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好きなものだからこそ「怖くて」見れない

高校生のころ、どちゃくそにハマった小説がある。
西尾維新の『戯言シリーズ』だ。

自分の世代だと、西尾維新といえば『物語シリーズ』が全盛期だったが、個人的にはしっくりこず。でも、このシリーズにはどっぷりだった。
実は、西尾維新の処女作でもある。厨二バトルミステリ小説(どんなジャンルだ)。

その最新作が、今月発売される。
1巻が2002年、シリーズ本編の最終巻が2005年に発売されたシリーズで、外伝作品はちょこちょこ出ていたが、正当なシリーズ続編は完結以来、初の出版だ。

自分がこの本を読むきっかけになったのは、友人のオススメだった。西尾維新が本当に好きで、当時は刊行されたほぼすべての作品を購入していたくらいのファンボっぷり。その中でも一番好きな『戯言シリーズ』をオススメしてくれた。

そんな彼と久しぶりに会うと、当然この作品の話題になる。
保存用、布教用と3冊予約していてもおかしくはないだろうと思ったけど、彼はまだ1冊も予約していなかった。


大好きなシリーズの最新作が怖くて読めない

西尾維新のことが嫌いになったのかと聞けば、そうではないらしい。昔のほどの信者ではなくなっていたが、しっかりと自分の好きなシリーズは新刊を購入していた。
でも、それも購入しただけで、読んではいなかった。


理由を聞くと、彼は言う。
「怖くて読めねーんだよ…」

どうでも良いシリーズや、適当に購入した作品なら読めるけども、自分の好きだったシリーズや作者の最新作は、怖くて読めないと。


好きな作品のはずなのに、「怖くて」読めない。
この事象に、ピンと来る人と、理解できない人の二極化になると思う。
自分も最初は何言ってんだコイツ…
状態だったが、思い返すと、自分も似たようなことをやっていた。


1ヶ月見に行けなかった『すずめの戸締まり』

同様の気持ちを明確に抱いていたのは、新海誠の最新作、『すずめの戸締まり』に対してだった。

自分は、新海誠が大好きだった。
秒速5センチメートルを中学生の時に視聴し、見事に心に巨大な傷跡を残された。その後、レンタルビデオ屋で、彼の過去作品を全部借りて視聴した。
すごい微妙な作品もあったけども、そこも含めて、大好きだった。

『君の名は』は、公開されてすぐ見に行ったと思う。
『言の葉の庭』でバットエンドを卒業できた新海誠が、さらに超ハッピーエンド、かつキャッチーで王道、明るい作品を描けたるようになっていたことに感動していた。
まさか、超大ヒット作品になるとは思いもしていなかったけど。

あれよあれよという間に超人気監督の仲間入り。すごく嬉しかった。勝手に母親ヅラして、人間的にも成長、社会的にも成長した新海誠を祝福していた。でも、同時にすごく寂しさを覚えた。自分の知っている新海誠ではなくなったなと。

だけど、その次回作の『天気の子』が衝撃的すぎた。『君の名は』みたいな映画で終わるのかと思った。でも、オタクとしての新海誠が、一般人に自分の「スキ」をぶん投げた、最高にロックな作品だった。アニメ映画でトップクラスに気に入ってる作品だ。


そんな彼の最新作、『すずめの戸締まり』が2022年11月に公開された。普通、大好きな監督の作品だったら、すぐに見に行くはずである。

が、自分は1ヶ月見に行けなかった。
「怖くて」見に行けなかったのである。
結局、見終わった後、何時間喋っても許されそうな心優しき先輩と一緒に1ヶ月後くらいにビクビクしながら見に行った。


大きな期待、裏切られたくない気持ち

なんでこんなにビビるのか。
さっさと作品を楽しむことができないのか。

1つは、裏切られたくないという気持ちだろう。
自分の好きなクリエイターが、駄作を生み出すような、ダメなクリエイターになってほしくない。そんな願い、期待が大きい。

自分の好きな天才が、たまたま傑作を出せた凡人でした、となるのが恐怖なのだ。ある意味、自己否定にも直結する。まるで好きだった自分をも否定されるような…自分のアイデンティティが1つ消えるような気がする。


でも、これって、クリエイターからしたら勝手な話だ。
本当に応援してるなら、少なくともさっさと購入して、評価はすべきなのに。
人間とは勝手な生き物だなと思います。


後は、戯言シリーズみたいに、完結した作品の正当続編、っていうのは、世界が荒らされるのではないか、みたいな恐怖感もあると思う。
大好きな作品で、きれいに完結した作品だとなおさら。

幸せな人生を歩んだことになっていた主人公たちが、その後の続編で不幸な状況にあったりしたら最悪だ。美しい終わり方をした作品は、その後に何を追加しても蛇足にしかならなかったりする。『天気の子』の正式続編作品とか絶対蛇足ですもん。

主人公たちの人生、作品として伝えたいことって、絶対伝えきれているはずですからね。名作であればあるほど。


あとは、せこい考えだが、作品に触れなければその作品に対してのワクワク感っていうのも見るまで維持できる。
自分なんかこれが理由で『ぼっち・ざ・ろっく』とか、『ブルーアーカイブ』の最終章とかまだ見ていないです。

潤いのない人生の楽しみとして大事に取っておきたいんですよね。
忙しくて見る時間があまりないってのもあるんですが。


面倒くさい感情

好きだけど怖くて見れない、っていうこの面倒くさい感情に対して思ったことをツラツラと書いてみました。

作品やクリエイターに対しての思い入れが大きすぎるのだろうか。
この感情を面倒くさいなと思う一方で、これだけ思いをこめれる作品に出会えていることに感謝もあり。

何も考えずに作品を楽しめる人を羨ましくもあるが、この面倒くさい感情と向き合いながら生きていこうかなと思いました。

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