「仮に、アンケートやインタビューが使えない環境にあったとして、菅原さんならどうやって情報を集めますか?」(実際には世の中一般的にそういう人も多いので)―オンライン学習サービス・Schooのディレクターさんから最近いただいた質問です。 時を同じくして、いつもリサーチ記事のウェブ連載を掲載いただいているヴァリューズの担当編集者さんからも、「ビッグデータなどのデータセットからは得られない、リサーチ活動ならではの魅力や価値は何ですか?」という質問もいただきました。 私自身は日頃、
著書『ユーザーリサーチのすべて』が10月22日に発売されます!UXリサーチ、マーケティングリサーチ、デスクリサーチの方法論を、サイト・アプリ運営の実務に沿って定性・定量ともに学べる、ユーザー調査のマニュアルとなる書籍です。 本のベースとなっているのは、ビジネスメディアの「マナミナ」で2021年5月から連載を続けてきた「現場のユーザーリサーチ全集」です。イメージしたのは万葉集。プロダクト運営の実務に必要な調査手法・分析手法を選んで実践的に解釈する内容を書き溜めてきました。
個人で企業向けのリサーチのメンター活動をしていると、「どこの調査会社・支援会社が良いのか?」をよく聞かれます。こういう時には案件の内容に応じて最適な候補を出すようにしていますが、薦めたくなる会社というのがあります。 それは単純に、人当たりがいいからとか難題に応えてくれるからということではなく、確固たる「クライアントワークが上手いリサーチディレクター」像というものがあります。そうした人とのプロジェクトはやはり上手く運ぶものです。 今回は過去のオリエンや支援会社とのやり取りを
皆さんは「インタビュー調査の報告」をどのようにまとめていますか?アンケート調査の結果報告であれば「グラフレポート」や「自由回答集」のような明確な成果物がイメージできますが、定性調査の場合はかなりバラツキがあります。 UXリサーチの場合は、そもそも報告書までは作らず、オンラインホワイトボードツール上でユーザーの発話情報を付箋データにまとめることが多く、共有方法もプロジェクトメンバーを前提とすることでツール内で問題ないでしょう。 マーケティングリサーチの場合は、グループインタ
会社の経営方針・事業方針を示す「中期経営計画」は、3~5ヵ年の活動方針を社内外に公表する重要資料です。中計の主管部門は経営企画部が担いますが、取りまとめ役の立場でもあるため、実際には様々な部門の協力を必要とします。 デジタルプロダクトを運営する企業においては、プロダクト戦略を描くプロダクト本部、リサーチ実務を管掌するデザイン本部、データ分析を推進するDX本部などにとって、過去の業務成果や未来の活動方針を伝達する重要な機会です。 ところが、数年に一度のタイミングでやってくる
デザイン・マーケティングの領域を行き来してユーザーリサーチを担当していると、自分が行う以外にも様々な立場の人がインタビュアー(モデレーター)を務めるユーザーインタビュー(ユーザーテストも含む)に立ち会う機会があります。 そうすると、「この人、モデレーターが上手い…!」と思う瞬間が何度も訪れます。不思議と、必ずしもモデレーターとなる人の職種・役職・資格・経験歴に限らず上手いのです。例えば私は、幸運にも以下のような神回に遭遇しました。 ・デプスインタビューの進行を相手の性格に
今年も1月〜12月までに「#リサーチハック」のハッシュタグでXに投稿してきた、デザイン・マーケティング・市場調査のリサーチ界隈で起きていた主なニュース・トレンドを7つのトピックに分類してお届けします。 リサーチのトレンド 2023 1.ChatGPT/生成AIの活用 2.VOCデータの再評価 3.ディスカバリーリサーチの価値浸透 4.リサーチ支援会社の合従連衡 5.リサーチツールの越境機能強化 6.リサーチデータベースの構築 7.案件依頼・相談フローの改良 2023年も新
ファンクラブや優待プランなどの有料会員サービスは、利用メリットの旗印が鮮明な割に、「新規が増えない/退会申込が多い」「売上/利益インパクトが中途半端」など、有料の価値が社会でも社内でも認識されず、運営意義が問われることが少なくありません。 同じ状況は、本体事業から付帯的に立ちあがるオプション課金や物販展開でも同様に見られ、「売上の足しにはなっているけど、制作費・人件費を含めると赤字で、かといって廃止の判断が難しく、そのまま運営だけが数年続いていく」ケースもよくあります。
