09【ポカラで何故かナイトトレッキング12時間と辿り着けなかったパーティー】
2ヶ月間ほどネパール、ポカラの路上で販売をしていると。
自然と色々と見えてくる。
とりあえず。
中国人旅行者は団体でわらわらと見るだけ見て買わない。
ネパール人は話したいだけのことが多い。
買う人間は最初から買うと決めているのか決断が早い。
ネパールの路上には犬も沢山いてテリトリーがある。
大きな木の下に路上店を出していた私のテリトリーにも犬が居た。
綺麗な黒い犬と汚れた黒い犬。
汚れた黒い犬は大概、寝ている。
綺麗な黒い犬は愛想が良く、尻尾を振って私の隣りに寄り添う。
そして。
綺麗な黒い犬は。
私のお店が団体客に囲まれた時に、団体客の中に割って入り、散らしたり。
なんだか気の効く彼氏の様な感じだ。
ちなみに10歳くらいの聡明な路上の少年もいた。
この子は路上の子であるが、私より英語が堪能で空気が読める。
お客さんが居ない時は私とゆっくり話したり、絵の感想を述べたり。
お客さんに見せかけたナンパ目的の方が現れた時は。
「自分は路上で暮らしてるんだ、なんやかんや、、、」
と路上の男の子は、そのナンパ男に永遠と話。
その隙に私はお店を畳んで帰路に着く。
という無言のチームプレーもあった。
ネパールの路上では賢い犬と聡明な路上の子がボーイフレンドだ。
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2ヶ月間に渡る、無一文からの成り上がりネパールも終盤。
ネパールを出国し、インドに戻る手だてが整った。
そんな明るい兆しが見えた頃。
運良くも山のパーティー(レイブ)情報入手。
宿の3人の男の子と共にパーティーへ向かう事になった。
パーティーを主催しているカフェの前の簡単な地図を4人で確認する。
関係者らしき人はどこにも居ず、カフェも閉まっていた。
私のiPhoneはゴア以降、眠ったままである。
ここで誰ひとりと地図を写真に撮らなかったことが盲点だった。
夕刻。我々は山へ向かった。
山の天気は変わりやすい。
小1時間ほど、登るといきなり暴風雨である。
運良くも、山の民家に辿り着き、雨宿り。
牛等を飼い自給自足の民家である。
雨はなかなか止まず。
我々と民家のお父さん、息子と息子の友達は小さな部屋に肩を寄せ合う。
雨時は停電で蝋燭の光。
なんと牧歌的だろう。
そのうち、お父さんが夕飯を食べていきないさいと。
私たちは、止まない雨を眺めながらダルバートを頂くことにした。
結局3、4時間ほどプチうるるん滞在記を堪能し、我々は再びパーティー会場を目指す。
外は既に真っ暗闇。
更に大雨により音は消えていた。
無謀な我々のナイトトレッキングが始まった。
1人1人の装備の差異が気になる。
完璧、アウトドア派、オーストラリアの皆既日食経験者のAくん。
15年前のNY音楽シーンを知っているCITY派Bくん。
東京のライブハウス勤め、自らもPCで音楽を作る20代中盤、Cくん。
と、何故かビーチサンダルとスーパーのビニール袋の私。
袋の中身は殆ど果物やお菓子である。
そう。
ゴアのサバイバルダンスなパーティー後の私は警戒していた。
なので。無くなっても良いスーパーのビニール袋でナイトトレッキングするはめになったのだ。
どちらにせよ、中身は食料くらいしか入ってないのだ。
結局。
ナイトトレッキングは総計12時間にも及ぶ。
いっこうにパーティー会場は見つからない。
下山を決意した我々。
下山し、街中へ出たのは深夜2時過ぎ。
まだ安心は出来なかった。
野良犬たちのパトロールタイムである。
街中で吠え、走り回る野良犬たち。
兎に角。
野良犬たちと眼を合わさないこと。
息を殺して忍びの様に、同じ速さで真っ直ぐ歩く。
そう。
野良犬たちはエリアを守り吠えているだけだから。
それが私が路上から学んだ野良犬との付き合い方だった。
私たち4人は。自然と前2人、後ろ2人の並びで下を向き歩く。
真夜中の街中で吠えまくる野良犬たちのバイオハザード。
宿までのラストステージだった。
なんとか何事もなくゴール、宿に近づいてきた。
丁度、私が日中、路上でお店を出している付近の曲がり角。
迂闊にも私は取り残された。
野良犬が物凄い勢いで私たちの方へ向かい、走り、吠える。
もう、目の前で吠える。
丁度、角の部分で男性3人から取り残され、
吠えまくる野良犬が私の目の前で立ちはだかった。
平常心、呼吸の安定を意識し、忍びの気分を忘れずに、私は恐怖を消し去り歩く。
しかし、吠え立ちはだかる野良犬。
そこへ、もう1匹!
野良犬登場。
その犬は吠えなかった。
吠えないどころか、吠えている犬の更に前に立ちはだかり、
私の道を作ってくれた。
バイオハザードな野良犬エリアをくぐり抜け、振り返る私。
そう。
吠える野良犬の前に立ちはだかり、私を助けてくれたのは。
いつもの賢い黒い野良犬だった。
彼は。
自分のエリアを守り、こちらを向いて尻尾を振っていた。
感動的だ。
最近は世界中の野良犬が友達である。
最も。
この状況では、他の男性陣の行動は懸命である。
無駄に私を助けようと、どうにかしていたなら、吠えている野良犬を刺激し、二次被害、三次被害は容易に予測出来る。
そう。
私も助けなど期待していなかった。
自分の身は自分で護る。
しかし。
護ってくれたのは野良犬の友達。
俄然、猫派の私であるが。
野良犬は別枠。
ペットの犬は結局、飼い主の心の代弁者だが、野良犬は違う。
みんな、優しいし、空気が読める。
インド、ネパールでは。
余った食べ物は野良犬か野良牛にあげる。
私たちは共存しているのだ。