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非対称 × 森[空想惑星探査記10日目]
私の名前は、イマミ・テルージャン。
宇宙冒険家だ。
現在、未知の惑星にて、絶賛遭難中。
だが、幸い水も食糧も十分に残っているため、せっかくなので、この惑星を気ままに散歩してみることにした。
これは、私が未知の星を気の向くままに冒険した記録である。
10日目
生き物にとって、効率良くエネルギーを摂取・吸収することは、生き残る上で永遠の課題だと言える。
だからこそ、エネルギー効率の悪い大型生物は、進化の過程で小さくなっていったのだ——と、モノの本で読んだ気がする。
そして、この惑星でも、生き物におけるエネルギー問題は変わらないらしい。
というのも、宇宙船から少し南に行ったところに森があるのだが、この木々が、実に奇妙な形をしているのだ。
まず、朝に森を見た際には、木を正面から見たときの右側にだけ、枝と葉がついていた。
非対称な木々。
私の星の木々は、大体のものが、正面から見たときに対称となっているのだが……この惑星の木々の一部は、不気味なほどに非対称なのだ。
そして、一日中観察してみると、さらに面白いことが分かった。
朝には右側にだけ生えていた枝と葉が、夕方には、左側だけに生えていたのだ。
そして、夜になると、枝と葉は完全に無くなった。
……もちろん、私が伐採したわけではない。
この木々は、不要な枝葉を自ら切り落とし、必要な場所に瞬時に枝葉を生やすことができる、ということだ。
これは、おそらく日の当たる向きが関係しているのだろう。
午前と午後とでは、日光が当たる方向が異なる。
その方向に応じて、自在に枝葉を切り落としたり、生やしたりしている、ということだ。
私の星の常識では考えられないことだが……これが、この惑星の生命力なのかもしれない。
一体、どんな進化を遂げたら、こんなすさまじい木々が生まれるのだろうか……。
引き続き、植物については注意深く観察することにしよう。
私は、あの木々を『片寄木(カタヨギ)』と名付け、本日は眠ることにした。