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賃上げと節約。

帝国データバンクが9月29日までにまとめた、国内の主要な食品や飲料メーカー195社が4月以降に値上げした食品約2万2,000品目の値上げデータと、総務省「家計調査」における二人以上世帯の消費支出データを基に、生鮮食品を除く食品値上げによる家計支出額の影響について試算した結果、2023年度上半期における1世帯あたり家計への食費負担額は、節約など値上げへの対策をしない場合、前年の2022年度月平均から1カ月当たり最大で1割増の4,058円、年間で約4万8,000 円増加する試算でした。
ですが、実際の支出データでは、2023年7月までの平均で月373円の増加にとどまっていました。本来見込まれた増加額に比べ、3,685円分の食費支出が家計で「節約」により圧縮された可能性があるそうです。
〔出典:特別企画「食品主要195社」価格改定動向調査―23年度家計負担額推計 帝国データバンク〕

2023年11月28日に厚生労働省から公表された、「令和5年 賃金引上げ等の実態に関する調査の概況」によれば、1人平均賃金の改定額は予定を含めて9,437円で、比較可能な1999年以降、過去最高を記録していました。にもかかわらず、家計の反応が残した「3,685円の節約」という結果は、「手元に13,122円を残した」計算になります。もちろん、食費の他にガソリン代や電気料金等も値上げされているので、その値上げに対応するため手元に残っているわけではないですが、如何に「安心・安定を実現する賃上げ水準が難しいことなのか」が良くわかるデータだと思います。

皆さんは、2014年に缶コーヒーのCMで話題になった「世界は誰かの仕事で出来ている」というキャッチコピーを覚えていますか? 実際、皆さんの消費支出は、間違いなく誰かの賃金となり、誰かの消費支出は、間違いなく皆さんの賃金となり、社会全体の経済を支えています。将来の不安に備えることももちろん重要ですが、こういった節約行動を数値的に観測していると、「デフレマインドからの脱却には、私たちの考え方を変えることも大切なのかも?」と感じなくもありません。


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