「意気込んでユーザーアンケートをやってみたが、だいたいログデータでわかっていた結果だった」(あるいは、周りがそのような微妙な反応だった)―とりあえずユーザーアンケートに手を出してみたものの期待したような業務成果に至らなかった、という状況は、データ分析体制がある程度整いつつある企業や組織で見られる調査課題です。 また、社内に数あるデータ分析業務の中でもアンケートが後発の存在だと、既に確立されている業務と同等あるいはそれと異なる分析パフォーマンスを求められます。分析しようとして
初心者対象のユーザーリサーチ講習セミナーに今年20件(※)出演する中で驚くことがありました。それは、最も多い質問が「どのタイミングで実施するとよいか?」「どれくらいのサイクルが適切なのか?」という内容だったことです。(※2022年1月~10月時点) これは本当に意外でした。順当に考えると質問法や好事例についての質問が上がりそうなものですが、調査の内容以前に、皆、業務計画のところで疑問を持っていることが多かったのです。(もちろん質問数や選択肢数の上限適正など定番の質問も多いで
企業のカスタマーサポートセンターのコールや問合せフォームには、メルマガに関するものが少なくなく、「配信数が多い」「配信時間帯が夜遅い」「登録解除できない」などをメインに、マーケティング施策としては異例の量の苦情が集まってきます。 この企業側からの一方通行的な施策に対する見直しを求める声が上がる一方で、もちろんメルマガはユーザーに有用な情報をもたらす存在として、新着メルマガ・おすすめメルマガ・クーポンメルマガ・特集メルマガなどの利点は、よく認識されています。 メルマガ運営を
近年、企業が生み出す動画コンテンツは、「情報コンテンツ・キャンペーン告知・生配信イベント・ライブコマース」などの形で展開され、インパクト・情報量・ライブ性・シリーズ展開などの訴求力の高さから、最重要のコミュニケーション施策の一つです。 一方で、「労力の割に露出が伸びない」「企画演出の判断基準が無い」「タレント起用効果が不明瞭」など、継続的な運営や効果的な活用に至るには改善活動が欠かせず、動画配信における露出力・訴求力・計画力に対する懸念事項は尽きないものです。 そこでおす
「自社メディアの発信内容がビジネスと連動していない」「掲載しているコンテンツが他のメディアとあまり変わらない」―オウンドメディアの運営は、活動の自由度こそ高いものの、事業活動から孤立したり、制約で個性を出しづらい難しさがあります。 加えて、編集部内においても、取りためている読者データや過去記事コンテンツをあまり活かせていない課題を持っていることが多く、足元の企画は進めていても、「過去の振り返り」や「未来の見通し」をなかなか提示できないジレンマを持っています。 そこでおすす
過去にアンケートを実施したことがある方に質問です。なぜ「アンケート」という調査方法を選んだのでしょうか?その案件は「インタビュー」ではだめだったのでしょうか?そもそもこの2つの調査方法には実施形式以外にどんな違いがあるのでしょうか? 調査の監修を依頼される立場で相談者と話すと、「なんとなくアンケートだったから」「アンケートと決まっていたから」「インタビューは慣れていないから」など、特に深い理由はなく決定される(積極的な選択ではない)ことが多いように感じます。 実は調査のプ
「SNSの仕事価値が組織に浸透しない」「施策の成果以前にブランド力が弱い」―SNSの担当者が活動初期あるいは組織変更と共に悩む課題です。また、会社の文化によっては次のような業務に対する定番の指摘も入り、取り組む以前のハードルがあります。 ・ビジネス貢献がよくわからない ・ツールを増やしても大変なだけ ・ユーザーと交流するのはリスク さらに人員体制によって、専任体制下では業務が注目されていても孤立してアピール手段が不足したり、共同体制下では惰性的な運用により大きな成果は上が
「リサーチの必要性が(社内に・顧客に)理解されないのですが、どうしたらよいでしょうか?」―調査活動の入口に立っている皆さんから私がよくいただく質問です。リサーチとは言わば研究開発の先行投資のようなものなので、決裁者や取引先に価値を事前に認識してもらわなければいけません。 以前まで私はこの質問に対して、「満足度調査」あるいは「競合調査」が組織の中で始めやすいテーマです、と答えてきました。しかし最近では、「始めやすいからと言って続けやすいテーマであるかどうか」はまったく別問題で