「痛み」はレントゲンに映らない 2023・4.1
膝が痛いとお悩みの方は多いです。ある程度以上の年齢の方であれば「変形性膝関節症」という病名がつきます。画像診断でも明らかな変形がありますし、明らかなO客を呈していることもあります。膝全体が腫れていることもあります。
膝の痛みを訴えて医療機関を受診しても、「変形しているのは治らない」と言われます。本当にその通りで、関節の変形を治そうと思ったなら人工関節に入れ替えるより方法はありません。でも、おそらくは多くの患者さんは「膝の変形を治してほしい」のではなく歩いたときの膝の痛みを治してほしい、のだと思います。
例えば膝を伸ばす筋肉と曲げる筋肉のバランスを調整すると、膝の痛みはなくなることがあります。脚に伸縮性のテープを貼付すると、これもやっぱり膝の痛みに奏功することがあります。ほかにも鍼を打ったり、電気を当てたり、膝の痛みに効果的な治療法はたくさんあると思います。そういう治療法で痛みが無くなったり軽くなったりしたときに、もういっぺん膝の画像診断をしてもらっても、所見は当然変わりません。もし画像だけを見て診断を求められたらたぶんやっぱり「変形性膝関節症」という答えが返ってくるでしょう。
それから股関節に問題があるときでも、それが「膝の痛み」として認識されることはそんなに珍しくありません。こういうケースでは膝の変形は言ってみれば「濡れ衣」で、実際の痛みの犯人ではないことになります。股関節の不調は骨盤調整で軽快することが多々あります。そうやって歩行時の膝の痛みが軽快したとしても、「変形性膝関節症」が治ったわけではありません。
画像所見と臨床症状が一致しない傷病はもっとあります。椎間板ヘルニアも脊椎分離症も、画像所見があっても症状が出ないケースも治療院の施術で痛みがなくなっても画像所見に変化が見られないケースもいくらでもあります。
おそらく整形外科をはじめとする医療機関と、整骨院その他の治療院が齟齬をきたすのがここだと思います。「変形性膝関節症を治した」「ウソつけ」、「医療機関では腰の痛みの本当の原因がわかっていない」「いい加減なことを言うな」そういう不毛な論争はおそらくは終わることはないでしょう。
医療機関とセラピストと、それぞれの言葉が意図するところをご理解いただいて、両者をうまく使い分けされることをお勧めします。