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組織設計の型を正しく選ぶ
組織に関する問題
経営者が直面する課題は多岐に渡りますが、特に組織が成長するにつれて、事業内容そのものよりも組織運営の難しさに頭を悩ませることが増えてきます。会社が成長して新たな価値観を持つ人材が加わることで、創業時には気にならなかった問題があちこちで出てくるのです。経営層と現場の間に生じた価値観のズレはときに大きな溝となり、それが社内の不協和音となって従業員のモチベーションの低下や退職者の増加につながることも少なくありません。そのため、経営者が事業を持続的に成功させるためには、このような組織の課題へ正しく対応し、社内の調和を維持していくことが不可欠なのです。
このような状況の中で、自社に合った人材をうまく集め、成長を遂げている企業にはある共通点が見受けられます。それは「組織の型がはっきりしている」という点です。組織の型を明確にすることで、必要とする人材の特徴が鮮明になり、採用時のミスマッチを減らすことができるからです。
この記事では、「組織の型」とは具体的に何を指すのか、そしてそれに応じた組織や人事の設計方法について解説していきます。
DITYでは、経営層や現場のキーパーソンが自らの手で「組織の型」を見極め、それに合った組織戦略を策定するためのワークショップを提供しています。ご興味のある方は、是非、お問い合わせください。
「組織の型」とは:3つの分類
組織の型とは、事業戦略と組織・人材戦略を整合させた3種類の型のことです。これらの型はそれぞれ、人材マネジメントの考え方や具体的な運用方法が大きく異なり、それによって社員が会社に期待することも大きく変わってきます。
それでは、「頭」型、「体」型、「心」型と名付けられたこれら3つの組織戦略の特徴と、それぞれのアプローチについて詳しく見ていきましょう。
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まず「頭」型においては、高い目標を掲げ、そこに共感する優秀な人材を集めることで事業を推進します。このタイプでは、新卒入社の優秀な社員が一定期間の修行や育成を経て成長し、いずれ退職していくことを想定する「卒業モデル」をとっています。
次に「体」型では、勝ちパターンを明確にし、事業を徹底的に磨き上げることで収益を最大化します。このタイプでは、現場系と経営系のキャリアパスが完全に分かれていることが特徴であり、「実力主義」や「実績主義」を基本としています。
最後に「心」型では、共有された将来ビジョンに向かって、社員が一丸となって取り組むことを重視します。このタイプでは、企業理念に共感し、協力的に働ける人材を選び、「快適な職場環境」を整えることに注力しています。
もちろん、企業の組織設計はとても複雑ですので、その全てを単純に3つに分類出来るわけではありませんが、それでも、優秀な人材を数多く集めているような企業、すなわち人材獲得面でのブランド企業を考えると、その多くは、大きな方向性としてはどれか1つの型に近いことが多いのです。
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型に合わせた組織設計のステップ
組織の型が決定すると、それに適した組織設計や運営の方針が明確になります。組織を設計する際の具体的な4つのステップは以下の通りです。
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まず、企業理念を出発点として、戦略や組織能力(強み)を作ります。そしてそれと調和した組織や仕組みを定め、最後にそこにフィットする人材の要件や社風のイメージを明確にします。このようなステップに沿って自社が目指す組織の型に適した要素を言語化し、それによって一貫性のある枠組みを構築することが可能になるわけです。
3タイプの企業の例
それでは、実際の企業を例に挙げて、それぞれのタイプの特徴を見ていきましょう。
「頭」型の例:リクルート
「頭」型の企業理念は、リクルートの「まだ、ここにない、出会い」のように、高い志を象徴する抽象的な表現になっている事が特徴です。組織や仕組みの面では、厳選された採用と徹底した社内教育が行われ、成長後に退職する人も多い「卒業モデル」になっています。このため、人材や社風の特徴として、会社に「経験と実績」や「ネットワーク」を求める社員が大半であり、その多くが自社のことを「特別な会社」だと感じています。
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「体」型の例:ファーストリテイリング
「体」型の企業理念の中では、「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」のように、「勝負するカテゴリ」や「戦い方、勝ち方」が明示されています。組織面では現場と経営が完全に分断され、「実力主義・実績主義」が徹底された仕組みになっています。人材や社風の面では、社員は「正当な評価」と「実績に応じた収入」を会社に求め、自社を「No.1で凄い」と考えている事が特徴です。
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「心」型の例:クックパッド
「心」型の特徴は、「毎日の料理を楽しみにする」のように、企業理念として「共有したい理想像」を大切にしていることです。組織や仕組みの面でも「企業理念への共感」を最重視しており、それに合った「居心地の良さ」を会社に求める社員が多く、みんなが自社を「大好き」と感じています。
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以上の例からも、組織の型によって全く異なる組織設計が行われていることが分かります。自社に最適な型を見極め、それに沿った事業戦略の策定と組織の設計を行うことで、求めるタイプの人材を集め、事業の成功につなげることができるでしょう。
組織の型を決めることの意味
組織の型を選択することは、重要な経営上の決断です。3つの組織の型の中から1つを選ぶということは、同時に残りの2つを選ばないという意思決定を伴います。この選択により、必然的に弱点や苦手な分野、諦めなければならないことが生じるでしょう。しかし、組織の型を明確に定めることで、事業戦略と組織戦略の整合性を高め、より鋭く効果的なアクションを打ち出すことが可能になります。
従って、組織の型を決めるプロセスは、組織の強みを最大限に活かすことであり、弱点を明確に認識することでもあり、より効果的な経営戦略を展開するための基盤を築くことに繋がるのです。
まとめ:組織の型を正しく選び、最適な設計を進めよう
組織や人事を設計する際には、まず3つの「組織の型」から1つを選択し、それに適した組織設計や運営方法を採用することが肝要です。それによって、今後取り組むべき事項とそうでない事項がはっきりし、組織全体としての方向性が定まります。
皆さんの企業では、組織の型は既に明確ですか? また、その型に合った組織戦略が築かれていますか? もしまだ明確でないと感じているのであれば、この機会に社内で議論し、考えてみるのはいかがでしょうか。
DITYでは、経営層や現場のキーパーソンが自らの手で「組織の型」を見極め、それに合った組織戦略を策定するためのワークショップを提供しています。ご興味のある方は、是非、お問い合わせください。
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頭・体・心、どの型の組織設計を目指すか?
自分たちが目指すべき組織の型について意識合わせを行い、今後、取り組むべきことを見極めます。"
自分たちが目指すべき組織の型について意識合わせを行い、今後、取り組むべきことを見極めます。