見出し画像

【勝手に電波少年企画〜チケット難民キャンプと世界のイタズラ小僧の知恵合戦〜一文無しからBoom Festival へ向けて。そして片想いの先輩も探す旅!10】

翌朝、周囲はもっと難民キャンプ風になっていた。
ヒッピー風の人やらが楽器をならし、チケットを売る様にと騒いでいる。

私は2日目にしてチケットが発売されないのなら。
荷物をどうにかして、裏山から侵入しようと決めた。
状況を見るが。昨日と然程、変わりはなかった。

少し柄が悪くなった気がする。
そう。売人っぽい人や浮浪者っぽい人がチラホラと居るのだ。
私は荷物をゲートの外へ置いたまま1週間フェスティバル内で過ごすことも考えた。
が、却下。
やはり危険そうだ。


どちらにせよ。これ以上、ゲートの外で滞在するのは危険だし、無意味なので。
今日の夕刻までにチケットを入手するか。
荷物も私もどうにかしてフェスティバル、ゲート内に侵入するか。
のどちらかだった。


私はチケット難民キャンプでリスボンの公園で出会い、空港で一晩一緒にいたファビと再会した。
ファビは普通に電車とバスを乗り継いでやってきたと言う。
陽気なヒッピー風の人たちの中、1人静かに読書をしていた。
元売人。だから状況を読んでいるのかも。
ファビは、危なっかしい素人の私を密かに心配してくれている仲間だと感じていた。
私はファビはどうするのか?と話していた。
彼は大した荷物は無いので、外にテントを置いて中に侵入すると言う。
そっか。。。PCにカメラ、大事な作品、全て持ち歩いている私は結構、サバイバルにフリなのだ。
すると、元気な男の子が
「どうする?チケット無いし、裏山から侵入しようと思うんだけど。」
と話しかけてきた。

私は。
「私、昨日、裏山から侵入して遊んできたよ!でも。荷物がここにあるから、自分で出てきちゃった!」
「えー!?どうやって行ったの?」
「あっちの方から、1時間くらい、ぐるーっと回って塀を越えたら大丈夫だよ!でもセキュリティには気をつけないと!」
「セキュリティに見つかると捕まって、山奥に捨てられるんだろ?」
「そうそう。私の友達が捨てられたって!」
「君は昨日、どこから帰ってきたの?」
「私は、間違えて、普通にゲートから出てきたんだけど。セキュリティの人にリストバンドは?って聞かれちゃって。酔っぱらいのフリと英語分からないフリで、誤摩化して出てきたよ!」
「あははは。凄いねー!」
とみんなで情報を交換しながら大笑い。


そう。このルートはセキュリティの目が厳しいだとか。
チケット難民の署名を集めて抗議をすれば販売されるかもしれないだとか。
噂は飛び交っていた。
インターネットで調べて、色々と知る世界ではないのだ。
この大自然の中。
自分で情報を読み取らなければ、決断しなければならない。


私はファビと男の子に別れを告げ、自分の仕事に戻る。
12時になっても13時になっても。アマノとサンドラは戻ってこなかった。
申し訳ない気持ちはあったが。私も私のパーティーがある。
私は2人の荷物を外に出して。目立たない場所に隠した。
そして、キラキラのテープでぐるぐる巻きにくくり、極力、盗難などに遭わない様に外に置いた。
テントをたたむ。
夕暮れに裏山から侵入を決めたのだ。

そして。この。
80Lを超えるバックパックと大きなボストンバック、そして袋をコロコロカートで引きずる大荷物。
これらは。車で来る人に頼もうと思った。
とにかく。荷物をゲートの外に1週間置きっぱなしは危険である。
ゲートの中にさえ入れれば。いくら広いとはいえ、1週間あるので、荷物を頼のむ車の人とも再会出来るだろう。と。

私は日本人男子に会った。
彼はMDMAを持ってるというので。
これも何かの縁。
昨晩、釘付けにされた、アレックス・グレイ(Alex Grey)の絵のこともあり。
まず、スターターはMDMA。
なんと5ユーロで譲ってくれた。

そして。前回もブームフェスティバル参加者ということで、色々とアドバイスを聞く。
やはり。ゲートの外は危険らしい。
3、4日するとチケット難民もいなくなり、荷物を置きっぱなしにしていたら盗難に遭うかもね。と。
ちなみに彼は前回、荷物を外に置きっぱなしにして、無くなっていたらしい。
探した結果、警察に全てあったというが。
外国で警察にお世話になるのは色々と面倒なので避けたい。
それにブームフェスティバルの後は予定があり、既にイタリア行きの航空券も持っていたのだ。


