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医療的ケア児を保育園に入れるまでの、保護者目線の怒り心頭note
こんにちは、ダイバーシティ工房広報ファンドレイズチームのSです。
今日は私の娘の話をしたいと思います。
24時間酸素つけっぱなしの医療的ケア児の娘
私には3歳の娘がいます。先天性の心臓病で、24時間鼻に酸素のチューブをつけて生活している医療的ケア児です(以下「医ケア児」)。高齢者の方々が酸素ボンベを引いて歩いていますが、娘も同じものを使っています。
(酸素はついていますが、生活の制限は一切なく、歩いたり走ったり活発に動くことができます)
臨月の頃、心臓の難病を複雑に合併していること、出産予定だった病院では赤ちゃんを診れないことを宣告され、病院の廊下で夫に電話しながら泣いたことを今でもはっきりと覚えています。
生きて産まれてくれるのか、長生きしてくれるのか、本当に心配でした。
そんな娘は今、酸素をつけて元気に保育園に通っています。よく食べ、走り回り、お友達とぷんすか喧嘩もする気の強い女の子です。
今日はそんな娘の保育園入園についてのお話をシェアしたいと思います。
医ケア児の親として、大切にしたいこと
酸素をつけた医ケア児である娘の保育園について考えたとき、私たち夫婦にはどうしても譲れないこだわりがありました。
それは、「区別されない環境で育てる」ということです。
市役所や子育て支援センターに医ケア児が入園できる保育園について相談したところ、「隣の自治体には認可保育園の中に医ケア児専用部屋があるから、そこなら安心ですよね」と言われたことがあります。
その時私には怒りの感情がこみ上げてきて、「どうしてそんな区別された部屋に入れるんですか?」と思わず聞きました。その人は良かれと思って提案したのに、私が怒り出したので驚いたと思います。
もちろん重度の医療的ケアが必要で、感染を避けるために他の子どもたちから離れて過ごす必要がある子どもたちもたくさんいます。しかし娘の場合は、服薬以外の医療行為は一切必要ありません。「ただ酸素がついているだけ」です。
「誰かが娘の酸素を背負って、娘と共に行動してくれればいいだけなんですけど」と言い張る私に対して、
「そう言われても、医ケア児なんだから何らかの配慮が必要でしょう」という自治体。
「配慮」ではなく「区別」ではないかと、これまた怒りでしたね。全く話が通じず、平行線でした。
自治体への不信感と怒りの連続
ちょうどその頃、法改正があり、医ケア児を幼稚園や保育園で受け入れることが義務化され、自治体のホームページにも医ケア児の受け入れについて記載がされました。しかし、その内容を読んでびっくり!
受入れ基準に「障がい者手帳もしくは療育手帳」と書いてあるのです(当時)。
娘は障がい者手帳を持っていません。主治医に聞くと、「手帳をとろうと思えばとれるけど、一番下の級ですね」と言われました。必要がないのに保育園に入るためだけに障がい者手帳をとるというのは納得が出来なかったので、うちはとりませんでした。
夫が自治体に電話し娘の状況を伝えると、手帳がなくても入園の検討はしてくれることになりました。そもそも医ケア児と障がい者手帳は全く別物であり、基準としてナンセンスだわ!とこれまた怒りでした(怒ってばかり)。
その後、娘を受け入れたいと言ってくれる保育園から連絡があり、入園に向けて自治体も交えて検討が始まりました。
しかし、話はスムーズに進みませんでした。結局のところ自治体からは医ケア児を預かるリスクばかりに目が向けられ、娘が一人の人間として当たり前に保育園で社会生活を送ることの大切さを全く考えてくれていないように私は感じていました。
好きで病気で産まれたわけではないのに、そして痛くてつらい手術や治療を何度も乗り越え今ここにいるのに、なぜ健康な子どもたちと同じような生活をさせてもらえないのかとまたしても怒り心頭でした。
素晴らしい保育園との出会い
しかし手をあげてくれた保育園は、娘が保育園で生活することの意義や成長を大切にし、入園を後押ししてくれました。本当にありがたかったです。
色々な議論を経て、娘は1歳の4月から保育園に入園しました。
今、娘は入園して1年5カ月ほどたちました。保育園という小さな社会の中で刺激を受けて、すくすく育っています。毎日元気に笑顔で楽しそうに通っています。保育園に入園できたことで、母である私も仕事ができ、私自身の人生を生きることができています。
入園して10か月ほど経った時、園長先生と看護師・担任の先生と私での面談がありました。その時に園長先生から言われた言葉が忘れられません。
「ひかりちゃんをこの園に預けてくれてありがとうございます。他の子どもたちも職員もみんな、ひかりちゃんから教えてもらうことがたくさんあります。ママとパパが大変な思いをして、それでも入園させてくれてありがとうございます」と。
怒ってばかりでエネルギーを使い、疲れ果てていたのもあり、報われましたね。
娘の病気が分かった時、「これから先どんな困難があっても、いつでも希望の光が降り注ぐように」と願って「ひかり」と名付けました。
素晴らしい保育園に出会い、みんなから愛されて育つ娘は、たった3歳で既に私たち家族の願いを叶えてくれています。
本来、「多様性」とは頑張って意識するものではない
医療の発展と共に救える命が増えてはいても、障がいや病気を持ったまま生きる子どもたちはこれからも減ることはありません。それぞれに合ったケアができ、社会から区別されずに色々な人々と関わり暮らせる社会になるといいなと思います。
多様性を認め合うというのは、本来は大人になってから頑張ってやるものではありません。
子どものころから、病気、障がい、片親、貧困、性別、人種、他にも色々な多様な人々がいる環境で育つことが、本当の意味で差別や区別をなくすことだと私は思っています。
現に娘の保育園では、0歳~5歳の子ども達でも娘の酸素チューブに対して「ただひかりちゃんに必要なもの」という何の区別も偏見も疑問もなく接してくれています。
娘の保育園のように、どんな子であっても受け入れたいという想いのある場所が増えていくことを願っています。
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ダイバーシティ工房は、「制度の狭間で孤立しやすい人たち」が、困ったときにいつでも相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。
発達障害があるお子さんを対象にした学習教室、保護者の就労状況やお子さんの発達・軽度の発達障害などにより保育園に入りづらいご家庭にご利用いただける保育園、コミュニティカフェ、自立援助ホーム、SNS相談の運営など地域の0歳~20歳の子ども・若者とその家族を主な対象に活動を行っています。
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