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アウトローの星 Ⅴ
酒豪で、ちょいクズ人間の友人Uに呼び出される。どうやら僕の自宅付近の駅にいるらしく、一緒に食事をすることに。
駅まで向かうと、彼はすでに泥酔していた。「仕事の悩みで相談がある」と電話口では言っていたが、陽気に酔っ払ってふらつく姿を見ると、本当に悩みがあるのか疑問だ。近くのファミレスに移動して彼の話を聞いたが、呂律が回らない状態でぐちぐちとこぼした2時間をぎゅっとまとめると、「働くのめんどい」ということだった。そんなもの誰にでもあるわ。と思った。
この日、鉄道好きのUは電車で遠出すると奥さんに伝えて外出したのだが、途中で僕を捕まえて予定を変更した。その突発的な行動がリアルタイムで奥さんにばれた。いつもなら旅の途中で必ず立ち寄るラーメン屋やそこらの景色、お気に入りの車両を撮影してシェアするのだが、この日に限ってそれらのルーティンが一切ないため、行動を怪しまれたのだ。
「あんた、今どこにおるん?」
Uがスマホを片手に「やっべ、やっべ」と慌てふためいている。
なぜだ? 奥さんにとって、僕はNGなのか?
友人と食事をしているだけなのだから、そのまま伝えればいいのに、酒で頭がいかれて、意地でも当初の目的地に行ったことにしようとしている。
「写真送ってって言われたらどうすんの?」
「なるべく空を多めに撮って場所を特定されないようにする」
「外真っ暗や。そんな不気味な写真おかしいやろ」
「うぅ…ネットで探す」
「そこの近くにあるどこそこのシュークリーム買ってきて、って言われたらどうすんの?」
「うぅ…買いに行く」
「あほかっ!」
分かりやすくボロが出ている。なにも悪いことをしていないのに、無駄に嘘を重ねて軽犯罪くらいの感じになっている。
「“たまたま時間が合って、予定を変更して友達とメシ食ってる”でええやん」
「それや! 天才!」
いやいや、ただの今現在の状況だ。
その後、彼は駅に到着した時と同じように陽気にふらつき、満足気に電車で帰宅した。
もう、来ないで。