注目の新星たち:2024年XXLフレッシュマン・クラス後半5名を総ざらい!
前回の記事では、XXL誌が選出した2024年の「フレッシュマン・クラス」における11名のアーティストのうち、6名をご紹介いたしました。今回は、その続編として、残りの5名について詳しくご紹介いたします。
That Mexican OT
テキサス州ベイシティ出身のメキシコ系アメリカ人、That Mexican OT(本名: Virgil Rene Gazca)は、幼少期に父親が収監され、母親が飲酒運転の車によって亡くなるという辛い経験をしました。その後、彼は厳しい環境の中で生活を送らざるを得ませんでした。
過酷な生活を送る中、彼は、ラッパーのBig Lやカントリー・ミュージックの帝王と称されるGeorge Straitといった幅広いミュージシャンに影響を受け、4歳の頃からラッパーに憧れを抱くようになりました。
高校卒業後、自ら楽曲のレコーディングを開始し、2020年にデビューミックステープ『South Texas Project』をリリース。その後も、『Southside Steppin』(2021年)や『1 Double 0』(2021年)といったミックステープを次々と発表し、2023年にはデビューアルバム『Lonestar Luchador』をリリースしました。
このアルバムのリードシングル『Johnny Dang』は、Paul Wallをフィーチャーした楽曲で、TikTokでカウボーイハットをかぶり、鶏を抱えながらラップする姿が注目を集めました。このシングルは自身初の全米チャート入りを果たし、Spotifyでは1億3000万回以上のストリーミングを記録しています。
『Johnny Dang』という曲名は、ベトナム系アメリカ人でジュエリーやダイヤモンド、グリルなどのビジネスで知られるJohnny Dangを指しています。Johnny Dangは、NellyやDJ Khaled、Beyoncéのミュージックビデオに出演しているほか、MigosやChief Keefの楽曲のリリックにも登場するなど、多くのミュージシャンと交流を持っています。
2024年3月に発表されたミックステープ『Texas Technician』には、DaBabyやMoneybagg Yoといったラッパーに加え、Slim Thug、Z-Ro、Propainなどテキサスを代表する重要なアーティストたちがゲスト参加しています。こうした実績から、That Mexican OTはテキサスのラップシーンで揺るぎない地位を確立し、多くの著名アーティストからも支持を得ています。
That Mexican OT feat. Paul Wall & Drodi - Johnny Dang
Rich Amiri
Rich Amiri(本名: Elijah Policard)は、マサチューセッツ州ボストン出身のラッパーです。彼はFutureやLil Keed、Young Thugなどのアーティストに影響を受け、2019年頃からラッパーとしてのキャリアをスタートさせました。主にSoundCloudで楽曲を発表し続け、2022年にはデビューEP『Chase』をリリースしました。その数ヶ月後には2作目のプロジェクト『For The Better』を発表しています。
2023年には3作目のプロジェクト『Evolution』を発表。この作品はInternet Moneyからリリースされ、レーベルの創設者であるTaz Taylorがエグゼクティブプロデューサーを務めました。
さらに同年、Internet Money所属のRio Leyvaがエグゼクティブプロデューサーを務めた4作目のプロジェクト『Ghetto Fabulous』をリリースしました。この作品からのリードシングル『ONE CALL』は、TikTokでバイラルヒットとなり、自身初の全米チャート入りを果たしました。Spotifyではこの曲が2億9000万回以上のストリーミングを記録しています。2024年も彼から新たなプロジェクトのリリースが期待されています。
Rich Amiri - One Call
BossMan Dlow
フロリダ州ポートサレアノ出身のBossMan Dlow(本名: Devante McCreary)は、2019年にコカインの売買と所持の容疑で逮捕され、投獄されました。刑務所での生活を通じてラップに打ち込む決意を固め、Wiz Khalifa、Yo Gotti、Jeezy、Lil Wayne、Pliesといったラッパーたちから多大な影響を受けました。
2023年、彼はデビューミックステープ『Too Slippery』をリリースしました。その中でも『Shake Dat Ass (Twerk Song)』はTikTokでバイラルヒットとなり、一躍注目を浴びました。この成功を機に、BossMan DlowはLil DurkやRod Waveが所属するレーベルAlamo Recordsと契約を結び、ミックステープは『2 Slippery』と改題して再リリースされました。
