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ロックはドキュメントだ!

おいらが学生やった頃、お気に入りのブラインドガーディアンというドイツのメタルバンドが来日公演をしに日本にやってきたのだ。
A席のチケットを買って大阪公演に行ったんだ。そしたら彼ら、ライブがドヘタなのである。CDで聴くのと大違い。あまりの下手さに呆れた覚えがある。
そして後にライブアルバム「トーキョーテイルズ」を出した。これを聴いてみたんやが明らかに音をいじっている。こんないい音じゃなかった。もっと下手だし音も悪いし、でも意図的に音をいじって歓声も取り入れてライブ盤として仕上げている。この作品づくりは当時BURRN!誌では「リスナーとファンの期待に答えるライブアルバム」とレビューされていた。その言葉の意味は判る。確かにこれはファン向けアイテムだ。商品としては立派なパッケージだろう。しかしこれで良いのだろうか?こんな音をいじくり回してライブ盤と言ってのけるその商売もそうだし、B誌の編集長の酒井康氏も著書の中で言っていたが「ロックとは想定外の出来事が起こる。そのハプニングも含めてロックなのだ、決まりきった予定調和はロックじゃない」と。
引き合いに出していたのがディープ・パープルの1973年の東京武道館での公演での出来事で、アンコールに答えなかったバンドに対して観客が立腹して暴動を起こし会場の椅子や備品を集団で破壊して回ったのだ。この事件により後のライブは全てキャンセル。悪夢の来日公演としてロック史にその名を残したんやが酒井康氏は「これこそがロック、ドキュメントだ」と言っている。ロックとはそういうとんでもない事が起こる事こそが醍醐味だという。その気持ちは判る。だからブラインドガーデイアンのライブのヘタクソさもそれもメタルなのだ。色々と期待を裏切られたが予定調和ではない生の醍醐味がそこにあるのだろう。その生の姿をリマスターしていじったのはやはりロックじゃないしメタルじゃない。
逆にライブがめちゃくちゃ良かったバンドもある。高校1年の時に観に行ったメガデスのライブが物凄く良かった。CD音源とは違うライブアレンジを施して聴き応えのある音を演奏していた。アンコールの時に演奏された「アナーキー・イン・ザ・UK」も最高に盛り上がったし、でも本音を言うと一番盛り上がったのは会場内でライブ開始前に掛かっていた謎の曲だったんだよな。この「メガデスのライブで掛かっていた謎の曲は誰のなんて曲ですか?」って質問がB誌に多数寄せられ、あの曲はミニストリーの「バーニング・インサイド」って曲だと回答が寄せられた。メガデスのリーダーであるディブ・ムスティンがまだミニストリーみたいなインダストリアル・ロックが黎明期の頃からそこらへんのバンドに目を付けててデモで掛けてみたらしい。やはり音楽のプロは耳が肥えてるんやなと思った。おいらは輸入レコード屋を片っ端から調べまくってやっとミニストリーのアルバムを手に入れた。以後この手のデジタルロックが大好きになった。こういう偶然があったりするのもやはりロックという物だろう。wikipediaにもミニストリーの項目で「メガデスがきっかけ」と書かれている。
そのブラインドガーデイアンのライブアルバムは2007年にデジタルリマスターを施してリマスターされているという。ライブアルバムのリマスター?それは変だ。そこまで音を弄るか?と思った。なんでもかんでもリマスターすやいいってもんやない。むしろ音の悪さこそが臨場感だろう。そういうのを楽しむ感性が今は失われているのか?と思わざるを得ない。

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