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【社員インタビュー】インフォマティクススペシャリスト 鈴木彦有さん(1/3)

「世界を変える酵素を、迎えにいこう。」
偶然を待つしかなかった酵素開発プロセスを変えた、digzyme独自のテクノロジー。
digzymeでは、様々なバックグラウンドを持った社員が、この独自のテクノロジーの根幹を支えるために働いています。

社員インタビューコンテンツ『digzyme Deep Dive』では、digzymeメンバー1人ひとりにスポットライトを当て、インタビュー形式でその想いを深掘りしていきます!

第1回目は、取締役CTOの中村 祐哉さん、第2回目はプリンシパルインベスティゲータの礒崎達大さんにお話を伺いました。
第3回目となる今回は、インフォマティクススペシャリストの
鈴木彦有さんにインタビュー!

前中後編とございますので、ぜひ最後までご覧ください。

(※記事中の組織名・役職等はすべて取材時のものです。なお、鈴木彦有さんは社内で下のお名前で呼ばれているので、今回の記事内でも呼称を『彦有さん』とさせていただいております。)

ーー彦有さん、よろしくお願いいたします。

よろしくお願いします!

ーー早速ですが、digzymeへのご入社の経緯を教えてください。

はい。具体的に転職を考え始める以前 からJREC-IN(科学技術振興機構が提供するキャリア支援ポータルサイト)に登録していたのですが、そこにdigzymeの求人が出ていたのをたまたま目にして。
母校の東工大発だし、縁がありそうだなと思ったのと、自分自身のスキルの評価として、僕が持っているノウハウが使えて即戦力になりそうだなと感じたことが応募のキッカケです。

ーーなるほど。前職ではどんなことをなされていたのですか?

ゲノムとかトランスクリプトーム・・・いわゆるオミックス解析と呼ばれる、バイオロジーのビッグデータを対象とした、解析サービスを提供している会社にいました。
digzymeと似てるところは、オーダーメイドに近い案件が多いところでしたね。

ーーdigzymeでは共同研究として受けているような案件に近いでしょうか?

はい。
もちろん酵素を対象にした開発っていうわけではなかったんですけれど。
ちょっとコンサル業に近い感じっていうんですかね・・・
ビッグデータを使った解析って、計算機のノウハウが必要なので誰にでもできるわけでは無い。
なので、食品関係や製薬関係の企業さんなどから頂いた案件に対してそれぞれに応じた解析を行い、なんらかの結論を返す、というお仕事をしていました。

ーー研究開発のコンサルティングに、バイオのビッグデータを絡めている?

そうですね。そういうベンチャー企業に5年くらいいました。
わかりやすい例だと、やっぱり抗体医薬品関係ですね。
近年は製薬会社の売上高上位を占める製品って、抗体医薬品なんですけれど。
「抗体」は、特定の抗原(ターゲット)だけに結合する能力を持ったタンパク質です。
なので、抗体医薬品は従来の医薬品より副作用も減らせますし、がんや難病の治療時に強力な効果を発揮するものなのですが・・・
抗体は「タンパク質」の一種なので 、もちろんベースになる「ヒトの抗体の遺伝子」があるわけです。
この抗体遺伝子をハムスターの培養細胞に組み込んで、大量に作らせて精製して、製品にする、という流れがあるんですが、その過程で、培養方法をどう工夫すればより効率的に大量に作れるか・・・
あるいは、新しい抗体医薬品を作るとしたら、どういう配列のものを
作ればいいか、などを考える必要があります。
これらを考察する時に、ビッグデータから知見を得るということが最近ではよくあるんですね。
例えば、少量のスケールならできていたことを、実生産の大スケールで行おうとしても、少量の時の単なる比例にはならない。
100倍のスケールにしたら100倍できるかっていうとそうはいかないので(笑)
そういう時に何が起きているのかを分析したりするために
生き物のビッグデータをとって調べるアプローチがあり、そういうところをお手伝いしていました。

ーーなるほど。量産時の生物のコントロールは難しいと、中村さんもおっしゃっていました。
digzymeに入社後はどのような業務に関わってきましたか?

