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忘れられない京都の思い出
1月8日は成人式。新成人の女子達が纏う華やかな振袖にはウットリ。振袖というと、華やかな京友禅や西陣織が思い浮かぶが、私には、忘れられない思い出が・・・・
あれは30年近く前のこと(1995年)
小学校時代からの友人、由香ちゃんと京都に旅した時のことだ。
2人とも京都には詳しくないので、ガイドブック片手の珍道中。清水寺や祇園の八坂神社、嵯峨野など色々観光名所を周ったが、2つだけハッキリ覚えている思い出がある。1つは、恋愛成就で有名な鈴虫寺に参拝したこと。あともう1つが、京友禅工房を見学したことだ。
私達は、ガイドブックと睨めっこしながら、次の観光地まで急いでいた。
ふと京友禅の看板と、美しい暖簾が目に留まった。すると気のよさそうなおじさんが出てきて、工房を見学していきませんか?と声をかけてくれた。そこは、オープンスタイルのギャラリーのようになっていて、入り口のあたりに、沢山の観光客からお送られてきたであろうお礼状や、一緒に撮った写真などが飾れていた。入り口の奥に入ると京友禅の豪華絢爛の着物や京友禅の生地を入れた大小の額縁がずらっと並んでおり、私達はその美しさに息をのんだ。おじさんは、京友禅の歴史や加賀友禅との違いや制作工程など、実に親切に詳しく丁寧に教えてくれた。どうやら工房は1人で切り盛りしているようであった。
最後におじさんは、お土産に京友禅の額縁を送ってくれるという。値段は、気持ちばかりで良いとのことだったので、財布を見たら千円札が3枚とあとは壱万円札だけ。いくらお支払いするか一瞬迷ったが、これだけ時間をとって丁寧に説明してくれて3、000円では申し訳ない、ということで、私達は10,000円ずつお支払いした。
そして私達も、他の観光客と同様に満面の笑顔で他の観光客と同様におじさんと記念写真を撮った。
「きっと忘れられない思い出になるよ」と彼は言った。
あの頃はスマートフォンもなかったのでデジカメで一緒に撮った写真をお礼状とともに送った。
しかし、待てど暮らせど、その楽しみにしていた「京友禅の額縁」は送られてこない。3ヶ月くらいして、痺れを切らした私達は、工房に電話をしてみた。
「この電話は現在、使われておりません」
「・・・・・・⁉️」
すぐに事態を把握できた。
要するに 詐欺の手口にまんまとひっかかったのだ。
もちろん、前払いしたお金は返ってこない。
しばらくして、同じような手口にで騙された人達が続出したらしく、ニュースで流れたのだった。
私達が送った写真とお礼状も、きっとおじさんの工房に飾られていて、それをみた観光客達がまた安心して同じ詐欺にあっていたのだと思うと、苦笑いするしかなかった。おじさん、私達の写真、お金と一緒に返して~!と言っても願いは届かない。
今となっては笑い話で、由香ちゃんとは、今でも酒の肴に盛り上がる。
「あの人、感じが良い人だったよね~あの詐欺師は今どうしているだろうねえ。高いお土産代になっちゃったねえ・・・。せめて2人で10,000円にしておけばよかったね。20,000円もあれば沢山お土産が買えたのにねえ・・・・・・」
「きっと忘れられない思い出になるよ」彼が言ったとおりになったというわけだ。
詐欺師は感じが良いと決まっている。
人を信じて疑わない性格だと、時にこんなことが起きるのだと、良い教訓になった。あの時に学んだことを考えると、私達が払った20,000円は、痛手でもなく高いお土産代でもなく、もしかして、すごく安い授業料だったのではないか・・・。
そのおかげで、私は一度も詐欺に会わないで生きている。
でもね、皆さん、詐欺には気をつけましょうね。