ビジネス(非IT)部門主体でIT投資を成功させるための9箇条
近年はSaaSの普及により、ハードウェアやネットワークを意識することなく容易にIT投資をできるようになってきています。
その結果、ビジネス部門主体でのIT投資が増加傾向、IT部門主体でのIT投資は頭打ちとなり、
今後はIT部門とビジネス部門の垣根が無くなっていくと予想されています。
・日本全体のIT投資は増加
・IT部門の支出は2018年に初めてマイナス成長
∴ビジネス部門での支出が増加
Source: IDC Japan 国内IT市場 産業分野別 支出額予測:2018~2022
また、IT投資自体が上手く行っているか?
というデータに関してはこんな衝撃的なデータが存在します。
この定義としては、
・見積通り
・納期通り
・満足度で「満足」「やや満足」に当てはまる
の3点全てに合致すれば成功、1つでも当てはまらなければ失敗となっています。
また、
との衝撃的なデータも存在します。
今後、ビジネス部門主体でのIT投資が増加していく中、どのようにしたらプロジェクトを成功に導いていけるのか。
そんな9カ条を書いていこうと思います。
※次回のnoteでは、ビジネス部門主体でのIT投資に対し、IT部門はどのように関与したら良いのかを書いていきます!
①ゴール設定をビジネスと紐付ける
「〇〇システム導入」というプロジェクトチームが組まれてしまうことが多いのですが、もうその時点でこのプロジェクトは失敗に足を突っ込んでいます。
システムの導入は何か大きな目的があり、それを達成する手段であるべきです。
その目的とは何か・・・
経営計画です。
①経営計画で実現したいことがある。
②理想と現状にGAPがある
③それを解決するためにやるべきことがある。
∴その手段=ITやシステム
となるのです。
この手段の目的化については、ビジネス部門主導だから起きるといったことではありません。IT部門主体の場合でも常々発生しています。
これらは、今後IT投資に関わる全ての方の念頭においていただきたい内容です。
②カスタマー(ステークホルダー)ジャーニーを作る
正しい目的が設定された状態で、絶対にやってはダメなことが、
ITベンダーにいきなり連絡をすること。
多くのITベンダーは、自社の製品を売るために、巧みに自分たちが有利な土俵へ誘導します。
ツールは手段。ベンダーに連絡するのは最後です。
まず行うべきは、
カスタマー(ステークホルダー)ジャーニーの作成です。
自分たちの目的を達成するために、
どこの誰に何を売るのか。
そのお客様は自分たちとどういう接点で関係を持っていくのか。
完全に正解を想像の世界で作ることはできませんが、
仮説として作成しておくことが大切です。
・お客さまと自社の接点
・関係値の醸成
・お客さまの行動
・感情の変化
・そのとき自分たちが何をするのか
を整理し、理想の状態を仮定しましょう。
実践方法がわからない方は書籍としては以下がオススメです。
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③ビジネスプロセスのAs is-To beを定義
目的が決まり、カスタマージャーニーが定義されると、自ずと必要なビジネスプロセスが決まっていきます。
カスタマージャーニーに即したビジネスプロセスと、現状のプロセスを整理してみましょう。
また、このプロセスを定義する際に注意してほしいことが、
1つ1つのタスクの粒度(細かさ)を揃えることです。
例えば、
①電子署名システムで契約を締結する
②電子署名システムにログイン→お客様に送付→受領して締結完了
と、どちらも整理の仕方として間違いではないのですが、
ポイントとなるのは粒度です。
これらのビジネスプロセスを整理する際は、必ず粒度を統一しておきましょう。
④ビジネスプロセスにITツールを紐付けてみる
ビジネスプロセスが定義されると、その作業(タスク)は手作業なのか、Excelなのか、その他システムを利用しているのか。
といった整理をさらに行うことができます。
すると、
・ここの手作業は自動化したほうが良さそうだ
・二重入力じゃなくて、連携ができそうだ
・そもそも、この作業って意味ないんじゃね?
