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医学コラム(2)手足口病

医学コラムの2回目です。だいたい週1回のペースで書いていこうと思っています。

「手足口病が大流行」「大人も感染リスク」といったニュースが大々的に流れたのが7月上旬。しかし8月に入ると、そんな話はパッタリと途絶えてしまいました。どうなったのでしょうか。
 手足口病(てあしくちびょう)、英語の「hand, foot and mouth disease:HFMD」のまんまです。子供が夏に罹る病気の代表格で、手の平や足の裏、口内、さらには肘、膝、お尻などに小さな赤い発疹が出現します。しかし熱は出ても大抵は37度台。一週間ほどで回復します。
 原因はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスです。違う2種類のウイルスが原因のように見えますが、これらは同じウイルスと言って構いません。コクサッキーウイルスは1940年代にニューヨークで、エンテロウイルスは1962年にカリフォルニアで発見され、その後「エンテロウイルス属」として統一されました。つまり両者は兄弟や従兄弟のように近い間柄なのです。
 今年は手足口病の当たり年でした。図は国立感染症研究所の「IDWR 2024年第30週(7月22日~7月28日)」に掲載されている、手足口病の流行状況を示したグラフです。5類感染症で、全国約3000の小児科で定点観測(毎週、該当する病気の患者が何人受診したかを保健所に報告)されています。
 定点当たり平均5.0人を超えると「警戒レベル」とされています。今年は第25週で警戒レベルに達し、第27週(6月30日~7月6日)に12.0人を超えました。だから間違いなく「大流行」です。
 しかしグラフから明らかなように、2019年の患者推移は、今年とよく似ています。2017年と2015年も、今年ほどではないですが、かなり多かったことが分かります。
 では肝心の大人の患者数は?
 実はこれには答えがありません。手足口病の定点観測は、小児科を対象にしてます。大人は小児科を受診しませんから、どのくらい患者がいるかは分からないのです。
 もちろん子供が手足口病に罹れば、親もウイルスに晒されますから、感染リスクは上がります。しかし多くの親は、自分が子供の頃にこの病気を経験していて、免疫を持っています。そのため大半が無症状か軽症で済んでしまうのです。
 それでもなかには重症化するひともいます。子供よりも高熱が出て、しかも発疹がかなり痛むようです。とくに口内に発疹ができると、唾を飲むのも辛いほど痛いとか。さらに熱が下がって2~3週間後には、手足の爪がポロっと剥がれることがあるそうです。とは言え、しばらくするとまた生えてきますから、心配し過ぎないように。
 流行はすでにピークアウトしたように見えます。だからマスコミはもう騒ぎません。変わってマイコプラズマ肺炎が注目を集めています。先月上旬から赤丸急上昇中で、ひょっとすると過去数年間で最大の流行になるかもしれません。

手足口病の流行状況
国立感染症研究所「IDWR 2024年第30週(7月22日~7月28日)より抜粋


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