま出た店の軒先には、憧れだったビールケースのテーブルで一人で飲み食いしている人がいた。なんだ一人でもそこ使ってよかったのね。変に遠慮しないで聞けばよかったなと、がっかりしながら歩道を見たら、車道寄りにある黄緑色のトランス、中部電力の地上設備をテーブル代わりにしている若い兄ちゃんがいた。そこもテーブルにしちゃうんだ!? と思ったと同時に、その兄ちゃんがビール片手にスマホ見ながらモツ煮を犬食いしている姿が目に入った。長年の熱かった思いが一気に冷めた。お店自体が "Not for me." だったところへ、上品とは言えない姿を目の当たりにしてしまった辺り。こういう客層なお店なのね。と。
これなら岐阜駅の円相くらうどに行ったほうがよかったなと思いながら、岐阜をあとにした。名古屋駅の地下街で買った風来坊の手羽元が美味しかった。