農大60日目 2024-01-15 有機・特別栽培

鳥取県は有機栽培の認定機関である。県が認定機関なのは他に数県のみ。

有機栽培の歴史

1960年 沈黙の春がベストセラーに

アメリカで「沈黙の春」(Silent Spring)がベストセラーに

環境破壊についての本で、特にDDT(殺虫剤)について。

DDTは安くて、即効性があり、効果期間も長い薬品で、アメリカでは飛行機による空中散布など、頻繁に使われた。しかしながら、DDTは自然界に残留し続け、DDTが付着した植物を動物が食べることで生態系にも多大な悪影響を与えた。

1962年 ホリドールの使用(日本)

日本でもホリドールという有機リン系の殺虫剤が使用されていた。有機リン系は人体に非常に有害である。

1970年 「複合汚染」朝日新聞連載

朝日新聞が「複合汚染」というの連載小説を掲載し話題になる。環境問題に対する意識が国内で高まった。琵琶湖の汚染や公害などが認知される。その他、ゴジラなどフィクションの中にも環境問題はよく取り扱われるようになる。

→食品に関しても、有機農作物・無農薬栽培に取り組む農家が増え始める。

しかしこの頃は農薬を使用していても有機栽培と表示されていたり、有機栽培に関するルールが定まっていなかった

→ルール整備へ

1990年

「環境に易しい農業」

1999年

エコファーマーの認定

農薬を従来の3割減で栽培

2001年

特別栽培

農薬を5〜10割減で栽培

2004年

有機栽培

農薬を一切使わず、栽培

堆肥について

有機栽培では化学肥料を極力使わないので、かわりに堆肥を使う。

堆肥の効果

  • 保水性、水はけの向上

  • 養分の供給

  • 腐植増加に寄る養分保持力の工場

  • 微生物の多様化による病害虫の抑制

  • 鑑賞能力増加による土壌の安定化

撒く肥料の量

通例は2 t/10a

10aに均一に撒くと暑さ4mm程度。

一気に効果を出そうとするとその4倍の量を撒く。

堆肥の種類

  • 植物性堆肥 ー バーク堆肥、稲わら、腐植土など

  • 家畜糞堆肥 ー 牛糞、豚糞、鶏糞、発酵鶏糞、乾燥鶏糞など

堆肥の3つの成分

  • 速効性成分 ー 化学肥料と同じ成分。無機態N(アンモニア)

  • ゆっくり効く成分 ー 有機肥料と同じ成分。分解されやすい有機体N

  • すごくゆっくり効く成分 ー 土壌Nに似た肥効。数年かけて有効化する難分解性N

窒素量が減る堆肥

バーク堆肥などは単一で使用すると土壌の窒素量が減少する。

各堆肥には炭素量と窒素量の比率である、C/N比があり、バーク堆肥はCが多くNが少ない。

土壌の微生物はC/N比5〜10程度で一定の割合で化学反応を起こす。堆肥中のCの量が足りない時、微生物は元の土壌からNを取り込み土壌の窒素量を減らしてしまう。

エコファーマーになるには

  1. 土作り

  2. 減化学肥料

  3. 減農薬

以上の3項目について、決められた技術メニューの中から1つ以上を実践しなければならない。

(例)稲作の場合

  1. 稲わらを全量鋤き込む(コンバインを使えば稲わら自動的に圃場に全量撒かれるのでクリア)

  2. 肥効調整型肥料で施肥窒素量3割減(一発肥えを使えばクリア)

  3. 温湯による種子消毒で農薬3成分減(農協の苗はこれを満たしているのでクリア)

鳥取県中部では、エコファーマーを促進していたため、非常に簡単にクリアできる

特別栽培農産物の認証を得るには

  1. 化学肥料を使用しないか窒素成分量5割以下

  2. 化学合成農薬を使用しないか回数5割以下

2の使用回数の基準は地域ごとの慣行基準に基づく。鳥取県の場合は「鳥取県の特別栽培農産物に係る慣行基準」というとりねっとの資料を参照する。

https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/1013925/R1-1kankoukijun.pdf

有機農産物の認証を得るには

  • 種まき田植え前2年以上、農薬・化学肥料を使用していない圃場

  • 化学合成農薬等は一切使用不可

  • 登録認定機関の書類審査及び、実地検査に合格

  • 毎年検査があり、適切な栽培記録と管理を行う

有機栽培は雑草との戦い。収量は約2割ほど少なくなる。有機栽培でも使用可能な農薬・肥料があるので、それらをうまく活用する。

有機で活用できる農薬は効き目が100%というものはなく、せいぜい90%。農薬を撒いても残った10%がすぐに増殖するので1週間後には100%に戻っているため、何度も繰り返し使用する必要がある。(化学農薬使用時は病害虫に100%効き目があり、卵にも効くものがあるので、直後は病害虫が0になり1ヶ月以上は使用しなくて良くなる)

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