花粉症患者の怒りの矛先
今、花粉症に苦しんでいる諸君。
いまこそ痒い目で真実を見る時である。
花粉症を発症すると、みな花粉へ、杉の木へ怒りの矛先を向ける。
その切先は真っ直ぐであり、今にも叩き切りそうな迫力である。
しかし私はすっと切先に手を添え、ノンと言ってやる。
痒いのは目である。口内である。耳の中の人もいる。
そう、我らの身体が引き起こしているのだ。
馬鹿みたいに反応して、痒みを引き起こすこの身体。ちょっとの傷で、ヒステリックな叫び声を上げるセンチメンタルな母親のよう。
誰かは言う。僕らは被害者だ。刃物で刺されれば、その原因はあの手のナイフと刺した輩だろ?
私は犯人探しをしたいわけではない。いま、こうして、痒みを、引き起こしている、この元凶で、そして誰にも責められていない、被害者面する我が身体へ、一喝してやりたいのだ。
やれ政府は早く杉の木を切れ。やれ何故杉の木を植えた。やれ特効薬を開発しろ。
その前にこの身体は馬鹿かと問うてみるのはどうか。まず我らの肉体に灸を据えてから、その後のマクロな提案をしてみようじゃないか。
異常が発生してるのは、十二分に分かった。花粉が飛来した最初の日に分かった。にも関わらず今もまだ目が痒い。
痒みや痛みといった、異常を知らせる警報は、もう役割を果たした。鳴り続けるな、早く切れてくれ。ONしか出来ない機能は使いづらいったらありゃしない。
私は、逃がさない。花粉シーズンが終え、皆の記憶から逃れる前に、ここに記す。
おい身体、いい加減にしてくれ。
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