といったことが分かってきます。
ここまで整理されると、ようやくITツールの選定がスタートです。
ベンダーに連絡をしましょう。
⑤システムにビジネスプロセスを合わせる
多くのシステムは、様々な企業のベストプラクティスの集合体になっており、最も効率化された流れになっていることが多いです。
もう、その流れに乗りましょう。
今の業務の進め方が・・・とおっしゃる方も多いですが、作成したビジネスプロセスと見比べてください。
カスタマージャーニーをもう一度みてください。
今こだわっているその内容は、お客さまのためですか?
あなたのエゴ(現状維持バイアス)ですか?
もう、どちらが正しい選択かお分かりですよね?
システムに合わせましょう。
余談:
「こんな例外も“よく”発生するからシステムで対応できないと困る!」
とおっしゃる方も多いですが、その“よく”は年に何回発生しますか?
システム導入のスケジュールを数ヶ月遅らせ、
多額のカスタマイズ費用を払い、
年に1回あるかないかの特殊パターンをシステムで無理やり対応させるんですか?
それこそ、手作業で年に1回対応した方が効率的なことも多いですよ。
全てをシステム化するのは本末転倒。
カスタマージャーニー、ビジネスプロセスを意識しましょう。
⑥ベンダーとの交渉
(ここは、ビジネス部門に限らない内容です。)
基本的に、ユーザー企業とベンダーの利益は相反していることが多いです。
私の過去のnoteでベンダー営業の裏側をガッツリと書いてきましたが、それを読んでもらえたらご理解頂けると思いますが、営業は高く早く売りたい生き物です。
基本的にこの構図になっています。
提案された内容が本当に必要な内容なのか。
ビジネスプロセス図とカスタマージャーニーを眺めて再度考えてみてください。
多くの場合、最小の構成が吉です。
⑦実際のユーザーに聞きに行く
ベンダーから事例を聞いたところで、それはとにかく美化されたストーリーでしかありません。
実際に美しい事例の裏には、失敗や苦悩の泥臭い話が大量に埋まっています。
ベンダーの口からではなく、直接聞きに行きましょう。
自分たちのコネで聞く先がある場合はそれが最高です。
コネがない場合、ベンダーに紹介依頼をしてみましょう。
ここで拒むようなベンダー(や営業)は危険信号です。
同時に、ベンダーには成功したパターンではなく、
「失敗したパターンと、その原因を教えて下さい」
と聞いてみましょう。
ここで明確な回答がないベンダー(や営業)も危険信号です。
⑧成功の定義とスケジュール
多くのIT投資において、成功の指標としてROIを計算される方が多いと思いますが、多分無意味だとおもいます。
ROIを事前に算出して、1年後などに定点観測している企業は5%未満(弊社調査)です。
それよりも、
3ヶ月後にどんな状態か
1年後にどんなビジネスプロセスになっているか
これが実現できていたら成功とする
と考えたほうが現実的かつ、建設的です。
また、ここでポイントとなるのが、スケジュールです。
多くのIT投資において、本稼働までのマイルストーンを引く企業が多くあれど、導入後の活用(運用)アクションプランを作成する企業は皆無です。
ですので、成功の基準とアクションプランをセットにし、
成功の基準を自分たちで作りましょう。
⑨責任と役割の明確化
自社でやること、ITベンダーに依頼すること、
自部門でやること、他部門に協力を依頼すること、
自分たちで意思決定すること、判断を仰ぐこと、
これらを事前に明確化させておきましょう。
明確化させておかないと、
自社とベンダー、自部門と他部門、経営層と自分たちで対立を生むだけです。
責任の押し付け合いは全く生産性の無い行為です。
責任と役割は明確化しておきましょう。
もっと言うなれば、プロジェクト化をするタイミングで早期に決定しておくことが吉です。
さらにさらに、これらを明確化し、キックオフも自分たちで主催できるようにしましょう。
最後に
ここまで9カ条を書いてきましたが、
明日からやれ!と言われてもいきなりできる方は少ないかと思います。
弊社では、これら9カ条の内容を支援するSaaS及び、プロフェッショナルサービスを提供しています。
現在、社数限定(かつ、残りの枠が僅少)ですが、ご興味のある方はお気軽にご連絡を頂けますと幸いです。
SaaSの営業×サブスクリプションの本質の正しい情報を書いていこうと思います! サポートいただけたら、リサーチ費用に充てたいと思います。 他にもHIPHOP好きな人と仲良くできると嬉しいです。