「からかい上手の高木さん」Cover Song Collection 論 其のI
ひと月ほど前から「からかい上手の高木さん」に熱を上げっぱなしである。
Spotifyでカバーアルバムを再生しまくることに始まり、アニメを視聴し、原作を読み、気がつけばアルバムの文脈を読み解くことが課題となっていった。
なぜこの選曲なのか、なぜこの音づくりなのか、バラバラなアーティストの曲のカバー集でありながら高いコンセプト性を感じさせる根源は何なのか。疑問は尽きないが、現時点で考えられるだけのことを書いていこうと思う。
今回は選曲の時代性について考察した。アラサー殺しの選曲であることは言うまでもないが、なぜこの曲たちが起用されたかについて、ふたつの理由を考えた。
①物語の時代設定が2000年代である。
②読者層が20~30代である。
これらについて考察してみようと思う。
まずひとつめの、物語の時代設定に関する説である。
この作品は原作・アニメともに時代色をあまり描かない作品なので、具体的な年代の設定はなされていない。したがって、劇中に登場する家電製品から時代を推定することを試みた。
まず、西片の部屋に登場するゲームハード。アニメ版ではPS2、原作では初代PSが描かれていた。しかし、ハードが接続されているであろうテレビは黒色の薄型モデルであり、2010年代のデザインをもとに描かれたものと考えられる。
もう一つは携帯の回における端末の種類。これは原作・アニメともにiPhone SEをモデルとした端末が描かれ、UIデザインも iOS7~9を参考としているように見受けられる。
以上の点より、時代設定は2010年代半ばから現在にかけてと推察され、①の説は否定される。
余談ではあるが、2010年代にわざわざPSやPS2を置くとはレトロハード好きなのかといらん方向に考えが広がってしまった。
次に、読者層の年齢に拠るものだという説。結論から言うと、これはそれなりに強力な説だと言える。根拠として、卸業の日販「ほんのひきだし」の記事を引用する。
“『からかい上手の高木さん』の読者は、圧倒的に男性が多いです。そして少年向け漫画雑誌での付録掲載でありながら、読者の平均年齢は比較的高め。最多の年齢層は20代ですが、30~40代の男性読者もかなり多いです。”
グラフに関しては画像を引用することができない上、横軸に数値が振られていないので弱い。しかし、相対的には20~30代男性からの支持が厚いことがわかる。引用元の記事は2016年に書かれたものなのでアニメ化以前の記事であるが、その時点で既にファン層を固めていたと言えるだろう。そして、20代から30代の中学生時代というと、年代としてはちょうど2000年代が当たる。これが選曲時に加味された可能性は高いだろう。無論、出版社側もデータは取っているはずなので、それをもとに選曲されただろうと考えられるが、そのデータもだいたい同じ分布を示しているのではないだろうか。
今回は物語の時代設定と読者層から選曲を読み解くというテーマのもと、書き散らしたが、いかがだっただろうか。今はまだ考えがまとまっていないが、高木さんカバーアルバムのサウンドに関する考察はこれからも散発的に続けていこうと思う。そのときにはまた読んでいただきたいと思う。
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