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532 斎藤元彦 失われた3年間

はじめに

今日10月10日の斎藤元彦氏の街頭活動の様子がXに投稿されています。稲村和美氏の知事選挙への出馬表明を意識してか、今日の斎藤氏は稲村氏が市長を務めた尼崎市の尼崎駅での街頭活動でした。これは対抗馬として稲村氏の存在を強く意識した選挙戦略なのでしょうか。それとも偶然なのでしょうか。
相変わらず、自身のXでは一人の写真を掲載し、公式の応援アカウントと呼ばれる方で応援者が増えている様子を伝える戦術がとられています。
今日の教育コラムでは、知事の資質と組織マネジメントが問われる選挙であるという側面から様々な立場の方々の発言を見ていきたいと思います。

さいとう元彦氏のXより 2024/10/10
【公式】さいとう元彦応援アカウントより 2024/10/10

各市町村長の懸念

9月26日「本当にそこまでいかなければいけなかったのか」と述べて失職し出直し選挙に出馬する意向を示した斎藤元彦氏に対して、様々な方面から賛否の声が上がりました。
中でも私が注目したのは、兵庫県内の市町村長たちの言葉です。

①神戸市市長の見解
神戸市長の久元喜造(ひさもと きぞう)氏が「知事として主体的に責任ある県政運営をしてきたのか、自分の言葉でしっかり説明してもらいたい」と定例の記者会見で述べられています。この神戸市長の言葉は、大変に重いと考えています。主体的に県政を担ってきたことは言うまでも無いと思っていましたが、この日の記者会見での言葉には、重要な指摘が含まれていました。それは、斎藤県政の3年間でおこなった政策への苦言でもありました。
県立大無償化についても久元市長は「非常に不適切な政策であり、なぜ、県立大だけを無償化するのか」と批判しておられました。また、主体性という部分では、「大阪と連携、協調することは大事だが、言いなりになるということではない」とその政策の進め方について指摘されていました。
また、出直し選挙では「自分自身の県政をどう総括し、その上で政策展開をどうしようとするのか、明確に語ってもらえることを期待したい」とも述べられていることからも、彼の未来型の若者への支援という政策の中身についても検証の必要性があることを指摘されています。

②兵庫県市長会長の見解
丹波篠山(たんばささやま)市の酒井隆明(さかい たかあき)市長も次のような発言をされています。「失職ではなく辞職が筋。県民のことを第一に考えると、百条委員会で知事の過ちが指摘されたときなど、速やかに辞職するべきだったと思う」というものです。県政の混乱は各市の予算編成や行政にも影響が出ます。また、酒井市長は市長会の代表として「県民の声を受けて県政の停滞を解消するために不信任決議を可決した議会は正しかったと思うし、解散されずによかった」とも話されています。県政の停滞と混乱を招いている状況に対する危機感を強く感じておられるお一人だと言えます。

③川西市市長の見解
川西市の越田謙治郎(こしだ けんじろう)市長も「内部告発の対応について自己正当化したり、検証不可能な公約達成率などをアピールしたりと、メディアで一方的な発言を繰り返した。政治家として、知事として不誠実だ。」と述べ、9月19日以降の不信任決議案が可決された以降の斎藤前知事の行動を問題視されています。
こうした批判についても一定理解ができます。それは、選挙が近くなっていることが分かっているわけですから、駅前での辻立ちを重ねている行動なども含め、斎藤前知事のこうした失職までのメディアへの単独出演は、出直し選挙を表明して失職している以上は、政治利用と見られてもしかたないのではないかと思うのです。

④維新の会の県議団の見解
斎藤県政の立役者でもあり、後ろ盾であった維新の会兵庫県議団をまとめる、門隆志(かど たかし)幹事長も「優秀な人ではあるのでもったいないが、告発文書の作成者を探索したことは公益通報者保護法の解釈として、自分に甘い運用だったと思う。」と述べています。

兵庫県町村会からの申し入れ

10月9日、兵庫県町村会はデジタル化の推進や地域間格差の解消などを求める要望書を県に提出しました。兵庫県町村会は12の町村からなる会です。要望した内容の中にある地域間格差とは例えば、全ての市や町の給食費を無償化することなどが含まれています。また、 町村会会長の佐用町の庵逧 典章 (あんざこ のりあき)町長は「知事と県の新しい体制の中でいろいろな政策や課題について十分コミュニケーションが取れるように県政が進められるような体制をつくっていただきますようお願いします」とも申し入れされています。給食費の負担の差についてもそうですし、町村会とのこれまでのコミュニケーション不足についてもこの機会にしっかりと解消していってほしいという強い願いが込められて言葉に思えます。
いかに斎藤県政がコミュニケーション不足であり、その政治的な手法に問題があったのかを示す重要な指摘だと感じます。

選挙の争点として

今回の選挙の争点の一つは告発文書問題の扱いです。告発者への不当な対応を含め現在進んでいる第三者委員会の調査と百条委員会の調査結果を踏まえることはもちろんですが、現状においても指摘されている公益通報者保護法違反についてどのように対応がとられるのかは重要な点です。
そして、新たなリーダーの下で透明性の高い、風通しのいい、県職員が働きやすい県庁、県政をどのように再構築していくかが重要です。県民により良いサービスを提供していくこと、各地域の政策が前に進んでいくためにも県庁が正常に機能する県政がなされていくことは重要な争点です。

ピタゴラスの言葉から

No man is free who cannot control himself. ~Pythagoras~
自分をコントロールできない者に、自由はないのだ。(ピタゴラス)

この言葉は、紀元前約570年代に活躍した古代ギリシャの数学者としても自然哲学者としても有名なピタゴラスの言葉です。ピタゴラスの定理で有名な方ですが、神秘的な数理の世界を追及した宗教家としても有名です。
ピタゴラスの定理とは、直角三角形の3辺の長さに関する aの二乗+bの二乗=cの二乗、という関係で表した三平方の定理です。また、彼は、観測に基づいた知見ではないですが、球体というものに強い関心があり、最も早い段階で地球が球体であるという説を唱えています。結果的に地動説にも通づるような考えも導いています。
コミュニケーション不足という量的な問題とコミュニケーション能力という質的な問題を抱える大きな要因は自己のコントロールができないという点にあります。真理を追究し人に伝えていくそんな営みを大切にしていたピタゴラスは、自己のコントロールに基づく様々な偉業を成し遂げたと言えます。その一つがコミュニケーションなのです。斎藤元彦氏に知事として足りない資質がここにあるのかもしれません。

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