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【勝手に電波少年企画〜2度目の裏山侵入逆大脱走〜一文無しからBoom Festival へ向けて。そして片想いの先輩も探す旅!11】

日が傾き始める午後6時前。
私たち5人のパーティーは、フェスティバル侵入に向けて出発した。

フォークガールは大事なギターを韓国人男性のテントの中に託した。
それにしてもバックパックは大荷物。
韓国人男性はテントを会場の外の難民キャンプに置いたまま、小柄なリュック。
声の小さな女の子は何も持っていない。
彼氏が既に会場内に荷物を運び込んでくれていたのだ。
そして人間観察のオーストラリア男性も身軽なリュックのみ。素性は分からなかったが。
確かに観察者であった。


私たち5人はゾロゾロと裏山の中へ。
侵入経験者は私とフォークガール、そして声の小さな女の子。
であったが。
指揮を執ったのはフォークガールと韓国人男性。
この2人が分岐点に差し掛かる度に、あっちだ、こっちだ、と言い争うのだ。
2人とも一番セキュリティに警戒しているくせに、声が大きい。
そんな言い争いが終わるのを待つほか3人。
そんな感じで、なかなか進まない。


私は。第2回裏山侵入パーティーメンバーは波乱の予感がした。
そして案の定。
フォークガールはぐんぐんと前へ進み。
韓国人男性は立ち止まって歩いてこない。
私と声の小さな女の子は、その真ん中で、どうしよう。と。
韓国人男性を呼んでみたり。
韓国人男性の横には観察者のオーストラリア男性が居た。
そして。日が暮れる速度は速くなってきた。
私と声の小さな女の子はフォークガールの後に続き、前を進むことに。
男女バラバラの方向へ歩き始める。

私たちは無人の監視塔に怯え、気分はさながら大脱走。
実際は大侵入なのだが。
見覚えのある景色に出た。
アマノとサンドラと歩いた丘。
この丘をまっすぐと越えたら壁があり、それを越えたらゲートの中だ。
もう少しだ。と。

相変わらず、フォークガールは怯えながらぐんぐん進む。
声の小さな女の子は裸足になって歩いていた。
ゆっくり。砂利道なのに、裸足になって、ゆっくり歩くから。
私はまた。フォークガールと声の小さな女の子の真ん中で、バランスをとった。


私たちは、丘を下り、谷に出て、谷をのぼり、急斜面の森の中へ身を隠す。
そう。今度こそ本当の監視塔である。
サーチライトまで見える。
ゲート内にそびえていた。

フォークガールの慌てっぷりが速度を増してきたので、私はここで一服しようと提案。
声の小さな女の子もちょこんと座り。
3人で休憩。

私は輝き始める月を見て。
声の小さな女の子に月の話をした。

「なんか。いつも思うのがね。半月から満月に満ちる時の速度は物凄く速く感じるの。」
うん、うん。
と目を丸くして話を聞いてくれる声の小さな女の子。


下の方に2人の男性の人影があったが私たちは無視をしていた。
が。
フォークガール。
1人、監視塔のサーチライトや人影を気にして、どこから壁を越えるかと慌てていた。
そして2人組の男性を発見。

「ヘイ!ハロー!ハロー!」
小声のつもりなのに大声な声で呼びかける。
私と声の小さな女の子は驚き、フォークガールを止める。
しーーーーっ!しーーーーー。
と口の前で人差し指をたてて。
しかし。フォークガールは私たちの声が聞こえないのか、2人組の男の子を呼ぶのに必死だ。


結局。2人組の男の子。裏山侵入組は私たちの身を隠す場所までやってきた。
私はこの時。私と声の小さな女の子は、同じ意見なのだと確信した。
私たちは、フォークガールが呼び寄せたその2人組の男の子とはあまり話さなかった。
すぐそこに監視塔があるというのに。大人数で話して目立つ行動は避けたいのもある。
それと。余計な厄介ごとも増やしたくない。
無駄に仲間を集めても、ゲート内に侵入者した時にセキュリティに見つかりやすくなるだけなのだ。
それは。私も声の小さな女の子も分かっていた。
だから。このフォークガールは。前回、侵入して、一瞬でセキュリティに摘み出されたのか。
と納得。
巻き添えだけは互いに避けたいと思っていたのだろう。

2人組の男の子たちは、私たちに煙草はあるかい?あったら頂戴と。
私と声の小さな女の子は既に吸い終わっていたので、自然と、その2人の男の子の質問を、ひと呼吸ほど置いて、直ぐに答えなかった。

すると、フォークガールが勢い良く。
「あるわ!どうぞ!吸って吸って!」
と大きな缶の巻き煙草を差し出す。
そして。3人で何処から来たのか?とか、前回の侵入体験だとかを、わいわい話しだした。
なんだか。
若いバックパッカーが安宿で、楽しそうに情報交換をしている。
そんな光景に見えた。
私と声の小さな女の子は彼らの。なんというか。
仲間を見つけた!という安心感から来る、大きな話声を聞いていただけだった。

フォークガールは。
あんなに、監視塔を警戒して、シーっと指を立てて、低い姿勢で歩いていたのに。
そこは、警戒しないんだ。
と。
それとも安堵のあまり、警戒心を忘れたのかな?とも。
私はそんな風に思っていた。


