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【沖縄篇】日本全国の支援団体と就労支援で繋がりたい「全国出張プロジェクト」
プロジェクトの背景
こんにちは。
NPO法人ダイバーシティ工房で広報を担当しています、小林です。
ダイバーシティ工房では、今年度の7月から3月にかけて「全国出張プロジェクト」と称して、
全国各地の子ども若者支援に取り組まれている団体さんの活動を直接見に行く取り組みを開始しました。
プロジェクトを通して、全国の団体さんの活動を勉強して私たちの本拠地・市川市の地域づくりへ還元したり、
むすびめに来られる全国の利用者さんへの情報提供・連携に活かすことが目的です。
「むすびめ」とは
こどもと家族の総合相談LINE窓口です。
生活をする上でのちょっと誰かに話したいこと、知りたいことどこに相談していいかわからないことについて、
情報をお伝えしたり、一緒に考えたりする無料のLINE窓口です。内容や年齢にかかわらず、だれでもつかうことができます。
誰かの手を借りたいなと思った時に、ちょっと相談してみると、新しい繋がりが見つかるかもしれません。
生活の困りごと、悩みごとを、ちょっと話してみませんか?
今後こちらで記録を公開しながら、日本全国の支援団体から得た学びを共有したいと思います。
沖縄の「暮らしの中に溶け込む地域の居場所」を見に行こう!
7月の訪問先は、プロジェクトの中で最遠方となる沖縄県。
沖縄は、ダイバーシティ工房代表の不破が2年ほど前に移住をした場所でもあります。
この度の出張は、全国各地にいるダイバーシティ工房のスタッフが、パソコン越しではなく直接顔を合わせる機会ともなりました。
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参加したのは各事業部のマネージャーを中心に10名。
事業の現場である「学習支援」「保育」「生活支援」「アウトリーチ」からリーダーやマネージャー、
事務局からは事務局長、人事部長、組織づくりマネージャー、広報担当とすべての事業部を跨いだ面々が集結しました。
今回沖縄で訪問した(予定だった)のは、この先のダイバーシティ工房がありたい姿、「暮らしの中に溶け込んで営まれている地域の居場所」です。
支援をする、されるという関係性以前に、そこに行きたくなったり、そこの人に会いたくなったりする場所です。
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今回の訪問予定
● 社会福祉士と保育士夫婦が営む「パーラーOKI」
● 沖縄県北中城村のベーカリーカフェ「cotonowa」(※残念ながら、新型コロナウィルスの状況によって急遽訪問を中止しました。)
パーラーOKIの子どもも大人もお年寄りも立ち寄れる場所
出張当日、出発時に悪天候に見舞われた関東とは打って変わって快晴・猛暑の沖縄。
那覇空港から車を走らせ、うるま市安慶名にあるパーラーOKIさんに向かいました。
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「パーラーOKI」さんは、東京から移住された、現役児童養護施設職員で社会福祉士の須藤竜(RYU)さんと、保育士であり、保育園のほか、幼稚園、児童養護施設、子育て支援センターでの職務経験のある千暁(CHIAKI)さんご夫妻によって2021年から運営されています。
今回は、沖縄の子ども支援の現状や現場から見える状況について、じっくりとお話を伺う勉強の場も作っていただきました。
パーラーとは
沖縄ではおなじみの文化で、タコスや沖縄そば、アイスクリーム、飲み物など軽飲食ができたり、ゆんたく(おしゃべり)したり、地域住民にとっては憩いの場となるような売店や店舗のことだそう。
通りに開かれた店舗にはテーブルやいすが並べられ、売店ではタコライスやキーマカレーといったごはんもののメニューから氷、コーヒー、タピオカドリンクなどが手ごろな価格で販売されていました。
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肌がジリジリと焼かれる日差しの暑さの中、私たちは次々と冷たいドリンクを注文しながら、お話を伺いました。
RYUさんCHIAKIさんご夫妻は児童養護施設で勤務されてきた中で感じた、
「この子ども達やその保護者に対して地域で話を聞いてくれる大人がいれば、子どもが施設への入所に至る前に状況が違ったのではないか」
「親が子育てで悩んだ時に、行政に相談するのはハードルが高いのではないか」
という想いから、福祉施設ではなく、地域の誰でも気軽にふらっと立ち寄れるパーラーを2021年10月にオープンされました。
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子ども食堂が多い沖縄の中で、あえて子どもに限定せず、大人もお年寄りも立ち寄れる場所にこだわっているため、
平日の昼間にお弁当を買いに来る小学生や、土日に行き場所がないのか朝から夕方まで近くをうろうろしている子どもの姿に加えて、休憩しているおじいがその日初めて会った子どもに食べ物やお菓子を買ったりする風景もあるそうです。
テラス席でそんなお話を聞いているときも、ふと店の前を通りかかった高校生に声をかけるRYUさん。登下校中の子どもへの「おかえり~」など、子どもへの声かけや会話は日常の風景です。
「施設」や「支援機関」といった空間ではなくパーラーだから生まれるやりとりが、実際の様子からわかります。
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進学率が高い沖縄の社会的養護の現状と「孤立」の問題
勉強会では、沖縄の社会的養護の現状やパーラーOKIから見える状況をより詳しく知ることができました。
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沖縄県は貧困率が高く、子どもの相対的貧困率はおよそ30%と全国平均の2倍という数値が出ています。ひとり親家庭も多く、母子世帯の割合は全国で1位です。
と同時に、こうした貧困全国ワースト1位、という注目を集めやすいデータだけからは見えない他の側面もありました。
