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シニア(高齢者)ダイバーの事故が増えているって本当なの?

「シニア(高齢者)ダイバーの事故が増えているんですよ~」

こういう声を聞くと、そのニュアンスが気になってしまう。

単独やセルフと同様、ダイビング事故分析の際にやり玉にあげられがちなのがシニアダイバー。そこには、「他の層と比べてシニアは事故を起こしやすい」というニュアンスが含まれていることがある。

これは、よくない感じがする。

■なんで、高齢者ダイバーの事故が増えているの?

海保を始めとするダイビング事故データは、分母がわからない以上、事故数、具体例ならではの活用法を考え、事故率風に語るミスリードを意識する必要がある。

※この手のデータ分析で「急増!」という言葉を目にすることが、実は急増でないことも多い

僕がこの高齢者の事故数の増加データを考えてみる。

事故率がわからない以上、自分の経験に基づいた主観ということが前提だが、日本社会同様、いや、それ以上にダイバーは全体的に年齢が上がっている気がするので(=分母も増えているから)、そりゃ増えるでしょ、 と思ってしまう。

そして、これからはもっと増えるわけだから、当然、シニアダイバー向けのケアが必要になってくるでしょ、というシンプルな話。その対策のための事故分析なら建設的で素敵なわけで。

つまり、シニアダイバーの事故の増加は、一義的には“高齢者ダイバー”の問題ではなく、“ダイバーの高齢化”ではなかろうか。

同じに聞こえている人もいるかもしれないが、特定階層の問題と構造問題とでは異なるし、その意識の違い、ニュアンスの差がとても気になる。

例えば、自ら車の運転をやめる高齢者が多くても、ニュースになるのは高齢者の派手な事故。それを見て、「じじぃはしょうがねーなー。運転するなよな」みたいな、ニュアンス。

絶対数(増加)に引っ張られた人に対して極端に言うなら、「シニアダイバーは犯人ではないよ」と。むしろ、ダイビング界を支えている人たちだよ、と。

■高齢者ダイバーって事故を起こしやすいの?

そもそも、疾患や体力減少などシニアならではのウィークポイントがあるように、若者や経験不足(未熟)ならではのウィークポイントがあり、それを客観視し、ケアできるかどうかの意識の差の方が大きい気もする。

もっと言えば、教える側がきちんとしていれば、ダイビングは高齢でもできる遊びでもある。

ひょっとしたら、シニアダイバーの事故率は上がっているのかもしれない。そんなことを感じさせることもなくもない。

でも、僕は、基本、高齢者の分母の押し上げが原因な気がしているし、データだけではわからない以上、そう考えた方が建設的でフェアだ思う。

そういう意味で、必要なのは、高齢者ダイバーに対する“対処”や対応ではなく、高齢化に対する“対策”。

ダイビング業界の圧倒的真理である、「命を落とさず、お金を落とそう」に最も貢献しているシニアダイバーが(笑)、より充実したダイビングライフを過ごせるような環境が必要だということ。

この意識、ニュアンスが自分にとってはとても大事なんだけど、伝わるだろうか。

僕がここで言いたいのは、具体的な対策内容ではないので具体は省くが、ダイビング界のシニア対策は割と進んでいると思う。

そもそも、単独潜水などダイビングスタイルのリスクより、加齢によって増えるリスクは医学の領域なので対策はしやすいだろうし。

言いたいのは、高齢者ダイバーが他の層と比べて事故を起こしやすいって思っちゃっていない?ってこと。

先日の、単独潜水ってだけで悪いの?と似ている。

■事故データは大人な感じでながめよう

ダイビング事故データは、率や係数的なことが曖昧で、高齢者の事故増加に対して言えることは「これを機会に、シニアダイバー、気を付けようぜ!」「シニアダイバーが増えているから、ならではの対策、情報を充実させようぜ!」程度のこと。

「高齢者の事故、増えているってよ!」と言うのも啓発としてはよいと思うが、心の中で、「単に、高齢者が増えただけじゃね?」みたいなツッコミを持っていられるかどうかで、ニュアンスも変わってくるだろう。

そして、もちろん、一番大事なのは、シニアダイバーならではの具体的なケーススタディから予防を考えることだが、事故予防を考えた後って、どうしても安全至上主義のゼロリスク論みたいなマインドになりがち。

アウトドアという性質上、事故予防と同時に、安全と楽しみのトレードオフの視点から、自分のダイバーとしてのスタンスや行動、許容できるリスクなどを考えるきっかけになったら、大人な感じで素敵かなと思ったりします。

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