おばあちゃんの家、詩仙洞

かつて西11丁目に、詩仙洞といううどん屋があった。


ガラガラとやや大きい音が鳴る摺りガラスの引き戸を開けると、土間。
今どき珍しい。
白髪というかややブロンド寄りの、真っ白な髪のお婆さんがいる。
この店の主だ。
今日も常連さん達と一緒に、掘り炬燵でみかんを食べていたようだ。

私の姿を認めると
「待ってな、今作るから」
そう言って調理場に引っ込んでいく。

20分ほど待つと、南部鉄器と思われる鋳物の鍋で、あっつあつの煮込みうどんが出てきた。
「玉子はいくら使ってもいいからね」
カゴに、ブラウンの色を帯びた生卵が山盛り積んである。
常識の範囲内で何個割り入れてもいい、という、玉子不足の今では信じられない大盤振る舞い。


ちなみにお察しの通り、この店にはメニューというものが無い。
煮込みうどん、そのただ一つだけで勝負しているのだ。
確かうどんは800円、大盛りが1000円だったか。
なんか値段がふた通りあった気がするが、何だったか忘れてしまった。

「母さん、ごちそうさま」
先に来ていた常連客が、小さい賽銭箱みたいな箱に1000円を入れ200円を取って行った。
マジでこれが支払い方法。
自己申告制なので、食い逃げがあっても見破れないんじゃないだろうか?
…と思うが、このような店で何某かの蛮行を働けるような輩は、自然といなくなるのだろう。
というか最初から寄りつかないのだろうな。


なんか食べログ文学みたいになっちゃったなハッハー。
詩仙洞がわかる方、もしこのブログを見つけましたら、なんらかの形でアクションください。
母さんがいつ店を閉めたのかとか、知らないことがありますし、思い出に浸りたいです。

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Leonhardt
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