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『Alligator Bites Never Heal』で語られるDoechiiの本当の姿とは?

フロリダ州タンパ出身のフィメールラッパー、Doechiiは、ニッキー・ミナージュローリン・ヒルといったアイコニックなアーティストから強い影響を受け、高校時代から作詞やラップを始めました。彼女はその才能をSoundCloudで発揮し、自身の楽曲をリリースすることでキャリアをスタートさせます。

2020年、彼女はシングル『Yucky Blucky Fruitcake』を発表し、この楽曲がTikTokで爆発的な人気を博します。これにより一躍注目を浴び、彼女はケンドリック・ラマーがかつて所属していたレーベル、Top Dawg Entertainmentと契約を結ぶことができました。

その後、彼女の実力はさらに評価され、2022年にはヒップホップメディア誌XXLの『Freshman Class』に選出されるという快挙を達成します。翌年、彼女はKodak Blackとのコラボレーションシングル『What It Is (Block Boy)』をリリースし、これが彼女にとって初めての全米チャート入りを果たすヒット曲となりました。この楽曲はSpotifyで3億回以上のストリーミングを記録し、多くのリスナーから愛されています。

そして2024年8月、Doechiiは待望の3枚目のミックステープ『Alligator Bites Never Heal』をリリース。この作品では、彼女がどのようにアーティストとして進化し、独自のスタイルを確立してきたかを深く掘り下げていきたいと思います。


レーベル  : Capitol Records, Top Dawg Entertainment
リリース日 : 2024年8月30日
名前    : Doechii
本名    :    Jaylah Ji'mya Hickmon
年齢    :    26歳
出身地   :   フロリダ州タンパ


TDE初の女性ラッパーDoechiiが語る、プレッシャーと創造の自由

TDE(Top Dawg Entertainment)は、かつてケンドリック・ラマーがラップスターへの道を切り開いたことで知られるレーベルです。また、Schoolboy QAb-SoulIsaiah Rashadなど、個性豊かなラッパーたちが在籍しています。このTDEにおいて、初の女性ラッパーとして活動しているDoechiiは、周囲の期待やプレッシャーを感じながらも、自分らしい表現を大切にしていると語ります。

彼らは本当に私にとって家族なの。TDEはヒップホップそのものだし、ヒップホップ文化の核心を考えるとき、SZAの美しいR&Bの要素も含めて、彼らのことを思い浮かべるわ。彼らの期待に応えるのはすごくプレッシャーだけど、彼らが教えてくれたのは、そのプレッシャーを手放すこと。誰かの基準に合わせるんじゃなくて、自分のストーリーを正直に語ることが大事なんだって。私たちのレーベルのアーティスト全員がそうしていると思う。正直でいることで、彼らが私にその環境を与えてくれたとき、すごくいいものが生まれるの。それが今の『Swamp Sessions』で見えてること。型にとらわれず、完璧を求めず、ただありのままでいることが大切なんだよね。

彼女が語る『Swamp Sessions』とは、彼女が定期的にYouTubeでアップしている楽曲集のことを指しており、このプロジェクトでは、彼女の独自の表現が色濃く反映されています。

また、楽曲制作やアルバム制作において、DoechiiSchoolboy QSZAから貴重なアドバイスを受け、その影響を強く感じていると話しています。

Schoolboy Qからはたくさんのアドバイスをもらったし、SZAからもアドバイスをもらったよ。特にQが言ってくれたことの中で、最も重要なことの1つを覚えているわ。
私は彼に「アルバムが完成したと分かるのはいつ?」と尋ねたの。すると彼は「もう何も伝えることがなくなったとき、アルバムは完成する」と答えてくれたわ。それは本当に心に響いたし、私も「わかった、何も言うことがなくなるまで、心の中の全てを注ぎ込んで書き続けよう」と思ったわ。

新作『Alligator Bites Never Heal』に込めた力強いメッセージ

新作ミックステープ『Alligator Bites Never Heal』は、2020年に自己資金で制作した『Oh the Places You'll Go』以来の作品となっています。この新作のアートワークには、アルビノのワニを抱えたDoechiiが描かれており、これは彼女の故郷であるフロリダ州タンパの沼地の風景に由来しています。フロリダの多くの地域はワニの生息地として知られ、彼女のニックネーム「Swamp Princess」も、直訳すると「沼のプリンセス」という意味で、アートワークは彼女の名前へのオマージュともなっています。

Doechiiは自身のInstagramで、この新作について「過去1年にわたり個人的にも創造的にも多くの困難に直面してきた」と語り、それを「ワニのデスロール」に例えています。

ワニは「デスロール」と呼ばれる回転技を駆使して、獲物を水中に沈めてバラバラにするの。この1年、私は自分の人生で容赦ないデスロールのような状況と闘ってきたわ…。自分の悪癖に溺れ、自分のレーベルとの闘い、私を壊した創造力の麻痺と闘ったわ。

今回、Doechiiは、自身がファンやヒップホップとの再会によって救われ、創造力を取り戻したと語っています。このミックステープは、彼女が困難に立ち向かいながら再び力を手にした証であり、「他人に支配される存在ではなく、自ら強く生きていく」というメッセージが込められています。

