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社会から断絶させない、民間シェルター『ルファール』の役割

「ここは孤独にならないし自由でいられる。そうさせてくれてありがとう」

民間シェルター『ルファール』に入居する女性が、支援員の私にある日そう言ったことがありました。

彼女がありがとうと言った「自由」が指しているのは、例えば気が向いたときに外に出て散歩したり、近所のスーパーやコンビニで日用品の買い物をしたり、自室で好きにスマートフォンを使ったりする日常のことです。

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虐待やDVなど危険な状況にある女性を保護するシェルターでは、ご本人や他の利用者の身の安全を確保するために、一時的に女性の行動や選択に制限をかける対応が優先されることがあります。

施設によってはそれが、1人での外出禁止やネット利用の禁止、他の利用者との会話禁止といった具体的なルールの形で表れます。

『ルファール』でも、自宅が安全ではなかったり、危険な状況や困窮状態にある若年女性が生活をしています。

安全を守るため、住所が外部に知られないためのルールは設けていますが、ここ『ルファール』では利用者同士の交流も大切にしながら、本人たちが息苦しさを感じすぎないように工夫をしています。

この「ありがとう」を聞いたとき、施設の役割として設ける行動の制限が、女性たちを守るためにあることを支援者の1人として心底わかっているのと同時に、人とのつながりを絶つということが本人にとってどれだけ辛いことだろうと実感しました。

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どんなときも社会とのつながりを断たない

安全な場所と引き換えに、それまでの人生で築いた人間関係や得たものを投げ出さなければならない。それを実質的に強いられるのが、苦しんだ末にやっと逃げ場を見つけた女性たち。

こうした現実を思うたび、何とも言えない気持ちになります。

行動や選択の自由がある場所でも安全に暮らせるケースはきっと多くあり、もしその選択肢を選べるのなら迷わず選び取る女性もまた多くいるはず。

日々自分たちが直接関わるケースや関係機関から聞く話を通し、そう実感しています。

だから私たちがつくる『ルファール』は、社会や他者とのつながりを断たなくとも安心して暮らせる場所という、1つの選択肢でありたいと思っています。

安全を担保するものは、施設の環境やセキュリティシステムといった物理的な要素も多く絡むけれど、「安心する場所」をつくるものは、一緒にいる・関わる人の存在や気配だと思うのです。

「ここは大丈夫、安心だ」と思えて「孤独にならない」場所。
そしてありがとうと伝えたくなるほどの「自由」の実感。

これらは1つ1つが偶然に感じとられたものではなく、全てが揃っていたからこそ成り立ったもののように感じます。

立ち寄った店の店員さんと交わした会話の内容を楽しそうに話す様子や、かつて一緒に暮らし退去していった仲間とその後も支え合う姿を見ると、彼女たちと外の世界のつながりを守りたいと思わずにいられません。

安全と自由が両立する場の選択肢を

外の世界と関わったとき、それを断絶した場合と比べれば多少なりとも伴うリスクは確かにあります。

安全面に限らず、例えばお金の管理がうまくいかず使いすぎてしまったり、本人にとっては失敗したと感じられる出来事にも遭遇します。

それでも社会で人とつながり続けるからこそ心身が回復し、力を蓄え、新たな生活に踏み出すと決めた女性を送り出してきました。そして今、そうしようとする女性たちと暮らしています。

私たちは悩みながら、それでもどうかできるだけ自由でいて安全な場所で心身を休ませ、次のステップに行くまでの時間を過ごせる場所でありたいのです。

そしてその選択肢を提供し続けられるよう、社会とゆるやかにつながれる居場所をつくっていきたいと考えています。



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シェルター「ルファール」についての過去の記事はこちらからお読みいただけます。ぜひご覧ください!

民間シェルターを運営する中での関係機関との繋がりー求められる役割とはー
辛うじて社会とつながれた先で一緒に生きる -民間シェルター「ルファール」-
コロナ禍で立ち上がった若年女性のためのシェルター「ルファール」1年のあゆみ
「やっと人間に戻れたような気がする」心身ともに休める場所

「ルファール」は、孤立、困窮している若年女性を受入れ、他団体と連携しながら伴走支援をしている民間シェルタ―です。2022年2月まで、休眠預金を活用した事業として運営されています。
https://note.com/diversitykobo/n/nb23186464159


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