例えば、虐待や貧困などの理由から親と一緒に暮らせない子どもが、施設ではなく里親など家庭的な環境の中で暮らす里親等委託率は全国で6番目に高い。(2021年24日の沖縄県議会一般質問答弁より)
そして、児童養護施設などで暮らす社会的養護下にある子どもの大学・専門学校等への進学を支える仕組みも充実しており、
入学金・授業料を全額賄う給付型の奨学金制度があるため、大学進学率については、沖縄県全体よりも児童養護施設出身者の方が高いという実態もあるほどです。
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しかし、進学率が高い一方で、人や社会との繋がりが保たれないと孤立しやすく、最終的には中退に繋がりやすかったりなど、施設退所後の課題は金銭面以上に「孤立」に絡む場合が多いのだとか。
「社会的養護に当てはまらないけど、周囲からは見えずらい場所で困っている子どもや若者が、公的な窓口や支援機関には行かなくても、地域にあるパーラーなら行く/知り合いがいる。その中で、パーラーOKIでなら、本来必要とされていたサポートに繋がるというケースがある。」
私たちダイバーシティ工房が運営する拠点やサービスを通じても、「支援機関」としてではなく、生活の中で立ち寄れる場だから出会えた人がいたことを改めて思い出しました。
特に、
・施設を退所した後にも、地域の中で繋がり続け、また何かあったときに相談できること。
・本人の意思が伴ってはじめて支援に結び付けられること。
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それらの重要性と難しさを痛感している生活支援事業のマネージャーからは共感の声が出るとともに、日々対峙する課題の複雑さが再認識されました。
パーラーOKIのような、身近な生活に溶け込み相談できる場所の必要性をより一層感じた時間でした。
多世代の人の居場所ベーカリーカフェ「cotonowa」
今回、残念ながら新型コロナウィルスの状況によって急遽訪問を中止した、沖縄県北中城村のベーカリーカフェ「cotonowa」さんについても少し紹介します。
cotonowaは元保育士・母子ホームの支援員とケアマネージャーをしていたご夫婦が営むカフェベーカリーです。
自家製酵母のパンや素材にこだわった料理で地域でも評判のお店であるのと同時に、妊娠中~子育て中の親から高齢者まで多世代の人の居場所にもなっています。
様々な人が集う居場所となるような場をつくろうと、クラウドファンディングを元に2019年に開店したお店です。
今回私たちの視察は叶いませんでしたが、cotonowaさんのオードブルとパン、カレーをテイクアウトで注文し、宿でいただきました。
そのおいしくて美しい!料理を味わいながら、
ここでも、パンと料理を目当てに、そこで顔見知りになったお店の人やお客さん同士で話をしたり、声を掛け合ったり、困りごとを相談しあったり、「支援窓口」と構えた場所であれば生まれにくい出逢いが自然に育まれているはずだと思いました。
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* * *
そして、もう一皿。ケータリングで素敵なお料理をいただいたのがヤソウカフェYamachaさんです。
沖縄市内の古民家で営まれ沖縄野草や自家製発酵調味料をつかった料理が特徴的なヤソウカフェYamachaは、
助産師さんと一緒に産後ママのゆんたく(お話)会を開催したり、産後家庭向けのご飯のケータリングを提供したりと、赤ちゃんや小さいお子さんがいる家庭も安心して利用したり頼ったりできるような地域の居場所になっています。
実際に代表の不破も沖縄での産後に利用したことでその存在をよく知っていました。
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見た目にも嬉しくなり、食べてもおいしく体に優しい料理と、行くとふっと心を緩ませて話や相談ができる空間があることを、訪問は叶わずとも今回はお料理を通して少し触れさせていただくことができました。
現地で活動している人のところに出向き、もっと話を聞きたい。
視察や勉強会を経て、私たちダイバーシティ工房も来年度以降の新しい事業や組織づくりの話し合いを行いました。
頭を悩ませる課題がありつつも、わくわくする未来を思い描く、新しい空気が流れていたように感じます。
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たくさん語らう中で、オンライン会議ではできなかった、悩みや心に引っかかっていた本音、嬉しかった現場でのエピソードなどをスタッフ間でシェアできたのは、とても有意義な時間でした。
参加したあるマネージャーからの感想には、大きくうなずきました。
「組織が大きくなり、他事業を担当しているスタッフとゆっくり話をすることが少なくなった。さらにコロナもあり外部の人達とも話す機会が減って、必要なことだけを話す息苦しい状況になっていたことに気がついた。現地で活動している人のところに出向き、もっと話を聞きたい。」
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一筋縄ではいかない現場での課題や支援の難しさに対峙する日常の中でも、ときには組織の外で(そして中でも)人と直接話をして、いつもとは違う景色を見ることで、視線が少し先に伸びて、実現したいことや理想が見えてきます。
その気づきや感情が、日々の活動への原動力になるのかもしれません。
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次回の出張記は、北海道視察レポートです!
引き続き学びを共有させていただきたいと思います。お楽しみに。
「全国出張プロジェクト」は認定特定非営利活動法人育て上げネットとREADYFOR(株)による休眠預金活用事業の支援を受けています。
ダイバーシティ工房は「制度の狭間で孤立しやすい人たち」が、困った時にいつでも相談できる地域づくりを目指し活動するNPO法人です。
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