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【船橋篇|全国出張】どんな場所でなにをして生活したいか?ものづくりと福祉施設
こんにちは。
NPO法人ダイバーシティ工房アウトリーチ事業部スタッフの松村です。
今年度の9月から3月にかけて「全国出張プロジェクト」と称し、全国の子ども若者支援に取り組まれている団体の活動を直接見に行く取り組みを開始しました。
全国の団体さんの活動を勉強して私たちの本拠地・市川市の地域づくりへ還元したり、むすびめに来られる全国の利用者さんへの情報提供・連携に活かすことが目的です。
「むすびめ」とは
こどもと家族の総合相談LINE窓口です。
生活をする上でのちょっと誰かに話したいこと、知りたいことどこに相談していいかわからないことについて、情報をお伝えしたり、一緒に考えたりする無料のLINE窓口です。内容や年齢にかかわらず、だれでもつかうことができます。
プロジェクトの記録を公開しながら、日本全国の支援団体から得た学びを共有したいと思います。
今回は、自団体のサービスの利用が終了した後の子どものその後の暮らしをどうサポートできるか、子どもの居場所や活躍できる場を知りつなげていきたい、との考えから、
市川と隣接する船橋市で、社会福祉法人地蔵会 空と海さんを訪問させていただきました。
【活動内容】
自然がすぐそばにある環境で、障害のある方とともに身体づくり、ものづくりをコンセプトに暮らしの場を作られている。およそ30年前、現理事長の大野さんと施設長の奥野さんがスイミングスクールで出会い、障害をもつお子さんが、卒業後に過ごすところがないという声を受けて、無認可小規模作業所から活動が始まった。
ギャラリーを介して生まれる人や外との接点
最初に見せていただいたのが、就労継続支援B型と生活介護支援事業所を一体的に運営しておられる「アトリエ空と海」。
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朝の森での体操の時間から戻った利用者さんが、自分のペースで自分のしたいことをして過ごしていました。
糸をまく人、布を織る人、金属を叩いて成型する人、横になって休む人。
スタッフさんも一緒になってものづくりをしていて、穏やかな空気の流れる場所でした。
ギャラリーが併設されていて、お客さんが作品を手に取り購入する様子が利用者さんも見られるようになっていました。チクチクと丁寧に刺された刺し子をふんだんに使った洋服や、世界に一つしかない布製の人形、細かく手作りされた焼き物や木工。本当に素敵な作品ばかりでした。
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中には「○○さんの作品を購入したい」とお店に見える方や、「この作品を作った方にお会いしたい」とおっしゃる方もいるそう。作品を介して、利用者さんとお客さんの接点が自然に生み出されていました。
どんな場所で生きたいか?を考える施設づくり
次に見せていただいたのが「グループホーム空と海」。 利用者6名、ショートステイ2名の建物で、男女共同で受け入れをされていました。
それぞれの部屋には作品のカーテンやランプシェード、大きな絵画も飾ってあり、 消毒液のポンプや電気のスイッチ、あらゆるものが利用者さんの手によって芸術品になっていました。
建物全体に木の温かみが感じられ、吹き抜けや暖炉、鶏のいる庭がすぐそばに見える大きな窓など、定員8名の施設と聞いて驚くほどの広さと居心地の良さ。画一的な「福祉施設らしさ」を感じさせない空間でした。
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施設長の奥野さんは、経営や効率性の観点からただ施設の利用人数を最大化するような施設づくりには関心がないといいます。
これだけの広さがあれば吹き抜けにせず2階建てにし、もっと人を入れることもできます。実際に福祉施設の経営者の方の見学を受け入れると、なぜそうしないのか?と不思議がられたり、質問を受けることもあるそう。
最低限の面積に入れるだけの人数を詰め込むような施設を建てたとして、
「そんな場所でずっと生きていけるか?」という大野さんの言葉が、空と海全体の環境設定の意図を体現しています。
建物の左側には比較的大きな作品を展示・製作するスペース「ヒュッゲ」があり、そこでも制作活動に取り組む利用者さんの姿がありました。
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働く人も食べる人も大切にされるレストラン
同じく就労継続支援B型と生活介護支援事業所を一体的に運営しておられる「らんどね空と海」。 こちらは木の風合いが美しい建物で、レストランを運営されています。
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部屋を飾るファブリックからトング、お皿の一つ一つが利用者さんの作品です。メニュー表は利用者さんの手作りで、コースが2つとシンプルな構成。
