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血液型と病気(1)血液型の発見

このコラムでは、血液型と病気について、だいたい週1回のペースで書いていこうと思います。

 血液型は1901年に、オーストリアの病理学者だったカール・ラントシュタイナー(Karl Landsteiner)によって発見されました。このひとはウィーンの病理解剖研究所に勤めていたのですが、自分と助手たちの血液を採取し、試験管のなかで混ぜ合わせるという単純な実験を繰り返し行っていました。そして血液には3つのグループがあることに気づき、それらをA型、B型、C型と名付けたのでした。
 これについて「血液の歴史(ダグラス・スター著、山下篤子訳、河出書房新社(1999年))」には、次のように記されています。

一つめのグループ(彼はこれをAと名づけた)の血漿は、2番目の「B型」の血球を凝集させた。同様に、B型の血漿はA型の血球を凝集させた。そしてA型の血漿もB型の血漿も三番めのグループの血球は凝集させなかった。ラントシュタイナーはこの三番めのグループを、最初はC型と名づけたが、のちにOという名称に変更した。・・・それから二年後に、ラントシュタイナーの指示で大がかりな交差試験を行っていた同僚二名が、A,Bのどちらの血漿にも反応する四番めの型を発見した。彼らはこのグループをAB型と名づけた。

 血漿とは、血液の透明な液体成分のことです。

 C型がO型になったいきさつについては、ドイツ語の「ohne」に由来するという説が有力です。「ohne」は「~が無い」という意味で、ラントシュタイナーは「C型には血液型が無い」と考えたらしいのです。血液型に関する何件かの科学史の論文に、そのことが触れられています(たとえば、The ABO blood group system revisited: a review and update; IMMUNOHEMATOLOGY 25(9), 2009など)。

 ラントシュタイナーらが発見した血液型は「ABO式血液型」としてよく知られています。しかし人間には、他にも何通りもの血液型があることが分かっています。有名なところでは「Rh式血液型」があります。これはRh因子と呼ばれる物質を作る遺伝子を持っているかどうかで決まります。あれば「Rh+」、なければ「Rh-」です。ABO式血液型とRh式血液型は独立に遺伝します。同じA型でもRh+のひともいれば、Rhーのひともいるわけです。
 ほかにもDuffy型とかLewis型といった血液型が知られています。細かく見れば、人の血液型は30種類以上の系統があるそうです。
 ただし医学的にABO式血液型がもっとも重要であることは言うまでもありません。このシリーズでは、とくに断らない限り、血液型といえばABO式のことを意味します。


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