私は日本人男子に別れを告げ、荷物をゲート内に入れてくれる、親切な車を探した。
…。
あっけなく見つかる。
フランス人の若い男の子4人組である。
しかし、どうもまとまりの無いグループ。
運転手の男の子はルイ。
彼の車に全ての荷物を託した。
私は使える電話を持っていなかったので彼に自分のEメールアドレスを渡した。
ルイは。
「僕の携帯はWI-FI使えないからメールは出来ないよ。」と。
携帯の番号を教えてもらった。
私は迂闊にも、彼の書いてくれた番号を復唱しなかった。
これが後々、少し混乱を招く。
7なのか4なのか分からない数字があるのだ。


そして。慌てて荷物を車に詰め込ませてもらう私。
私は電話番号も交換したし、後はゲートの中に入れば直ぐに会えるだろうと。軽く思っていた。

なので。裏山から侵入には極力、軽装備。
テントと上着。鏡とコンタクト液にカミソリ、ペン、スケットブック、石鹸、ヘッドライトなど。
必要最低限一晩はこせるだろうという物しか手持ちに残さなかったのだ。
私は無事、ルイに全荷物を託し、チケット難民キャンプへ戻る。

チケット難民キャンプは更に柄が悪くなっていた。
私は20歳のブルガリア人のフォークな女の子となんとなく話す。
彼女も1度侵入している勇者仲間。
しかし、侵入した直後、摘み出されたらしい。
やはり傷だらけだ。


私は暇つぶしに口琴で遊ぶ。
びよーんびよーんと音がなる。
それに合わせて彼女がギター。
しかし、なかなかフォークと口琴は難しかった。
なんだか。20歳頃にインドバックパッカー旅行や、日本ヒッチハイクでヒッピー祭りをしていた自分を思い出す。
楽しいけれど、恥ずかしかった。

アロハおじいさんと、韓国人男性も加わり。
情報をあーだこうだと話す。
アロハおじいさんは。私の予測だと。
長年、このような野外レイブカルチャーなどに関わりながら
ゴアやヨーロッパに住んでいるのだろう。

そして。知っている。ドラッグ、精神世界を。
私が体験してきたゴアの世界を知っている。と思った。
ブルガリア人のフォークガールに。

「人間はテレパシーが使えるんだよ。我々はみんな別の惑星から来ているんだよ。」

と酔っぱらいながら話していた。
私は。全く同感。ゴアで学んだ、感じたことをそのまま語っているアロハおじさん。


韓国人男性は、未だチケット販売デモに熱心だった。
私は単独でこの日、夕刻に裏山から侵入を試みるつもりであった。
荷物は既にゲートの中だ。
後は。私が侵入するのみ。

フォークガールが「私も一緒に行くわ!置いてかないでね!」と。
そして。私たちがそんな相談をしていると。
物凄く慌てた男の子達5人組。
白人、黒人、ミックスで。
円陣を組んで、地図を広げヒソヒソと相談をしている。

体格は20代の若い男の子達なのだが。
私には、小学生の男の子達に見えた。すごく楽しかった。
だって。
私も気分は裏山を掛けて木登りをして遊んでいた小学生時代の気分だったから。

フォークガールが。
「ちょっと、そこの男子たち!何相談してるの!?」
と強引に乗り込む。
私はニコニコ。楽しい。小学校みたい。
男子達は少し驚き、迷い目配せをしながらも。

「俺たち、チケットが無いから、裏山から侵入するルートの相談をしてたんだ。」
と黒人の男の子。
「そうなの!私たちも、夕方に裏山から侵入する予定よ!」
とフォークガール。
「今晩、シークレットファイヤーというイベントがあるから、その隙を狙うんだ。」
「湖側から?」
「いや、こっちは難しい。泳がなきゃいけないしね。」
フォークガールはどうやら共に侵入メンバーを増やしたそうだったが。
私はやめて欲しかった。
そんな大人数でゾロゾロ行ってもセキュリティに見つかる危険が高い。
少数精鋭で乗り込むのがいいと私は思っていたからだ。
結局、彼らは忙しそうに、楽しそうに。
小学生の夏休みみたいに。去って行った。

私たちはまた別の白人男の子に出会う。
かなり白い。
彼は、ダフ屋で10ユーロも出して偽物の紙で出来たリストバンドをつけていた。
「それ10ユーロもしたの!?」
とフォークガール。
私たちは柄を見た。レインボーが下地になりBOOM FESTIVAL2014と書いてある。