一皿ずつ、シェフがホール担当の利用者さんへできた料理を手渡し、それを丁寧に運び料理の説明をする。ゆっくりとした時間の中で、利用者さんが落ち着いて接客することができる仕組みがありました。
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バスに乗り遅れないか気にしつつ最後のデザートを待っている私たちに気づいて「お急ぎですか?大事な用事ですか?」と声をかけてくださったホールのスタッフさん。キッチンの方に、「大事な用事なので、できるだけ急いで作ってください」と伝えてくださいました。
ものづくりとクオリティを両立させるもの
最後に、空と海で創業当時から行われている、紙漉きや木工を行う「紙好き工房空と海」を案内していただきました。
施設長の奥野さんによると、はじめに取り組んだのは「押し花をちりばめた紙漉き」。身長ほどの長さのある大きな和紙の作品を船橋のデパートでの販売したところ、高島屋のバイヤーの目に留まり、全国へと販路が広がったそうです。
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今では利用者さんの個性と感性を生かし作られた様々な作品が認められ、企業からも声がかかるようになったのだとか。毎年、全国各地で展示会を多数実施しておられます。
ここまで見せていただき、どうやってデパートにまで販売されるようなクオリティの高いものを作り続けているのだろう?という疑問が湧いてきます。
その答えの一つは、障害を持つ利用者がその特性などによって“うまくできないこと”にも作品としての面白さを見出す見立ての力を大切にして、福祉業界の経験者だけでなく、美術大学を卒業した方や、自らセンスを磨き続けることにこだわる人、その人の長所を引き出せるような人を積極的に採用している、というお話の中にあるように感じました。
ものづくりを通して、障害のある人や障害への社会の認識を変えていく。それは利用者の持つ感性をどのように社会に発信するかを常にスタッフに投げかけることで、利用者さんとスタッフがお互いを高め合っているような作業にも見えました。
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どう違うかではなく、なにを共有しているか
今建設中の建物はデンマークで学び日本で福祉建築を設計されている設計士さんがかかわっているそうです。 デンマークでは、18歳になればどんな重度の障害を持つ人も家庭の外へ出て、国全体、社会全体で支える社会なのだとお話を聞かせていただきました。
日本ではまだまだ、障害のある人を社会の中で「健常者」と切り離すような現状があります。社会に出て自立をしたくても、仕事の機会において、一般的とされる労働契約のもと働くことが難しい場合に利用する就労支援施設では、仕事をこなしてもとても一人では生活できないわずかな工賃しか支給されない現実もあります。
ある環境の中で、何をさせてもよくできない人と、何をさせてもよくできる人がいたとして、両者が同じ場所に立つことはできるのか?目線が揃うのはどんな時か?そう考えたときに、幸せを感じるタイミングは同じではないかと思った、という奥野さんのお話はとても印象深いものでした。
素敵なものに価値を感じる、という共通項で人の縁を結ぼうと動かれたからこそ、利用者さんが「障害のある〇〇さん」ではなく一人の人やものづくりの作家として受け止められ、最初から当然そうであるように尊重されているのではないかと感じました。
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* * *
今回の視察を通じて、社会全体が「障害」という枠にとらわれず、障害の有無に限らず、色々な人がいることを前提に環境を作っていけば、社会を構成する多くの人が安心して暮らせる場になるはずだと改めて感じました。
私たちが目指す「地域に溶け込む福祉」を達成するためには、それって素敵、面白い、と感じるような物事や経験をあらゆる人と共有したり、一緒に生み出していくことが一つの方法かもしれない。そんな風に力強く感じさせていただいた訪問となりました。
「全国出張プロジェクト2023」は、厚生労働省による孤独・孤立対策のための自殺防止対策事業の支援を受けています。
ダイバーシティ工房は、どんなライフステージにあってもだれもがふと相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。
SNS相談むすびめのほか、学習教室、コミュニティカフェ、保育園、食料支援、生活支援拠点の運営など地域の0歳~20歳の子ども・若者とその家族を主な対象に活動を行っています。
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