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二人組 × 建物[空想惑星探査記7日目]
私の名前は、イマミ・テルージャン。
宇宙冒険家だ。
現在、未知の惑星にて、絶賛遭難中。
だが、幸い水も食糧も十分に残っているため、せっかくなので、この惑星を気ままに散歩してみることにした。
これは、私が未知の星を気の向くままに冒険した記録である。
7日目
この星には、「建物」に該当するものがほとんど存在していないようだ。
もともと建物が建っていたらしい廃墟のような場所は見かけるのだが、瓦礫が落ちているばかりだ。
そして今日、初めて明確に建物と呼べそうな場所を発見した。
石造りの塔で、周りに階段が螺旋状に設置されている。
一見すると、何の変哲もない塔だが、どうやら扉が無い。
つまり、中へ入ることが出来ないのだ。
建物というのは。最低限、人が入れないと意味が無いはず。
となると……塔というより、像と表現するほうが正しいのだろうか?
そして、さらに奇妙なのが、この塔が二つ並んで建っている、ということだ。
高さも見た目もまったく同じ塔が、まるで双子のように並んでいる。
塔の外周をぐるりと周ってみたが、やはり、そっくりだ。
コピー&ペーストをしたかのように、あまりにも似すぎている。
いや……違う。
周りの階段の段数が、一段だけ違っている。
まるで、そこだけ意図的に——意識的に「違いを作っている」かのように。
私の星の「間違い探し」という遊びを、思い出した。
その後、夜にもう一度塔の場所を訪れたのだが……残念ながら、塔はすっかりさっぱり消えてしまっていた。
まるで、最初から何も無かったかのように。
結局、あの二つの塔は何だったのだろうか……入口の無い、意図的に「間違い」が設けられた、そっくりな塔。
それが、数時間で急に消えるなんて……建物自体が動き出そうとでもしない限り、あり得ないはずだ。
まさか、あれも、この惑星の生き物だったのだろうか。
ならば、この惑星の建物は、まだまだ観察してみる甲斐がありそうだ。
私はあの二つの塔を『双子塔』と名付け、今日は眠ることにした。