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520 斎藤元彦知事 4つのシン疑惑

はじめに

兵庫県の斎藤知事が最後の登庁を終えた昨日、片山副知事の時同様に特段のセレモニーはなく見送る県職員の数もごく僅かでした。また、例のごとく歩み寄り声援を送る県民の姿が最後の瞬間に見られました。
今日の教育コラムは、明後日9月30日失職する斎藤元彦兵庫県知事に対する新たな4つの疑惑をまとめることを通して、知事とはどのような存在なのかということを教科書に書かれているような選挙の規定や形式的な仕事の内容ではなく、その存在の意義という面からほんの少しお話してみたいと思います。

シン疑惑1 公約の達成率への疑惑

「ボトムアップ型の県政」を目指すという言葉は、斎藤元彦兵庫県知事の就任直後からの公約です。
それまでの知事にお伺いを立てる習慣や長時間におよぶ説明を減らすことで、下からの提案、職員一人一人の意識の改革といったものを狙ったもので企業や学校などでもトップダウンのやり方に相反する方法としてよく用いられる手法の一つです。いずれが良いか悪いかという話ではなく、斎藤知事はボトムアップ型の継続性の高い県政の進め方を推奨していくことを掲げていたわけです。
しかし、みなさんご存じのように9月4日までに公表されている百条委員会実施の県職員へのアンケートの結果では知事の「ボトムアップ型の県政」には程遠い世界観が見えてきました。
【アンケート結果の抜粋より】
「興味がない事業では職員の説明を受け付けない」
「細かいことでも報告がないと「聞いていない」と怒る」
「気に入らないことがあると話を聞いてもらえない」
「夜でも朝でもチャットで指示が飛ぶ」

など、アンケートの記載を見てもそうですが、今回の告発文章の調査についても、第三者機関の介入を提案する部下の進言の記憶を飛ばしてしまい、徹底調査を知事が指示するという事態が発生した可能性があることを鑑みてもこの公約は破られたのではないかと考えられます。すると驚異の98%越えの公約達成率も変わってくるように思いますがどうなのでしょうか。
やはり、知事という存在は自身の改革や事業の継続性を高めるためにも、県職員たちの手で口で政策が積み上げられていくような、そこに住む人たちの声が直接届くような政治を支える、認める存在である必要があるように思います。大きな権力をふるって改革を成し遂げたとしてもその理解が無ければきっと大きくゆり戻されてしまうのではないでしょうか。そうなれば右往左往することで苦しむのは県民なのですから。

日本ファクトチェックセンター(JFC参照)

シン疑惑2 最初から真実相当性があることに気づいていた

今回の問題が発覚して、7月の大きな出来事が起きて以降、斎藤知事だけは辞職を否定し県政を前に進めることに意欲を示していましたが、牛タンクラブの県幹部は、相次ぎ現場を離れる事態となっていました。
百条委員会の追及を見てきても感じることですが、告発文章の中身に真実相当性があることに県幹部たちは気づいていたのではないでしょうか。
斎藤知事は記者会見でもたびたび、告発潰しを正当化し、誹謗中傷性の高い文章であるとか、真実相当性が無いであるといった主張を繰り返し、自らの行動の正当性を主張してきました。公益通報者保護法違反についても、一向に自分が当事者であるにも関わらず、自ら公益通報ではないと判断したことを是としてきた立場です。
そして、兵庫県職員の中間アンケートにおいても実に全ての項目について目撃して知っていると答えている状況なのです。これだけ事件性の高い、限られたものしかしならないような出来事がいくつも並んでいる項目であるにもかかわらず、数件の目撃して知っているという人がいるとなるとやはり事実が漏洩することを恐れたあまりに、徹底的に告発者探しをし、情報の出所を吐かせようとしたのではないかと疑惑を持ってしまいます。

