血液型と病気(2)血液型の正体
このコラムでは、血液型と病気について、だいたい週1回のペースで書いていこうと思っています。今回は2回目です。
血液型を決めているのは、赤血球の表面に結合している糖鎖(とうさ)と呼ばれる物質です。A型糖鎖(A抗原とも呼ばれる)、B型糖鎖(B抗原)、H型糖鎖(H抗原)の3種類があります。
まず基本となるのがH抗原で、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、ガラクトース、フコースの順番で、4個の単糖からできています。これにNアセチルガラクトサミンという単糖が結合すると、A抗原になり、ガラクトースがもう1つ結合すればB抗原となります。
A型のひとの赤血球表面は、A抗原でびっしりと覆われていますし、B型の赤血球は同様にB抗原で覆われています。またO型ではH抗原が使われています。このHはドイツ語の「Hämagglutinin(血球凝集素)」という言葉に由来しています。発見当時はまだ血液型との関連が分かっていなかったのですが、後になってO型を決めている糖鎖と判明した、というわけです。そのため「ABO式血液型」を「ABH式血液型」と呼ぶ研究者もいます。またAB型の赤血球には、A抗原とB抗原が同量だけ結合しています。
血液型を決めているのは糖鎖ですが、糖鎖を決めているのは遺伝子です。血液型遺伝子は、9番染色体上に載っています。我々は染色体を父母から1本ずつもらうため、血液型の遺伝子の組み合わせは次の6種類になります。
AA:両親からA型遺伝子を受け継いだ
AO:片親からA型遺伝子、もう片親からO型遺伝子を受け継いだ
BB:両親からB型遺伝子を受け継いだ
BO:片親からB型遺伝子、もう片親からO型遺伝子を受け継いだ
OO:両親からO型遺伝子を受け継いだ
AB:片親からA型遺伝子、もう片親からB型遺伝子を受け継いだ
遺伝子はタンパク質の設計図です。A型遺伝子からは「N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(A型酵素)」という酵素がつくられます。この酵素が、H抗原に単糖のNアセチルガラクトサミンを結合させる働きを担っているのです。またB型遺伝子からは「ガラクトシルトランスフェラーゼ(B型酵素)」という酵素がつくられます。H抗原にガラクトースを結合させる酵素です。
ところがO型遺伝子というのは存在しないのです。いや、存在はするのですが、フレームシフトと呼ばれる突然変異によって、まったく機能しなくなっています。そのためO型では、そのままH抗原が使われているのです。
まとめると次のような関係になっています。
A型遺伝子 → A型酵素 → H抗原をA抗原に変換
B型遺伝子 → B型酵素 → H抗原をB抗原に変換
O型遺伝子 → 酵素を作れない → H抗原はそのまま
AA型とAO型、BB型とBO型の違いはあるのか、という疑問を持たれたひともいるでしょう。しかしAO型では、1つしかないA型遺伝子が、十分な量のA型酵素を作ってくれるため、少なくとも実用的なレベルでは、AA型との違いは見られません。同様のことがBB型とBO型でも言えます。