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新刊『ユーザーリサーチのすべて』著者による見どころ解説

著書『ユーザーリサーチのすべて』が10月22日に発売されます!UXリサーチ、マーケティングリサーチ、デスクリサーチの方法論を、サイト・アプリ運営の実務に沿って定性・定量ともに学べる、ユーザー調査のマニュアルとなる書籍です。

本のベースとなっているのは、ビジネスメディアの「マナミナ」で2021年5月から連載を続けてきた「現場のユーザーリサーチ全集」です。イメージしたのは万葉集。プロダクト運営の実務に必要な調査手法・分析手法を選んで実践的に解釈する内容を書き溜めてきました。

連載以外にも、直近4年間の講演・記事で積み上げてきた「プロダクト運営のためのリサーチ」を詰め込み、ワイドなB5判型にもかかわらず400ページ超のボリュームに…!この記事では発売に先がけて本の見どころを紹介します(本の「はじめに」とも連動した内容です)。


●本の特徴①企画・募集・実査・分析・報告の全工程を網羅

組織内でリサーチを推進するには、必然的に一人で調査の全工程に対応していくことになります。ところが、リサーチ分野で専門的な知見を持つ同僚・上司や、組織内での過去実績は一般的に少なく、研修の機会もほぼ無いのが実情です。

私が個人でリサーチのメンター依頼を受ける時にも、「基本的な調査業務の実行は自分たちで行うので、リサーチャーの観点から設計や分析をチェックして欲しい(重要プロジェクトに一通り立ち会って欲しい)」という依頼が多いです。

そこで本書では、組織立ち上げから企画・募集・実査・分析・報告まで全工程を扱うようにしました。1〜6章を通じて業務マニュアルのように一つ一つの業務工程を掘り下げているので、トータルのディレクション能力を高められます。

例えば、2章では「調査目的」を1つの項目として紹介しており、続く「調査概要」「課題・仮説リスト」と合わせて「調査企画書」の要点を形成しています。同じ要領で、後続の章では調査レポートや報告会への理解も深められます。

リサーチの成果は計画した以上のものになることは基本的にありません。そのため、分析や報告から逆算して企画を立てることが重要です。初心者の人は質問を書き出すことに集中しがちですが、本書で仕事の全体像をつかみましょう。


●本の特徴②普段の業務や課題から調査の手順を逆引き可能

リサーチの重要概念やプロセスを学習するための情報はかなり出ています。仮説が大事、インサイトが大事、プロトタイピングが大事ーこうした啓発をよく見かけますが、具体的にどのようなリサーチをしたら効果的なのかは不明瞭です。

それゆえに、「インタビューやアンケートの流れはウェブの記事やオンラインセミナーを見たりしてだいたいわかる。でもいざ業務を実行しようとなると作成方法や判断基準のところで手が止まってしまう」という相談をよくもらいます。

そこで本書では、業務や課題からリサーチの手順を逆引きできるようにしました。大半の項目は、組織活動における「よくある課題」と「作り方・使い方」という対応関係でページを構成しており、事典感覚で読み進めることができます。

例えば、リサーチの成果物で求められることが多い「ペルソナ」の項では、作成したものの納得感を得られない、実務で活用されないなどの課題に対して、どのようなデータアイテムを集めて構成すれば理解が進むのかを説明しています。

プロのリサーチャーは調査テーマや分析手法をプロジェクト特性に応じて毎回選び取っています。リサーチの仕事で最も力量の差が出るこの設計や活用の部分を、本書ではごく身近な先輩に教わっている感覚で追体験することができます。


●本の特徴③定性・定量のドキュメントサンプルを多数収録

リサーチの業務は一般的には定性調査・定量調査の手法ごとに触れていくことになります。事業会社だけでなく支援会社でもどちらか一方を受け持つのが自然な分担体制であり、組織の業務分掌や個人の目標管理により規定されています。

しかし専任制や分業制には弊害もあります。同じ調査業務でも、デザインリサーチとマーケティングリサーチ(あるいは定性調査と定量調査)は分断されがちで、組織として最適なナレッジ共有や担当者の能力開発が起きづらくなります。

