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医療費の話(4)特別の料金

 大学病院をはじめとする大病院を安易に受診すると「特別の料金」、正式には「選定療養費」を請求されるので、気をつけましょう。
 大学病院や大病院は、本来は重症患者の診療を担うはず。加えて医療従事者の働き方改革もあって、軽症患者には来てもらいたくないというのが本音です。しかし日本では、患者は医療機関を自由に選ぶことができますし、医療機関側はそれを断ることができません。
 一方、欧米諸国の多くは、ホームドクター制を取っています。病気になったら、まずホームドクターを受診します。そして専門的な検査や治療を病院で受けるべきだと判断した場合に限り、病院への紹介状を書いてくれます。それを持って行くと、はじめて病院を受診できるのです。
 ところが日本にはそういう制度がないため、1990年代から2000年代にかけて、軽症の老人が大病院に集中し、老人サロン化する事態に陥ったのです。ついには重症患者の診療を圧迫するまでに至り、大きな社会問題になりました。
 それを解消するために導入されたのが、選定療養費(2016年度)です。紹介状を持たない患者が大病院を受診した場合、初診時に5000円(+消費税)、再診時に2500円(+消費税)を徴収することが義務化されました。この「特別の料金」は保険の対象ではなく、全額が患者負担となります。
 ちなみに「大病院」とは特定機能病院(大学病院、国立がん研究センター、国立循環器病センターなど)と、地域医療支援病院(地域ごとに定められた中核病院)などです。
 また再診時の徴収ですが、これは大病院を受診した患者に対して、軽症だから次回からは地域の診療所や中小病院に行くように言われた(逆紹介)にも関わらず、受診を続けた患者が対象となります。
 2022年10月1日からは、制度がいっそう強化されています。紹介状を持たずに行くと、初診時7000円以上(+消費税)、再診時3000円以上(+消費税)に変更されたのです。対象となる病院の一覧が、次のURLに載っています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001102730.pdf

 選定療養費によって、大病院の老人サロン化は一気に解消されました。その代わりに、待合室が比較的広く、予約診療を行っていない、地域のクリニックがサロン化しています。とくに理学療法(マッサージなど)をやってくれる整形外科が人気です。
 私の家の近所にある、結構大きな整形外科クリニックでは、受付開始が朝8時なのに、6時前から外に患者が並び始めます。しかも真夏でも真冬でも、8時前にはかなり長い行列ができています。用意されたベンチに座れず、立っているひとも大勢います。
 元気で結構なことですが、医療費の無駄遣いという批判も聞こえてきそうです。


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