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民間シェルターを運営する中での関係機関との繋がりー求められる役割とは


ダイバーシティ工房が運営するシェルター「Le Phare(以下ルファール)」は、虐待やDVを受けているなど、危険な状況や困窮状態にありながら、既存の制度では保護を受けられず行く先のない主に10代~20代の、女性たちが暮らすことのできる場所です。

ルファールでは、中長期に渡って入居する方々の生活を支え、自立していくことをサポートしていますが、入居する女性の一人ひとりが抱える背景は様々で、多くの場合虐待や失業、生活困窮、発達障害など複雑な要素が絡み合っています。

入居している間に彼女たちが抱えているものを整理し、今後の道筋を立てていくためには何が必要かを一緒に考えていくことが私たちの役割の一つでもあります。

そのためには、一人ひとりの実情に合わせ外部の専門機関と繋がり、連携していくことが欠かせません。

一人ひとりにあった繋がりを探す

外部の機関との連携は、入居の前から始まります。
ルファールに今まで入居した方の大半は関係機関からの紹介経由です。
千葉県では幅広く相談支援を行っている中核地域支援センターとの連携が多くなっています。

その他、行政の婦人相談員や困窮者窓口、医療機関から問合せを受けることもあります。
また未成年の場合は児童相談所や学校のスクールソーシャルワーカーとの関わりも出てきます。

関係者間で方針を相談するなど、入居前に関わっていた機関とは、入居後も連携が続きます。
また入居した後に身分証を持っていないことが発覚したり、債務整理が必要だったりと、入居してから対応すべきことが発覚することも少なくありません。

市役所で手続きを行ったり、生活保護を取得するか、できるかどうかの判断についても話し合いを重ねたり、弁護士さんと相談したりするなど、安全を確保し生活を整えていくためにも外部との調整が必要となってきます。

もう一つの欠かせない関わりが医療機関との連携です。
ようやく安心して過ごせる場所に繋がったことで逆に心身ともに体調を崩し、部屋から出られなくなってしまう方や過去の壮絶な経験から、フラッシュバックを起こしてしまう方もいます。

外に出るのが難しい場合訪問看護という形も取りながら、シェルターの運営に理解のある心療内科の先生による医療的なサポートを依頼していきます。


どんな決断もベースにあるのは本人の「どうしたいか」

生活が安定してくると、利用者が独り立ちを目指し、新しいことを始めたいという気持ちも芽生えてきます。
就労に向けて若者サポートステーションやハローワークに通ったり、ハローワークに通う中でパソコン講座に参加した利用者の方もいます。

また一人暮らしに向けた物件探しの過程では、シェルターに理解がある不動産屋さんと連携をしていくこともあります。


利用者の今後を考えていく上で、私たちが「ここに繋がったらいいのに」と思うこともあります。
安全面で欠かせない連携はもちろんありますが、原則として利用者さんたちに支援機関や医療機関と繋がることを押し付けることはありません。

私たちも開設当初は焦りもあり積極的に医療機関への通院などを勧めようとしたこともありましたが、本人が納得せず「行かされている」気持ちのまま繋がってしまうと、次第にひずみが生じてきます。選択肢を提示しながらも、最終的には本人の意思で決断することを大切にしています。

いつになったら次のステップへ進めるという、明確な道筋を事前に描けるわけではなく、一人ひとりに合ったオーダーメードの支援が求められます。

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自己決定していく瞬間に寄り添うこと

その中でルファールの役割は、利用者の生活のサポートをしていくこと、そして様々な選択肢が出てきた際に、気持ちを受け止め共に考え、自己決定する瞬間をサポートしていくことだと感じています。

持ち帰ってきた求人票の中からどこに応募をするかを一緒に調べたり、今後の暮らしについてどのような選択を取るか、一つ一つに起こりうる可能性を検討したり。特別な会話がなくても、就職活動のために早く出ていく利用者さんたちを朝一番に「いってらっしゃい」と声をかけて送り出し、帰った時には、今日あったことに耳を傾けたり。

安心して過ごす場にようやくたどり着いたと同時に、今後の生活のこと、就職のことなど、彼女たちが短期間で決めなければならないことが山ほど出てきます。

ルファールは、そんな時に彼女たちと一緒に一つずつ、今できることを明確にしながら、これからに向けてのお手伝いを行っていくーそんな積み重ねの日々を過ごしています。


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シェルター「ルファール」についての過去の記事はこちらからお読みいただけます。ぜひご覧ください!

辛うじて社会とつながれた先で一緒に生きる -民間シェルター「ルファール」-
コロナ禍で立ち上がった若年女性のためのシェルター「Le Phare」1年のあゆみ
「やっと人間に戻れたような気がする」心身ともに休める場所

「Le Phare(ルファール)」は、孤立、困窮している若年女性を受入れ、他団体と連携しながら伴走支援をしている民間シェルタ―です。2022年2月まで、休眠預金を活用した事業として運営されています。
https://note.com/diversitykobo/n/nb23186464159
ルファールの運営には、家賃に加え利用者たちが生活していく上での食材費、生活用品費、水道光熱費や、スタッフ人件費などを必要としています。助成期間以降、運営を継続していくため、現在寄付による支援を集めています。どうぞご協力をよろしくお願いいたします。
https://www.diversitykobo.org/donate

ダイバーシティ工房は「制度の狭間で孤立しやすい人たち」が、困った時にいつでも相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。民間シェルターの他にも、学習教室、コミュニティカフェ、保育園、SNS相談、食料支援などの活動を行っています。活動報告やイベントのお知らせを配信中ですので、ぜひメールマガジンにご登録ください!

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