日は暮れていた。
星も輝き始めていた。
私は、壁のところまで行って、侵入するタイミングを伺う頃合いだと思った。
3人のおしゃべりに付き合ってる暇も無い。

「そろそろ、行こうと思うのだけど、私は。」

とフォークガールに声を掛けた。
別々に行きたかったのだが。
結局。同じ方向しかないので。
2人組の男の子と私たち3人はざっくり同じ方向に谷を駆け上り。
石畳の壁まで到着。
私の身長程の高さがあり、越えるのも、超えた後にセキュリティに気をつけるのも、素早く、身軽にこなさなければいけない感じだ。

私たちは。ドタバタと、石畳の壁を派手に崩しながら、中に侵入した。
全員、セキュリティに見つからずにテントエリアの中に紛れ込めた。
私たちは大きなキャンピングカーの陰に隠れた。
キャンピングカーの持ち主が出てきた。

フォークガールは慌てた感じで、状況を説明していた。
親切な大人の雰囲気を漂わすキャンピングカーの男性。
地図を出し、どこにセキュリティの検問があるか丁寧に教えてくれた。

私は。
なんだか格差を感じた。
下手すれば。私もこの大人なキャンピングカーの男性とそう変わらない年齢なのでは?と。
どん底から這い上がり人生とは、こうゆうことなのか!?とも思った。


私は相変わらず。
フォークガールの、いかにも侵入してきました。
という慌てっぷりを警戒していた。

私たち3人は人込みの中に紛れ、安全なオレンジテントエリアへ向かう。
オレンジテントエリアは丘の一番下、湖の近くに位置していた。
そう。
メインフロアである、ダンステンプルや様々な企画やアトラクションがある広場まで一本道。
そこまで行けばセキュリティの検問も少なくなり、なにより遊園地を楽しむ大勢の人がいる。

紛れてしまえば危険は少ないのだ。
私たちはトイレで用を済ませ、いざ、オレンジエリアへ。

やはりチラホラとセキュリティが人々を呼び止めたりして、リストバンドをチェックしている。
呼び止められないようにすればいいのだ。
幸いな事に覆面セキュリティはいなかった。
分かりやすく夜でも光る蛍光色を身につけ、セキュリティと書いてある制服を着ていた。
私たちは。彼らさえ避けて歩けば問題なかった。


声の小さな女の子がセキュリティの目をかいくぐれる道順を知っているという。
シャワー室とトイレの間をくぐりぬけて。
と言うが。私は、その辺で全員とはぐれてしまった。

シャワー室の周辺にはセキュリティが思いっきり立っていた。
無駄にウロウロ、キョロキョロとするのは危険だ。
私は何食わぬ顔で水汲みの順番に並ぶ。
そして、順番の前の人とたわいもない会話。
こうしていれば、突然、セキュリティが私だけに声を掛けてくることは無いのだ。
私に声を掛けるなら、ここに並んでいる全員に声を掛けなくてはいけない。
そう。
きっと。ブームフェスティバルは。そこまで厳しくはない。
本質としては、人に迷惑を掛けずに各々楽しもう。
だと思う。
その場の雰囲気を壊すような動きをスタッフであるセキュリティがする筈がないと確信していた。


私は状況を現場を見て、手首を晒さないように気をつけて水を汲み、その場を離れた。
ぐるぐると迷う。
地図もなく、方向も分からない。
スタッフに声はかけられない。
私はセキュリティに気をつけながら、道を探す。
正規の大通りの道では、オレンジテントエリアへ続く道では検問がある。


私は、どうしようか。
とぐるぐるしながら、テントエリアに紛れ込み、
なんと。
ラッキー!
気が付いたら、オレンジテントエリアに出ていた。
ここは、炊事場とシャワーが近く、便利なテントエリアである。

私は急いでテントを張る。
とりあえず、テントの中に入って身を隠せば、本当に安心。
既に、他のテントでひしめき合うオレンジエリア。
私は思いっきり、人通りの前、テントを出たら、炊事場とシャワーに続く道沿いにテントを張った。
木を隠すなら森へ。
人込みの方がやはり安全だとも思っていた。


テントの中身は何も無い。
洋服はショートパンツにタンクトップ、ストールにフリースの上着のみ。
私は布で出来た鞄を敷物代わりにしてテントの中で過ごした。

まず。一服。
さて。これからどうしようか。
音楽はもう始まっていた。
私は。
日中ゲートの外で入手したMDMAをメインダンスフロアで楽しむことにした。
テントの中で食べて、ジョイントを持って外へ繰り出す。


セキュリティの動きはだいたい把握していた。
私は平気でお店を見たり、アートで遊びながら、一服出来る木陰を探し、フラフラ。
セキュリティに声を掛けられる事はなかった。
人込みも安全だが。
近くに人込みがあって、自分の周囲には誰もいない場所を歩くのも安全だ。
後ろから突然人が来る気配があれば分かりやすいし、前から来る人も分かりやすい。
だから、なるべく近寄らない様にさりげなく、人を避けながら行きたい場所まで行けるのだ。


29歳の私は。
完璧に少年漫画の主人公の気分だ。
出会う人々は名前も知らなければ、連絡先の交換だって忘れてしまう。
みんな強烈な個性あふれるキャラクターで私の大冒険物語を彩ってくれた。

打算的な人間関係も、駆け引き的な恋愛も、
大人と言われる年齢に必要とされる処世術は何一つ必要ない世界。

純粋に
Boom Festivalに入って遊びたい!!
それだけに真剣な小学生。

子供らしく過ごせなかった小学生時代をやり直している。
最高に自由で無限の可能性が広がる
小学生の夏休み29歳の夏だった。

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