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530斎藤元彦「私が一番適任だ」

はじめに

10月7日、斎藤元彦氏は久々に県庁を訪れ、メディアの取材の中で次のように応えています。「失敗した人だからこそ新たにチャレンジできる。即戦力としては私が一番適任だと考える」
この言葉をこの状況で発することができる人間というのはそうそういないと思います。今日の教育コラムは失敗から立ち上がるその考え方について少しお話してみたいと思います。

2024/10/08【公式】さいとう元彦応援アカウント
2024/10/08 元兵庫県知事さいとう元彦X投稿より

失敗からどう学ぶ

「失敗した人だからこそ新たにチャレンジできる。即戦力としては私が一番適任だと考える」と語った斎藤氏の言葉を少し分析してみると、まずいくつかの立場であることを示していることが分かります。
①失敗した人という立場
②新たにチャレンジできる人間であるという立場
③即戦力になる人材という立場

この言葉をみて、少し前に流行し多くの人に定着している「失敗学」という分野の考え方を思い出しました。いくつもの関連した著書が出た時期がありました。畑村洋太郎さんや知の巨人と呼ばれた立花隆氏などが書かれた本は多くの実践家や専門家に影響を与えたと記憶しています。
では、果たして斎藤元彦氏はこの3つの立場に立てているのでしょうか。私にはそうは思えないのです。まずは、失敗した人という立場から見ていきたいと思います。

二つの失敗

 失敗は様々な理由で生じるわけですが、失敗発生後に取る行動も含めて大きく二つに分けることができます。
それが、良い失敗と悪い失敗です。良い失敗とは何かというと初めて人類が挑戦する様な出来事に向き合った時に生まれる失敗です。誰も何もわからないのですからいったい何が成功で失敗なのかわかりません。近い出来事で言うと最近でしたら新型コロナのパンデミックや東京オリンピックの延期などがそれにあたると思います。
このはじめての経験で私たちは新たな経験や知識を得ました。そこには失敗があったはずです。しかしこの失敗は回避することは難しいものです。なぜならどう対応したとしても正解が何か、完璧な対応は何かなどその時はわからなかったはずだからです。当然、こうした中で失敗を避けることは難しいです。ですから、これはしてもよい失敗で、得るものが多い失敗だと考え、後につなげていく知見を得ることに重きを置いていいのです。
では、悪い失敗とは何でしょうか。これは、良い失敗との対比で考えると、経験したことのある出来事から学ぶことができる、または既に知見のある出来事を繰り返す様な失敗だと言えます。例えば今回の告発文書問題で言えば公益通報者保護が十分に行えず通報者が不利益を被ってきた過去の事例がたくさんあり、その悪い失敗を繰り返さないためにすでに公益通報者を探索する様な行為を禁止している決まりがあるのです。
これも、良い失敗の中で考えられてきたものであり2022年の改定もそうした意味では失敗の上に成り立っているのです。では今回の斎藤元彦氏による自らに対する告発を自らの判断で誹謗中傷性の高い文章、嘘八百、真実相当性の無い文章と最高権力者が決定し、内部職員を使い告発者を探索させた行為はこの公益通報者保護法の改定の趣旨から見てどうなのでしょうか。
良い失敗の中で改定されたものに対する知識を共有できていなかった人間たちによって、さらなる失敗を重ねた悪い失敗だったのです。失敗したことを明日へのチャレンジを許された人間のように例えている彼の発言は、失敗に基づいた反省がなされていればそれは成り立つでしょう。しかし、彼は、3月27日の記者会見で告発者に対してとった行動やその後の懲戒処分、そして3月21日から始まった犯人の探索に至るまでその全てを法的に問題のないものとしています。
いったい彼は何に反省しているのでしょうか。それは不信任決議案の全会一致を受けてもなお権力の乱用に対する反省を示さず、失職の道を選び再選を目指しているでのです。故人への謝罪に至っては、自分は間違っていない為責任を感じていないという立場をとっています。
今回までの一連の斎藤知事の行動に対して、公益通報者保護法の趣旨や中身に対する理解が乏しかったことを指摘せざるを得ないのです。「失敗した人だから」という発言は反省の立場があって初めて成り立つ立場です。

即戦力

即戦力の指す意味は、官僚として公務員として即戦力という意味なら分かります。しかし、本人が述べているように政治家にとって最も重要な「道義的な責任」への理解が乏しいわけですから、政治家としての即戦力としては疑問が残ります。また、知事として権限の行使や権力の用い方を乱用している行動からも知事としての即戦力としては疑問符が付きます。
県職員が自由に発言し、県民のために働く環境を作ることも知事の重要な力とするならば、パワハラ気質が多々見られるアンケート結果からは、この部分についても即戦力を否定されるように思います。

知の巨人の言葉から

「失敗は必ず起こる。それを隠さず、それに負けない強さを持て」
この言葉は、ジャーナリストとしてそして知の巨人としても敬愛を集める立花隆氏の言葉です。2021年80歳でこの世を去った先生の言葉は、ありとあらゆるデータなり、ものを考える材料はいたるところにあり、それを自分で手に入れて、自分の頭で考えることが何より大事だということを説いています。この言葉は、兵庫県民のみなさんがこれから新しい知事を選ぶ中で今起きている失敗をいかに乗り越えていくかを考える際に大切なものを投げかけてるのではないでしょうか。

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