くらくら

大学3年 思ったことの記録

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初恋

きみの顔を見なくなってもう十年くらい。猫みたいなアーモンド型の目とか、小さすぎる気のする鼻とか、少しだけ立ってて大きく見えるけど形の良い耳とか、むっとしたような口とか、ひとつひとつの形は覚えているのにはっきりとしたきみの顔が思い出せません。なんだか、微妙なできあがりの福笑いみたいです。きみを見ていた教室の空気の匂いや温度は覚えているのにきみの顔はよくわからないのです。不思議なものですね。あんなに見ていたはずなのに。 きみの顔の記憶をどこにしまったか分からないまま過ごしていた

    • 父はヘビースモーカーだった。私の記憶の中にある父はいつも換気扇の下で煙草を吸っていたように思う。聞いてみると彼は中学生の時から煙草を愛用していたらしい。とんだヤンチャボーイだ。だから彼はいつも煙草の匂いがしていたし、部屋着には灰が溶かして空けた穴が必ずあった。その穴は、化学繊維が溶けて縁が瘡蓋のようにカリカリになっているのだ。私はその穴が無性に愛おしくて、よく指でつついていた。その穴から触れる父のやわこい肥満気味のお腹が気持ちよかった。 そんな父がおよそ一年前に煙草をやめた

      • ママ

        宇佐美りんの『かか』を読んだ。読んでる最中痛くて痛くてたまらなかった。薄皮が向けて血が滲んでいるような痛みを心に抱えながら読み終えた。母の顔が思い浮かんだ。 うーちゃんはどうしようもないほどかかを愛していたし、どうしようもないほど憎んでいた。憎みたいのに、自分の中心にはかかがいて、染み付いて取れることはないから、いつの間にかまたかかに愛を抱いている。うーちゃんは幼少期かかのことが大好きだった。その愛がうーちゃんの中に根付いているのだ。それ故に憎もうとしてもその愛が染み出して

        • 上を向いて歩く

          思えば私はよく空を見上げて歩く子供だった。下校中はだいたい空を見ながら帰っていたし、外に出たら必ず1回立ち止まって真上を見ていた。そうしないと怒られるとでも思っていたのかというほど、あるいは義務的に空を見上げていた。義務的になるほど空が好きなのだ。 真っ青な昼間の空というより、夕暮れや明け方の焼けている空が好きだ。明け方は、深海のような蒼色から、橙色、黄色、水色というグラデーションがたまらない。夕暮れは真っ赤に染ったり、ピンクや紫に染ったりする空がいい。夕暮れの方が明け方よ

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        • 小説
          1本

        記事

          最近急激に暖かくなってきた。桜も急かされるように満開になって早々と散っていった。もっとのんびりしてくれてよかったのに、と思いながら毎日家の前の公園に植わっている彼らを見ている。きっと彼らももっと長い間人々に見てもらいたかっただろうに。 暖かくなると出てくるのが虫だ。地を這っている虫であればかまわないのだが、羽虫が本当に無理だ。 まず音が無理。あれを聞くと毛が逆立つ。いつまで耳にこだまするそれは本当に鬱陶しい。少しでも音がしたら、実際に虫が居ないのだとしてもいる気がしてなら

          今を綴る

          自分の頭の中にあることをぶちまけたかった。いつも何かを考え込んでいる人間だから少しでも空気を抜きたいと思った。息を吹き込み続け止め時を見失い風船を割ってしまう前に。 前々からこの「note」というツールには興味を持っていたのだ。大学で同じゼミになった人が使っていたし、好きなクリエーターも使っていた。けれど、怠惰な人間かつ新しいことに臆病な人間であるから、なかなか「入手」の青いボタンを押すことをしなかった。それに、やるならば継続したい。けれど言葉にするのが億劫になって臆病に