私は。こんな紙切れのコピーが10ユーロもする世界なんだ。

と驚く。同時に興奮する。
ゴアみたい!と。
こんなデタラメな商売が通用する世界のお茶目さが好きなのだ。

しかし。私も気をつけなければいけないということだ。
自分の身は自分で護衛。
白い男の子が一生懸命に偽物の紙リストバンドをつけようとしている。
その不器用さに見かねた、アロハおじさん。

「そうゆうのは、こうゆう空き缶で下地をつくって、上にかぶせて強化させるんだ。ついでに留め金のところも、空き缶で作れば、本物っぽくなるぞ。」

私はニヤニヤしてしまう。
悪戯のベテランアロハおじさんだ。

すっかり童心に返って何が起きても楽しい。
私とフォークガールは夕暮れを待つのに、森の奥へ散歩した。
奥へ奥へ。結構、奥にもテントを張っている、チケット難民か。
その難民を狙うハイエナか。
彼らは基地を作っていた。
私たちは沼に出た。

沼の前では、また男の子5人程がヒソヒソと何か一生懸命作っていた。
フォークガールはやはり遠慮無しに。
「何、してるの!?あ、リストバンド!?私たちも混ぜて!」
と。

5人の男の子達はさっきの男の子達より更に若そうだ。
10代だろうか。やんちゃなロンドンパンクボーイに見えた。
彼らは。誰か1人の寝袋を犠牲にしていた。
リストバンドと比較的にている山吹色の寝袋がチョキチョキと切られている。
そして。
やはり、空き缶で補強し、誰かが買ってきた色ペンで本物っぽく柄を書く。
本物は結構、オレンジ色なのだが。

私たちもどさくさに紛れ、一緒に作り始めた。
ロンドンパンクボーイが言う。

「これ以上、他の人に言わないでくれよ。」
「オッケー!」

このブームフェスティバル。
異例のチケット売り切れにより。
悪戯小僧達が各々の知恵で動き出す。
そんな感じだった。
子供の頃に遊んだのと同じなのだ。
ちょっと悪戯。
そんな気分で、裏山から侵入、大作戦。


とにかく。
BoomFestivalの敷地内に入りたい!
それだけに真剣な大人子供たちが大勢いた。


私たちは無事に、手作り偽物のリストバンドを持って、アロハおじさんのところへ戻った。

すると。
あの白い男の子がさらにドヨーンと肩を落として座っている。
どうやら。入れなかったらしい。
彼は。
いかにもバレバレな紙の偽物リストバンドで正面ゲートから堂々と入ろうとして。
案の定、バレて。ちぎられて。一瞬のうちに戻ってきたそうだ。

私は。
なんで、裏山から侵入しなかったのかなぁ。あの品質で。。。と思った。


なんだか。各々の総合的知恵、体力、能力、運が試される大きなゲーム会場の気分だ。

私は白い男の子を不憫に思いながらも、自分の偽物のリストバンドをちらり。
ひらり。
結び目が甘く、取れてしまった。

あっ!

「あ!これは、いつの間に!それは何だい!?」
と食らいつく韓国人男性。
「余っていたら、分けてくれ」と。

どうやら彼もチケット販売を諦めて裏山から侵入するらしい。
私は。ロンドンパンクな男の子に、口止めされていたので、言えなかった。
言えなかったが、その色の余った布を持っていたので韓国人男性にあげた。

そして、もう1人。
彼氏はチケットがあり荷物と共に中だが、自分だけチケットが無く裏山から侵入しなければいけない、すごく声の小さな女の子が居た。
宇宙人みたいな雰囲気。でも。自然が分かる感じの子。
韓国人男性はその子を勝手にフランス人だと思い込み、ワーキングホリデーオーストラリア仕込みの英語で、声の小さな女の子の話を聞かずに勝手に話をすすめていた。

声の小さな女の子はフランス人ではないらしい。
しかし、韓国人男性の話声が続くので、声の小さな女の子はどこ出身なのか、言いかけて、やめてしまった。

結局。
私は。
フォークガールと韓国人男性。そして声の小さな女の子。
さらに。いつの間にか輪の中にいた、人間観察をしているんだというオーストラリア人男性。
5人で裏山侵入をすることになった。


私はアロハおじさんにお礼として、Boom2014とネパールでデザインして作ったワッペンをプレゼント。
アロハおじさんは、グラスにビールを注ぎ、持っていたのでコースターだと勘違いをしたが。訂正はしなかった。


私はアロハおじさんが陰のRaja Ram。
Raja Ramとどこか同じ魂を持った分身に見えた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?