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血液型と病気(6)新型コロナと血液型

 A型のひとは、新型コロナの感染・重症化・死亡リスクが高く、O型が低かったことが、多くの研究から分かってきました。
 論文によって数値にバラつきがありますが、感染リスクはO型を1とすると、A型で1.2から1.8倍、B型で1.1から1.5倍といったところです。またAB型はA型と同程度とされています。重症化(酸素吸入や人工呼吸器が必要な状態)や死亡のリスクも、だいたい同じような数字になっています。
 感染リスクも重症化リスクも、ほとんど差はないとする論文も散見されますが、O型のほうがリスクが高いとする論文は見つかりません。ですから数字はともかく、O型は新型コロナに強く、その他の血液型は弱いということは、受け入れてよさそうです。
 ちなみに病名としての新型コロナは英語名で「COVID-19」、新型コロナウイルスは「SARS-CoV-2(SARSコロナウイルス2型)」です。「SARS」とは「重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome)」の頭文字を並べたものです。2002年から03年にかけて、中国を中心に世界中に拡がり、約8000人が感染し、内800人近くが亡くなりました。これもコロナウイルスによるものです、ウイルスは「SARS-CoV-1」と呼ばれています。
 香港は、SARS病棟を作って対応したのですが、その病棟の医療従事者たちも、多くが感染しました。このとき研究者の一人が、感染した医療従事者の血液型を調べたところ、O型が非常に少ないことに気づいたのでした。
 今回のSARS-CoV-2は、SARS-CoV-1とよく似ています。そこで今回は、流行の初期段階から血液型との関係が調べられ、前回と同様、O型が強く、その他の血液型が弱いことが分かってきた、というわけです。
 ではなぜ血液型による違いが生じたのでしょうか。理由はまだよく分かっていませんが、血液中の抗A抗体と抗B抗体が、コロナウイルスの感染をある程度抑える働きがあるのではないか、と言われています。コロナウイルスが人体に感染するためには、気道の粘膜細胞の表面にあるACE2(アンジオテンシン変換酵素2)とウイルス表面のタンパク質が結合する必要があります。ところが抗A・抗B抗体(O型のひとは両方持っている)が、この結合をある程度妨害するらしいのです。とくに抗A抗体(B型のひとが持っている)は、抗B抗体(A型のひとが持っている)よりも妨害する力が強いようです。
 また重症化や死亡に関しては、血液凝固のしやすさが関係しているかもしれません。新型コロナでは、血管中に微小な血栓が無数に生じるため、毛細血管が詰まって臓器不全に陥る患者が多かったのです。一方、A型は血栓ができやすく、O型はできにくいことが知られています。そのことが、重症化の違いに影響したのかもしれません。


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