『Swamp sessions』は、本当に私を救ってくれた作品なの。ファンや見知らぬ人たちからのサポートで、アーティストとしての使命を改めて感じることができたし、ヒップホップを通して自分の強さを再確認できたの。しかも、もう一度ヒップホップに恋しちゃった。このミックステープは、私の復活と力を取り戻した証なんだ。揺るぎない精神と無限の創造力を表してる。ワニの攻撃について調べてたら、生存者に共通してるのは「戦い続けたこと」だってわかったの。このミックステープは、まさに私の反撃そのもの。私は誰かの獲物なんかじゃない。私は、捕食者として生まれてきたんだから。

収録曲について

Doechii『Alligator Bites Never Heal』は、TDEと契約後初のミックステープであり、彼女のキャリアで最も曲数の多い19曲が収録されています。この作品には、唯一の客演としてアトランタを拠点に活動するラッパー兼モデルのKUNTFETISHが参加しています。

『DENIAL IS A RIVER』

4曲目『DENIAL IS A RIVER』は、ブーンバップ調のビートに乗せて、Doechiiが力強いラップを次々と繰り出す印象的な一曲です。この楽曲では、彼女が過去の恋愛や成功、さらに名声に伴うプレッシャーや混乱について深く掘り下げています。

特に2019年に経験した恋愛での裏切りが反映され、音楽業界での急激な成功に対する複雑な感情が率直に表現されています。彼女はドラッグやパーティーに頼る一方で、心の中で葛藤を抱える様子が鮮明に描かれています。そして、曲の最後には過去の自分に戻らないよう、冷静さを取り戻そうとする彼女の決意が力強く響いています。

Doechii - DENIAL IS A RIVER

『WAIT』

9曲目『WAIT』は、Doechiiのブレイクソング『What It Is (Block Boy)』でも見せたソウルフルな歌声をサビで披露したR&Bナンバーに仕上がっています。この曲では、彼女が焦らずに待ち、自分のペースで進むことの大切さを伝えています。また、過去や他人にこだわらず、今あるものを受け入れる姿勢を描いており、リスナーに対しても心の余裕を持つことの大切さを訴えかけています。

Doechii - WAIT

『BOOM BAP』

12曲目『BOOM BAP』は、今作からのリードシングルとしてリリースされた一曲で、心地よいサンプリングビートに乗せた型破りなラップが印象的です。この曲では、前述のシングル『What It Is (Block Boy)』に触れつつ、Doechiiがラップだけでなく、歌もこなせることを強調しています。
彼女は、ラップを求めるファンに対して「歌ってもヒットするんだよ」と反論し、自身の音楽スタイルの多様性をアピールしています。

Doechii - BOOM BAP

『NISSAN ALTIMA』

13曲目『NISSAN ALTIMA』は、今作からのリードシングルとして2024年7月にリリースされました。Doechiiは、過去にバイセクシャルであることを公言しており、この曲でもそのアイデンティティを表現しています。曲中で「私は新しいヒップホップのマドンナ」「トラップのグレース・ジョーンズ」とラップし、マドンナグレース・ジョーンズもまた、バイセクシャルのアーティストとして知られています。

この曲では、彼女が自分の成功や影響力を誇示し、周囲の批判に動じることなく、自分の価値を堂々と主張しています。さらに、ミュージックビデオには、レーベルメイトのJay RockAb-SoulIsaiah Rashadがカメオ出演しており、彼女の音楽の広がりを象徴しています。

Doechii - NISSAN ALTIMA

おわりに

Doechiiの新作ミックステープ『Alligator Bites Never Heal』は、彼女の成長と自己表現を象徴する重要な作品となりました。幅広いビートを取り入れた楽曲の中でも、特に『SLIDE』や『BEVERLY HILLS』といったダンサブルなR&Bナンバーから、スローなR&Bまで、彼女の歌声を存分に楽しめる点が印象的です。

一方、ヒット曲『What It Is (Block Boy)』の影響で、多くのオーディエンスから「シンガーでは?」と評価されることに対し、彼女は『DENIAL IS A RIVER』や『BOOM BAP』で力強いラップを披露し応戦しています。これらの楽曲を通じて、Doechiiはフィメールラッパーとしてのスキルを堂々とアピールし、TDE屈指の存在として地位を固めつつあります。

インタビューでは、彼女は最近特に「ブーンバップ」と呼ばれるラップスタイルに魅了されていることを明かしています。

「私は常にさまざまなものに惹かれてきたわ。役者として、多くの異なるスタイルに引き込まれるの。たくさんのプロデューサーと仕事をしてきたけど、最近は昔のブーンバップに夢中なんだ。私はこのサウンドをどこまで発展させられるか、ちょっと試してみたいんだ。」

デビューアルバムを期待する声も多かった中で、彼女はあえてミックステープという形で『Alligator Bites Never Heal』をリリースしました。自由な音楽表現を追求したいという強い意図が、この作品には込められています。そして、この新作では、力強いラップと多様な音楽スタイルを駆使し、彼女のアイデンティティや創造力が存分に発揮されています。

彼女の歌声とラップスキルは、フィメールラッパーとしての地位を確立するための大きな強みであり、これからの活動にも注目が集まります。このミックステープは、彼女が過去の困難を乗り越え、新たなステージへ進む決意を示しており、リスナーに力強いメッセージを伝える作品です。

Doechiiの進化とさらなる成功が、これからどのように展開していくのか、ますます目が離せません。

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