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私が認知症の義母にできること
日曜日のお昼のこと。
「義母さん、冷ややっこ出そうか?」
「わしゃあ、ご飯とふりかけ食べるからええ」
我が家は、朝食と昼食は、銘々が自分で用意して食べることになっている。
私が用意するのは、夕食だけ。
有難いことに、日曜以外は義母はデイサービスに通ってくれている。
デイサービスに通う日は、朝食に食パンを食べたり、前日のおかずの残りとご飯を食べて、お昼はデイサービスでお昼をよばれて帰ってくる。
となると、気になるのは日曜日のお昼だ。
一向に食べようとしないこともあるし、何を食べていいやら分からないのかソワソワしていることもあるし、昼食以外のものでお腹をいっぱいにすることもある。
自分で用意して食べるにしても、おかずらしいおかずはないから、私が用意することもあるが、最近の日曜は、義姉や義兄嫁が、お昼を食べに連れ出してくれていた。
その日はたまたま雨と日曜が重なり、私も仕事がお休みで、義母の昼食が気になった。
「あ、そう、ご飯だけじゃ栄養不足やと思って、言うてんで。いらんねんやったらいいや。」
「用意してくれたら食べる」
「ええわ。ご飯とその辺のもので適当に食べて」
義母の返事を受けて、言ってしまったのは大人げなかった。
よく考えると、その辺のものを適当に食べてきた生活習慣が根付いている義母が、毎日栄養を考えて「冷ややっこ」を習慣にしている私の考えなど分かるはずもないのだ。
同居をしてきて30年近くたって、今更義母の生活習慣を変えることができるはずもなく、義母のことをそう思いやったこともない鬼嫁が慣れないことをするものではない。
余計なおせっかいだったようだ。
お腹がすけば、その辺のお菓子を食べているようだし、日曜のお昼一食分くらい栄養をどうこう考えなくてもいいよね。
これからは、今まで通り、自分の好きなものを適当に食べてもらおう。
そう決めた。
義母は、自宅で居るより施設入所を強く希望している。
義父が数か月まえに亡くなってから、特にその気持ちが強まっているようだ。
いま、義母の希望通り施設入所に向けて、段階を踏んでいるが、この度介護度があがって、施設入所の基準である『要介護3』に認定された。
デイサービスで見てもらえる時間も増えて、帰ってくる時間も、私たちが仕事を終える時間と同じになった。
初めての日は、ケアマネさんが訪ねてきて、施設へ電話を入れて下さり、義母に知らされることなく、いきなり決まったものだから、不満そうに帰ってきた。
もう、どれだけヒヤヒヤしたか分からへんわ。
今日は、帰る時間が遅くて、どれくらい心配かけてるかと思って・・・。
義母さん、今日ケアマネさんが施設に直接連絡してくれて、これから遅くまで見てくれるようになったんよ。
いつか施設に入るときのために、遅い時間まで見てもらって、施設に慣れていけるように進めてくれてるらしいよ。
そうか。そうやって話してくれたら、わしも納得する。
次の日に帰ってきたときも、同じことを言っていた。
わしの帰る時間がなんでこうも遅いんや
義母さん、施設入所にむけてケアマネさんが、計画立ててくれているんよ。
施設に居る時間を多く過ごすことで、慣れていけるやん。
そうか、そうやって話してくれたら、よう分かる。
何日おなじことを繰り返しただろうか。
最近は納得したのか言わなくなったが、いいよいいよ。
これ位の事はしますよ。何度となしに同じこと言いますよ。
加えて、義母がいままで希望しなかった「入浴」を、デイサービスに組み込むことになった。
本人が了承したら是非とも参加させてあげてください。
だけど、本人の性格からすると、多分・・・。
と、ケアマネさんに話したものの、数日後に「入浴セット持ってきてください」と連絡があり、それから毎日入浴セットを用意することになった。
初めて入浴をして帰ってきた日には、少し怒って帰ってきた。
わし、あんなところの風呂は入らん。
何言うてるねん。
ヨソのお風呂に入る練習しとかなあかんやん。
夫が返答するも納得しない様子。
次の日には、用意していた入浴セットをカバンの中から抜き出していて、大騒ぎ。
いいよいいよ。
別の入浴セットを用意すればいいんやろ。
それ位何てことないよ。
その日は、急遽、入浴セットをもう一度用意した。
入浴セットは抜き出さないように、当日の朝に入れなきゃね。
毎日々々、入浴セットを用意するなんて、何てことないのだけど、まるで子供たちが保育園に通園していたころに、お昼寝セットだか、お食事セットだか、用意していた頃みたい。
なんだか、懐かしいようなそんな気もする。
「デイサービスを休みたい」と、夫に申し出て叱られている義母。
「義母さん、やるべきことはちゃんとしよう。義母さんが、今までこつこつ畑へ行っていたように、やるべきことをこつこつしよう。デイサービスに行くのが、義母さんの仕事やん。それが人生ちがうか。」
さぁさぁさぁと、靴を差し出すと、ちょうどお迎えに来てくれたデイサービスの車に納得して乗り込む。
いってらっしゃい!
なるべく明るい声をかけ、手を振る。
義母は手を振らないけど、前の助手席に乗っている近所のおっちゃんは、手を振ってくれている。前にもそんなことあったっけ。
上手くアシストできたかな。
今日は、冷やしておいた、運送屋さんがお中元代わりに持ってきてくれた桃を、お昼に食べると極上の甘さだった。
今日の夕食のおかずは、明日の朝食に回してもいいかなと、皮をむいて切った桃もおかずと一緒に並べた。
案の定、おかずは残していたみたいだけど、桃は完食してた。
時々考える。
施設に入所するとして、後悔しないように、それまで私は義母に何ができるのだろう。
ケアマネさんによると、今月はタイミングを見て、ショートステイに挑戦する計画らしい。
そう!会話をなるべくすることかな。
そうは思ったものの、以前より増えたというものの、そう多く会話をすることはない。
これが精一杯だ。
嫁にできることなんて、そう何もない。
だけど、できることをしよう。その日まで。