産経新聞 参照

シン疑惑3 不信任決議案提出前にすでに答えは出ていた

この点については、多くの人が疑惑を持たれていると思います。斎藤知事の失職表明の記者会見で明らかになったことは、まず、辞職は最初から考えていなかった、議会の解散も想定していないという発言があった点です。
そして何より、不信任決議案を出すほどの事なのかと述べられていう点です。これらの状況からすると自分は法的に今のところは何も確定していないのであるから問題ないとしているわけですから、辞職が伴う選択肢は全てがありえないわけです。
残すところは、出直し選挙のお金と応援のめどが立つかです。勝ち負け以前の問題として選挙に打って出る体制が整わなければ、できませんのでその時間や準備が必要なのです。つまり、斎藤知事は当初から失職して出直し選挙を考えていたのでしょう。すると20日以降のメディアジャックは、相当に計算された選挙運動のようにも思えるわけですし選挙準備のめどをつけていたとも考えられます。不信任決議案提出前からすでに失職、出直し選挙を想定していたとすれば、一貫して責任を認めない姿勢にも納得がいきます。

シン疑惑4 懲戒処分を早めた

百条委員会では、公益通報者保護法に関わる質疑も行われました。その中で一つの審議対象となったのが、処分時期を早めるよう指示したかどうかという内容でした。
斎藤知事は「調査は早くすべきだと言っていたが、処分を早くしろという指示はしていない」と主張しました。
また、人事課職員の証言で、当初3月の下旬ごろに第三者機関での調査案を策定していたとの証言をしていますが、斎藤知事は「記憶にない。話は出たかもしれないが、人事課の調査で十分となった」と述べています。
他の幹部職員の証言ともずれている認識についてどのように理解すればよいのでしょうか。
調査を第三者機関にゆだねなかったことは確かで、その提案があったか無かったかは定かではありません。しかし、知事としてそうした慎重な調査を必要としなかった判断があったことは事実です。その理由は実際に内部調査ですべて進んでいるからです。また、調査とは結論を出すためのものですからその調査の過程で3月27日に例の公開パワハラ記者会見が行われ、懲戒処分ありきの調査であったことが明らかになっています。
つまり調査を早める指示は、調査の結論として懲戒処分を行うことを前提とした調査結果を早める行為であったとも考えられるわけです。
この点が、公益通報者保護法の専門家である山口弁護士が指摘するように通報者保護の措置をとらなかった行為に当たるのではないかと一般的には予想できるわけですが、斎藤知事は「違法性の認識はない。手続きに瑕疵(かし)はない」としています。瑕疵が無いとは、過失がない欠落が無いとしているわけです。

終わりのない疑惑にどう向き合うか

そんな事いちいち言ってどうするのという疑惑を取り上げれば取り上げるほど、本質の告発の隠ぺいと告発者潰しから目が遠のくような気がします。
例えば、運転免許更新手続きを受付時間外に特別対応させたことなどについては、公務との兼ね合いで本来であれば実施しない特別対応を知事が受けたとしても私は、何ら恥じることはないように思います。しかし、斎藤知事はこうした点については申し訳ないと謝罪できるのです。
謝って済む問題は過ちを認めることができるが、認めた途端に違法性が確定する様な事については認めないのです。パワハラもおねだりも公益通報者への仕打ちも、パレードの寄付金集めも同様に明確に認めないのは法的なリスクを考慮しているのかもしれませんし、そうでないのかもしれません。
7つの疑惑の解明の中で、見えてきたいくつかの疑惑の内、私個人が感じている4つについて少しお話してみましたが皆さんはどのように感じるでしょうか。
私は、知事という仕事はよくアメリカ大統領に例えられるほど大きな権限を持っています。その権限を使う人間の心の在りようや振る舞いは、その都道府県を代表する顔であり、イメージにもなるのです。
だからこそ、知事への住民の期待は高いですし、その多岐にわたる公務に際して尊敬の念から協力を惜しまないのです。そうした知事への信頼が無ければ、二元代表制の一翼を担う議会と強調して県政を前に進めていくことなど不可能なわけです。


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