第27回柔道整復師国家試験 柔理Part7
27-82 棘果長が延長するのはどれか。
1.デュベルニー(Duverney)骨折
2.マルゲーニュ(Malgaigne)骨折
3.大腿骨頸部内転型骨折
4.股関節後方脱臼
棘果長は上前腸骨「棘」と脛骨内「果」の間の距離。転子果長は大「転子」と腓骨外「果」の間の距離。
1.デュベルニー骨折は腸骨翼単独骨折。腸骨翼の骨片は内・外腹斜筋と腰方形筋によって外上方転位。上方転位の骨片に上前腸骨棘がひっついているので(変な言い方やけどな)棘果長は延長する。転子果長は不変。
2.マルゲーニュ骨折(垂直重複骨折)は前方で恥骨枝、坐骨枝が折れ、後方で仙腸関節が脱臼するか仙骨が垂直骨折しているもの。簡単に言ってしまうと高所から片足ついて飛び降りたショックで骨盤が左右半分に割れてしまい片方が上にめり込んだ状態。上前腸骨棘と内果の間にも、大転子と外果の間にも破綻はないから棘果長も転子果長も正常。
3.大腿骨頸部骨折では大腿骨は短縮転位しているので棘果長は短縮。患肢短縮の原因が大転子より中枢にあるので大転子高位が証明できる、言うのも覚えといてね。
4.股関節後方脱臼では大転子高位を証明できる。
答え:1.
27-83. 大腿骨骨幹部骨折で誤っているのはどれか。
1.介達外力によるものが多い。
2.斜骨折は再転位の傾向が強い。
3.開放性骨折となることがある。
4.ショック、合併症に十分注意する。
1.大腿骨は人体最大の長管骨であり、更に分厚い軟部組織に覆われているからちょっとやそっとでは骨折せえへん。例えば交通外傷とか高所からの転落とか鉄砲で撃たれるとか、そういう強力な外力が働くのは直達外力のケースが多いんと違うか。
2.斜骨折だと強力な筋力によって再転位しやすい。このフレーズは下腿骨骨幹部骨折でも出てくる。12歳を超えると観血療法、それ以下の年齢なら持続牽引を行うので(過成長と相殺するために1センチ短縮転位を残す)ペーパーテストの選択肢としてしか意味をなさないフレーズではあるけどな。
3.普通、開放性骨折になりやすいのは被覆軟部組織が薄い部位とか骨折、具体的には中手骨骨幹部横骨折、下腿骨骨幹部骨折、中足骨骨幹部骨折で発生しやすい。大腿骨骨幹部骨折は受傷時の外力がめっちゃ大きいから骨折だけでなく軟部組織損傷も大きいので開放性になりやすい。
4.同じく受傷時の外力が強大なので外傷性ショック、損傷した軟部組織や骨髄からの出血による出血性ショック、さらに脂肪塞栓症候群などの合併症に注意する。
27-84 足根骨骨折で正しい組合せはどれか。
1.距骨骨折―リスフラン関節脱臼の合併
2.踵骨骨折―ベーラー角の減少
3.舟状骨骨折―足底の感覚障害
4.立方骨骨折―内側アーチの低下
先に問題の解き方の説明な。1.とか3.とか4.とか、「初めて見る」選択肢ばっかりの時どうするか。実は割合そういうことは多いねん。ていうか、四択の選択肢全部が○×はっきりせんことのほうが多いかもしれん。
それで、そういう時はわからん選択肢はほっといて全部の選択肢に目を通すねん。するとこの問題やったら2.「踵骨骨折」言うたらもう、ベーラー角の減少かズデックの骨萎縮やんか。そういうものすごい基本的な、あるいはおなじみの選択肢がたいてい混じってるもんやねん。それでたいていはその選択肢が正解。よう覚えといてや、四択の場合ひとつの選択肢が全然わからんかっても、たいていの場合は二つわからんかっても、場合によっては三つわからんかっても正解にはたどり着けるんや。
1.距骨骨折の合併症は体部骨片の無腐性壊死、変形性関節症、ナウマン症候くらいか。リスフラン関節脱臼に合併するのは第2中足骨基底部の骨折。
2.「踵骨がぺちゃんこになる」ことをハイカラに言うと「ベーラー角が減少する」ていうねん。
3.足の舟状骨骨折と鑑別が必要なのは第1ケーラー病と外脛骨。
27-85 反復性肩関節脱臼で正しいのはどれか。
1.上腕二頭筋長頭腱損傷の合併が多い。
2.サルカス徴候が出現する。
3.高齢者に多くみられる。
4.肩甲下筋が障害される。
反復性、やから外傷性肩関節脱臼に続発して脱臼を繰り返すパターンな。
1.反復性肩関節(特に断わっていないから前方脱臼と考えるよ)前方脱臼の原因としてはバンカート損傷やヒル・サックス損傷があげられるけど上腕二頭筋長頭腱損傷は原因には数えられていない。
2.サルカス徴候はルーズショルダーの所見。
3.これよく出るから覚えといてな。初回脱臼の年齢が低いほど反復性に移行しやすいねん。
4.ていうことで正解はこれ。バンカート損傷があると肩の外転、外旋をくり返した時に肩甲下筋や関節包、前下関節上腕靭帯が伸長されて反復性脱臼になる。
27-86 橈骨頭脱臼で正しいのはどれか。
1.後方へ脱臼することが多い。
2.前腕回外強制で発生する。
3.尺骨骨折を伴うことが多い。
4.前骨間神経損傷を合併する。
橈骨頭脱臼なんて言ってみればマイナーな存在で、あんまり出題歴もない。こうやってフェイントで出題された時は「モンテギア骨折」に引っ掛けて考えてみる。
モンテギア骨折では伸展型が多く、伸展型では頭骨頭は前外方に転位する。だから1.は×。当然3.は〇でモンテギア骨折に合併する神経損傷は橈骨神経の枝であるところの「後」骨間神経。
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