102 根曲がり竹の味噌汁
はじめに
今日の教育コラムは、先日、倉庫に片づけた荷物を整理している時に見つけた恩師の言葉から考えてみたことを書いてみたいと思います。
筆の達者な方で、卒業式の前日のホームルームの時に、私も長い列に並んで一筆頂きました。頂いた言葉は、「根曲り竹の様に強く生きろ」という一文でした。
私の地域の味噌汁
私の生まれ育った田舎では、根曲り竹と鯖缶でつくる味噌汁が雪解けを終えた本当の春の味です。他県の方にはなじみのない組み合わせですが、私は、これが一番うまい味噌汁だと今でも思っています。
根曲り竹は、姫竹とも言われ、タケノコと同じで、収穫後は時間と共にどんどん風味が薄れ、アクが強くなってきます。収穫したらその日のうちに調理するのがおいしく食べる秘訣です。雪が多い地域に生育するチシマザサは、若芽が地上に芽を出し始める時は、深々と降り積もった雪の重みで根元が曲がってしまいます。
見かけより味
私の地域でとれる姫竹は、曲がったものばかりですから、根曲がり竹とみんな呼んでいます。
大切なのは、見かけより味です。私は、この曲がった「竹の子」でしか出せない、出ない味が「筍」の味より好きなのです。
サバの水煮のうまみと少しの油気が淡白な根曲がりだけの味に旨味を与えます。輪切りにしても失われることのない歯ごたえが、シャキシャキ、キュッキュと口の中で心地よく、出しのきいたみそ汁と一緒になると最高のおかずにもなります。
できれば、味噌汁の仕上げに軽くといた卵を流しいれるとなおおいしくなります。よかったら、水煮の根曲がり竹と鯖缶で試してみてください。
贈る言葉
「根曲り竹の様に強く生きろ」と書かれた文字を読んでも、どんな生き方を指しているのか、小学生に私にはわかりませんでした。
しかし、大人になり教師になり、しばらくしてくると恩師の言葉の意味がわかるようになり、現役のころは、卒業生に寄せ書きを頼まれると、今じゃなくても、いつかどこかで読み返した時に届く、そんな言葉を選んで、書くように心がけていました。
私たちは、子どもたちに様々な形で言葉をかけ、励まし、伝えるという行為をしています。これを叱咤激励、応援、などと呼んだりします。こうした行為は、今すぐどうかしようとする為にするものもありますが、今ではなく10年後にその言葉の効果が出て、人生に活きてくるようにするような効果をねらうようにすることは大変、至難の業となります。
礼儀作法や人権意識や価値認識などといったものは大人になった時の方が子どもの頃の教えがものをいうことがあります。
私たちは、常に未来を生きる子どもたちの生涯に目を向けることが大切なのです。