【注目新刊】2023年1月第3週
月の第3週目は、新書の発売日が集中しています。
100年以上前の日本:大正時代
『日露戦争の時代 日本文化の転換点』鈴木貞美[著] 平凡社新書 ISBN978-4-582-86021-4
日露戦争前から大正時代にかけて、文学や思想が変化を遂げる姿を描く。
大正時代が日本文化のひとつの型を形成したという情報は聞いたことがあります。ただ、私のなかでは、独立の命運をかけた日露戦争とそれ以降の迷走で時代区分をするイメージがありました。
日露戦争前からの助走こみで大正時代を見ることが少し新鮮な印象を持ちました。(私は日本思想史や文化史に疎いので、実はオーソドックスな見方かもしれませんが)
『「鬱屈」の時代をよむ』今野真二[著] 集英社新書 ISBN978-4-08-721247-1
およそ100年前、スペイン風邪、関東大震災、第一次世界大戦の時代。現代とどこか重なって見える世相に人々が抱いた内面のモヤモヤの表現。それらの表現をさまざまな文字資料からたどる。
現代日本の文化
『不倫 実証分析が示す全貌』五十嵐彰[著] 中公新書 ISBN978-4-12-102734-4
「不倫は文化だ」(さすがにリアルタイムでは元ネタを知りませんが)
知的な興味というより、完全に野次馬的な興味です。
『ネット右翼になった父』鈴木大介[著] 講談社現代新書 ISBN978-4-06-530889-9
ネトウヨな言動を取り始めた老いた父について、ルポライターである長男が書いた本。「家族再生の道程」と帯にあり、ノンフィクション物語の域をどれくらい出るのか、話の重点をどこに置くかは読んでみないとわかりません。でも気にはなるので、 書店で一度手にとって、どんなふうな内容か覗いてみようと思っています。
社会の将来を考える
『ゲームが教える世界の論点』藤田直哉[著] 集英社新書 ISBN978-4-08-721249-5
多くの文化批評を発表している藤田直哉さん(1983-)の新作。ゲームにあらわれた現代社会の問題や解決策、つまりはゲームという形になった我々の想像力が、今回の批評の対象。
目次を見ると、取り上げているゲームのほとんどを私が知らないのはご愛嬌…
『教育大国シンガポール 日本は何を学べるか』中野円佳[著] 光文社新書 ISBN978-4-334-04645-3
各人の可能性、より良い人生、そういった教育にかかわる理念はもちろん大切です。その一方で、あくまで教育は社会システムの一部です。
社会、とりわけ経済が人々がどうあることを求めているか。どんな人を教育が社会の部品として提供するか。
社会に合わせて変わっていく教育とは、今の社会がどうなっているかについての二、三十年スパンで見た認識の鏡とも言えます。教育大国と呼ばれる国は現代の社会をどう認識しているのでしょうか。
『新興国は世界を変えるか 29カ国の経済・民主化・軍事行動』恒川惠市[著] 中公新書 ISBN978-4-12-102734-4
時事的な本は積ん読しているうちに使い物にならなくなります。そのため私は避けがちです。ですが、今回は著者贔屓で購入予定です。
最初に私が政治学を面白いと思い、20世紀を総覧できる舞台としてのラテンアメリカ(重工業の発展による富裕国からの転落、冷戦下の陣取りゲーム、新自由主義経済政策の実験場)の意義を教えてくれた機縁となった著者です。
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