そこで本書では、インタビューやアンケートで使う調査票や報告書のサンプルを多数収録しました。プロダクト運営のシーンに合わせ、調査票は質問文・選択肢レベルの細かさで、報告書は図表と分析コメントの例示まで掲載しています。

例えば、アイデアを検証する際に用いる「コンセプトテスト」の項では、定量調査と定性調査両方のレポート見本があります。これを見ると、調査での質問方法とデータのまとめ方はもちろん、各手法の使いどころがわかることでしょう。

これによって、読者の担当領域や経験年数、また定性や定量の既成概念にとらわれることなく、アウトプットの完成形イメージを念頭に置いて、調査内容的にも一定の品質を保った状態で新しいプロジェクトにトライすることができます。


●本の特徴④有識者・実践者の方によるコラムを掲載

UXリサーチ、マーケティングリサーチ、ビジネスの枠組みを超える思想を強く体現しているのが、有識者・実践者によるコラムです。各章のテーマに沿って、立場を超えてリサーチを活用する方たちの寄稿を巻末に収録しています。

参加してくださった書き手の役割も様々です。プロダクトマネージャー、デザイナー、リサーチャーなど職種の振り幅も広ければ、事業会社・支援会社、スペシャリスト・マネージャーなど所属や職責も様々な方に依頼しています。

書籍の本編は網羅的な内容ではあるものの、私が強くない領域もあります。具体的には、デザインの理論、UI、成熟度が高い組織での取り組み、BtoB組織での実践、AIの活用などの情報であり、このあたりを補完していただきました。

リサーチは組織の分だけ適した方法論があります。私が書いたパートでは汎用的なノウハウを伝える一方、個別の事例は扱っていません。寄稿者の皆さんには各現場での成功イメージを追体験できるような内容を寄稿いただきました。

寄稿者のお名前は近日発信するニュースレターで発表します。こちらもお楽しみに!


●あとがき

本の版元はマイナビ出版です。UXデザインの従事者には馴染みの深い出版社であり、雑誌の『Mac Fan』『Web Designing』をはじめ、書籍では『ノンデザイナーズ・デザインブック』や、最近のタイトルでは『ABOUT FACE』などが有名です。

執筆をスタートする折、「出来上がる本は網羅性に意義があるので、いったんは紙幅を気にせず書いてみてください」と薦めてくださった編集者さんに感謝!おかげさまで、ナレッジから実践方法まで幅広い話題を盛り込むことができました。

あらためて、『ユーザーリサーチのすべて』の発売日は10月22日です。発売後、もしお手に取ってくださる方がいたら、ぜひお声をお聞かせください!SNSやブックレビューなどでも感想を広めてもらえたら嬉しいです(読者アンケート企画も実施予定です)。


●お知らせ

本の出版記念イベントも、続々と主催者さんから発表になっています!
(詳細な募集要項※対象者は各社のイベントページをご参照ください)

●①メンバーズ主催セミナー【2024/10/22(火)】

テーマ:「事業フェーズに応じたリサーチ組織の作り方」
日時:2024/10/22(火) 16:00~17:00
主催:株式会社メンバーズ
対象:プロダクトマネージャー、UXデザイナーの方におすすめ
形式:オンライン開催
進行:LT+対談

●②フクオカリサーチクラブ【2024/10/23(水) 】

テーマ:「ユーザーリサーチの結果を共有・活用していく仕組みを考えてみる」
日時:2024/10/23(水) 19:00~21:30
主催:フクオカリサーチクラブ(フリクラ)
対象:デザインリサーチの実践者の方におすすめ
形式:オフライン開催(福岡)
進行:対談+ワークショップ

●③マナミナ講座【2024/10/28(月)】

テーマ:「ユーザーリサーチのススメ」
日時:2024/10/28(月) 17:00~18:15
主催:株式会社ヴァリューズ
対象:マーケティング、データ分析、事業企画、経営企画の方におすすめ
形式:オンライン開催
進行:LT+対談





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菅原大介|リサーチャー
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