入社直後は、合成生物学の発想に基づく開発がメインでして、目的化合物を生き物に合成させるための、新規の反応を含む反応経路の探索プログラムの開発をしていました。
例えば出発化合物Aから目的化合物Dを作りたい、というときにAからBを経て、Cを経て、Dを作らなければならないとします。
途中に何段階かの反応を噛ませないといけないということは、この間を繋ぐ反応経路の推定をしなければ、それらの反応を触媒する酵素探索ができないわけです。
ちなみに合成生物学では培養細胞や微生物を使って、何か人間にとって有用な物質を作りたいとなった時に往々にして一反応では済まないので、反応経路の推定は不可欠なんですよね。
ということで、色々な経路がありえるなかで、最適なものを探索できるようにしていました。
最近のdigzymeは産業用酵素をメインに扱っているので、お客様の求める酵素そのものを作れば良いわけですから、反応経路を気にする必要はなくなっています。
こういう反応を触媒する酵素が欲しいです、という酵素を提供できれば良いので、酵素のバリエーションをライブラリーとして持っておくための開発に注力していますね。

ーーライブラリの開発にも触れていただきありがとうございます!最近のお仕事も教えてください。

DRY解析に詳しくないWETのメンバーにも扱える解析環境の開発・保守をしています。

ーー具体的にはどのような内容になるのでしょうか?

一般的にIDE(Integrated Development Environment/統合開発環境)の導入とい言われるところですね。
いざ解析を始めようとすると、初心者にとっては解析ソフトウェアのインストールだけでも高いハードルになります。

ーーインストールだけでも・・・

はい。皆さんなんとなく『インストーラーをダウンロードしてきてダブルクリックすると、コンピュータに入る』みたいなイメージをお持ちかと思うんですが、バイオインフォマティクスでよく使われる多くのツールって、そうじゃないんですよ。
インストールの段階から全部コマンドラインで文字列を打って、コンピューターに命令を出していくので、初心者がいきなりやろうとすると、まずこのインストールでつまづいてしまうくらいコンピューターに関する専門知識がある程度必要だったりするんですね。
なので、そのような工程が不要になるように、なるべく環境ごと用意して渡せるようにしていく・・・というのが別に弊社でなくても、よくある解決手段なのですが、IDEの導入というのはまさにそれのことです。
さらに、バイオインフォマティクスの多くのツールはGUI(Graphical User Interface)が提供されていないのでより親しみにくいのですが、直感的に操作できるところまで持っていくのは大変にしても、jupyter notebookを利用することでこれもできるだけ解消するようにしています。
これはどういうことかというと、WETの方も後からのトレース用に『実験ノート』を作りますが、同じように『解析のノートブック』を作るんです。
もちろんただのメモじゃなくて、実行コマンドが書いてあるし、押すとそのコマンドが実行されるボタンもついている。
このような機能を整備することで、同じようなコマンドラインを別の案件で流したい時に役立ちます。
極端な話、一個一個の処理にどういうプログラムが使われているのか判っていなくても解析ができちゃうんですよね。もちろん全くわかっていないで触るのは問題なので、あくまで極論を言えばですが(笑)
田村さん(※注1:インフォマティクススペシャリスト、田村康一さん)や礒崎さん(注2:プリンシパルインベスティゲータ、礒崎達大さん)とも適宜協力してこのような環境を作っております。

ーーなるほど。ちなみにWETの方々はどのようなシチュエーションでDRY解析をされるのでしょうか?

まず想定されるのは、お客様とNDAを締結した後で、蓋然性を検討するフェーズですね。
理想的には、WETの研究員とお客様が面談している最中にささっと解析をして蓋然性の検討ができると、DRYの研究員メンバーがその場にいなくても簡単なご返答ができてとてもスムーズですから。
また、実際の事業案件として研究開発を進めていくフェーズでも、DRY解析の結果に基づいて実験対象や方針決めをWETの研究員だけで完結できることは開発速度の面でメリットが大きいと思います。

ーーなるほど。教えていただきありがとうございます。
その他にはどのようなお仕事をなされていますか?

個別の案件で実際の解析業務や調査業務を担当したり、新たな解析アルゴリズムを考案することもあります。
最新の論文を読んで、社内の既存のツールの精度を高めるための実装に使ったり、バイオロジカルな方面で、判定のための指標値の計算について考えたりということがありますね。

ーーどんな論文を読むことが多いですか?

もともと分子生物学、分子進化学が専門なので、タンパク質のアミノ酸配列などを調べていったり、ゲノムとか、トランススクリプトームとか言われる配列と紐づく「量」の情報を扱うような解析が得意なので、遺伝子配列を直接扱うような論文を読むことが多いです。
先ほど説明した『ノートブック』のなかで、配列データの処理としてうまく使えるところがないかなどを検討します。

ーー田村さんは構造的な側面の専門家ですが、彦有さんは遺伝子配列の側面から日々解析を進めてくださっているんですよね。

そうですね。ちょうど得意分野が分かれているので、digzymeでは酵素を多角的な視点から捉えた解析が可能となっていて、そこが強みの一つかなと思います。

※中編に続きます!

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