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寒いことは武器になる…かも。

どうも、遠い昔の記憶を思い出しているおじさんです。

今でこそ天気予報が雪のマークをしているとこめかみに青筋が浮かぶ立派な南国人になりましたが、昔はカマクラの中で七輪で餅を焼くような冬に憧れていました。隣の芝は青い、ないものねだりってやつっすな。


寒さに弱いのはマンゴ―だけではない

寒暖差への耐性

人間は恒温動物なので、大体36±1℃くらいが平熱の方が多いんでないかと思います。体温が平熱±5℃も違うと相当危険ですし、瞬間的にはお風呂場でのヒートショックなどを警戒しないといけません。

それを考えると植物って割と我慢強い奴らが多いですよね。マンゴーが枯れるラインの寒さは人間にとっても危険です。

ずっと寒いことへの耐性

植物と比較して人間の優れた点は移動できることや、あったかい物を食べて厚着して動いていればある程度の寒さの中でも活動出来る点ですね。外で動いてるときより室温10℃でキーボードカタカタやってたほうがキツイです。指先が凍えてパフォーマンスが一気に低下します。

さて、ずっと文字ばかりでもつまらないのでちょっと写真を挟みます。

2023年夏に播種した実生マンゴー達
以前倉庫内温度3℃に遭遇したんですが元気にやってますね。

実生マンゴーはこれで4年連続越冬成功です。

過去播種した実生マンゴー2024の姿

感のいい方は他の実生マンゴーはどこへ行った?と思われるかもしれません。2019年に播種した初代のアーウィン実生は残念ながら枯れてしまいましたが、それなりに元気にやっています。

2020年播種グループ
2021年播種グループ
2022年播種グループ

注目して欲しいのは2023年播種したものの葉っぱの綺麗さです。いつも種から育てて室内で越冬する段階では綺麗なんですが、越冬後に野外へ出すとボロッボロになるんですよね。

原因の一つとして考えられるのは2回目以降の越冬を適当なビニールハウスで行っているために寒暖差があること。あとはマンゴーが好む気温帯は菌や昆虫にとっても活動しやすいということですね。無菌状態の清潔な種と用土から育ち、室内で越冬する一年目は虫や細菌の被害をほぼ受けません。

初期成長は胚の養分で行うのでこういう土がオススメですね。途中から液肥を使用します。

室内といっても無加温であるがゆえに虫くんたちはほとんど活動を休止しています。ということでタイトル回収『寒いことは武器になる…かも』です。暖冬といっても雪が降る程度には寒かったので、野外には今年も越冬に失敗した哀れなさつまごきぶりくんの骸が散乱しとりますわ。

寒いことを武器にする

マンゴーは少なくとも幼苗の段階では低温低日射環境への適応性は高めです。

マンゴーにとっては被害の出ない範囲の低温域で越冬することにより、虫や細菌の繁殖を抑えるという管理方法ですね。風通しの悪い高温乾燥状態だとハダニ、高温過湿状態だとカイガラムシが猛威を振るいます。低温無風管理だと全然成長しませんが、病気も出ませんし水の消費も少ないです。

例えばこんな管理法

アリとキリギリスの寓話をイメージしてもらうと早いかもしれませんが。

ビニールハウスのアイコンがなかったので家で代用
冬の到来はむしくんたちに取っては受難の時代です。
常に寒いと昆虫はほとんどいません。
仮に何処かから侵入したとして…
外気を取り込めば薬を使わずに駆除できますし、野外に逃げても生きていけません。

常冬の場所で常夏の作物を作ると、むしろ環境が違いすぎるがゆえに生態系のかく乱が起こりにくいかもしれませんね。北海道にはゴキブリがいないという都市伝説もありますし。柑橘栽培が盛んなこっちの方だと、どこからともなくヤノネ、ヒラタ、ロウムシなんかの厄介なカイガラムシがやってきて悪さをしますが、最初からいなければ理論上発生しないはずです。

極端な話

ニュースでロシアの研究者が南極でスイカを作ったというのを見ましたが、南極でマンゴーを育てるというのも夢がありますね。南極に生息する昆虫はナンキョクユスリカ一種だそうな。

雪国でのマンゴー栽培を考えてみる

北海道には行ったことはあっても住んだことはないので管理に関しては妄想ですが…

幼苗と成木では違うと思いますが、仮に成木でも安定した低温域では冬眠に近い状態になると仮定して管理方法を考えてみます。帯広の観測点を見るに、特に1~2月がすごいことになっているので、ここで最高気温15℃、最低気温5℃、平均気温7℃くらいで耐えてもらいます。仮にここを開花期にすると最高気温35℃最低気温25℃くらいに維持するためにどえりゃーエネルギーを必要としそうです。

開花期を一番暖かい7~8月に合わせると、アーウィンの成熟日数を130日ほどとしたとき、収穫時期は12月半ば~となります。完熟果の5℃での冷蔵可能期間は14日らしいので、クリスマスから年末年始のマンゴー需要を賄える感じになりますかね。収穫後に切り戻しは行わず、葉面散布等で樹勢の低下を抑えつつ寒さに馴らして冬眠に移行する感じでどうでしょうか。

  • 1~2月は最高気温15℃、最低気温5℃、平均気温7℃程度で冬眠させる。

  • 3~5月は最高気温30℃、最低気温20℃、平均気温25℃程度で樹勢を回復させる。栄養生長期間が短いが、必要であれば一節程切り戻しを行う。

  • 6月に加温停止、外気を入れて充実した枝を休眠・花芽分化へ誘導する。

  • 7~8月に再び加温し、最高気温35℃、最低気温25℃、平均気温30℃程度で一斉に開花させ、放虫等で確実に結実させる。仮に単為結実果が高品質の品種があれば、放虫は不要かもしれない。

  • 9~12月半ばまで最高気温30℃、最低気温20℃、平均気温25℃程度でなるべくストレスを感じさせないように育て、収穫後は花穂だけ落とし徐々に寒さに慣れさせる。

仮定に仮定を重ねた机上の空論ですが、どうでしょう。外気温と栽培設備内温度との差が(比較的)少ない作型になるので、夏に収穫するよりむしろ省エネになりそうです。温暖な地域では樹体をコンパクトに保つ意図もあってする切り戻し剪定ですが、栄養生長の期間が短く、収穫後に葉が健全であれば切り戻しはそこまで必要ではないかもしれません。

熱帯果樹の完璧な管理を目指したい方にとって一番面白い場所は北海道かもしれませんね。私には元手もありませんし、人生の余白が足りないですな。



ここまで読んでいただきありがとうございました。