2024年1月、シングル『Get in with Me』をリリース。この曲は、YouTubeチャンネル「Kreepin Through The Streetz」で披露したフリースタイルからインスパイアされたもので、TikTokで30万本以上の動画に使用されるなど、大ヒットとなりました。このシングルはR&B/Hip Hopシングルチャートでトップ20にランクインし、BossMan Dlowにとって初の全米チャート入りを果たしました。
続く2024年3月には、この曲を収録した2枚目のミックステープ『Mr Beat the Road』をリリースし、R&B/Hip Hopチャートで7位にランクイン。同月、以前のミックステープ『2 Slippery』に収録されていた『Finesse』がGloRillaによってリミックスされ、彼の才能がさらに注目を集めました。BossMan Dlowは、短期間でその名声を確立し、今後の活躍がますます期待されています。
BossMan Dlow feat. GloRilla - Finesse Remix
4batz
テキサス州ダラス出身の4batz(本名: Neko Bennett)は、幼少期から母親の影響で90年代のR&Bに親しんでおり、JodeciやSadeといったアーティストの音楽に囲まれて育ちました。小学3年生の頃からラップに興味を持ち始め、14歳で本格的に音楽活動をスタートさせました。
2023年1月、彼はデビューシングル『act i: stickerz “99”』をリリースし、同年12月にはセカンドシングル『act ii: date @ 8』を発表しました。この『act ii: date @ 8』は、透明感のある歌声とドリルシーンの要素が見事に融合した楽曲で、そのパフォーマンスビデオは彼の独特な音楽とビジュアルスタイルがSNSで話題となり、TikTokでバイラルヒットとなりました。
この成功により、Drakeの目に留まり、2024年3月にはこの曲のリミックスが発表されました。そのリミックスは全米チャートでトップ10入りし、R&B/Hip Hopチャートでは3位にランクインしました。
さらに、2024年5月には待望のデビューミックステープ『U Made Me a St4r』がリリースされました。このミックステープには、特にKanye Westがリミックスした『act iii: on god? (she like) remix』が収録され、大きな話題を呼びました。
4batz feat. Drake - act ii: date @ 8 remix
ScarLip
ニューヨーク、ブロンクスで生まれたScarLip(本名: Sierra Lucas)は、幼い頃から厳しい現実に直面してきました。12歳のとき、母親が交通事故で亡くなり、その後、叔父と叔母から虐待を受ける日々が続きました。さらに、叔母の家を追い出され、養護施設での生活を余儀なくされ、ペンシルベニアやコニーアイランドを転々とすることになりました。彼女のステージネーム「ScarLip」は、16歳のときに兄に唇を殴られた傷が由来です。
そんな過酷な生活の中でも、彼女は幼い頃から詞を書き始め、ラッパーのDMXに憧れてラッパーを志すようになりました。
2018年に初めてレコーディングした楽曲をネット上にアップし、その後、次々にシングルをリリース。2022年にはシングル『Glizzy Gobbler』がTikTokでミームとして広まり、バイラルヒットとなりました。2023年4月にはシングル『This is New York』を発表し、Snoop Doggがリミックス『This Is Cali』を制作するなど、シーン全体で話題を集めました。
さらに同年、ScarLipはSwizz Beatzの『Hip Hop 50, Vol. 2』に紅一点としてゲスト参加。EPに収録された『Take ’Em Out』で、JadakissやBenny the Butcherと共演し、Swizz Beatzのビートに乗せたラップでニューヨークのベテランたちに引けを取らないパフォーマンスを披露しました。
これらの活躍が評価され、6月にはEpic Recordsと契約。現在、彼女はデビューEP『Scars & Stripes』の制作に取り組んでおり、このEPはSwizz Beatzが全面プロデュースを担当する予定です。DMXの影響を受けた彼女にとって、Swizz Beatzとの共演は特別な意味を持っています。
ラップシーンの重鎮からも注目を集めるScarLipの今後が楽しみです。
Swizz Beatz feat. Jadakiss, Benny The Butcher & Scar Lip - Take 'Em Out
Southside
最後にご紹介するのは、今年の「フレッシュマン・クラス」でサイファー用のビートを提供したSouthside(本名: Joshua Howard Luellen)です。彼はジョージア州アトランタ出身で、14歳の頃に叔父から初めてパソコンをもらい、ビート作りを始めました。10代半ばで本格的に音楽プロデューサーとしてのキャリアをスタートし、17歳の時にはラッパーのWaka Flocka Flameに見出され、Gucci Maneのレーベル1017 Recordsと契約を結びました。
1017 Recordsでの活動中、SouthsideはWaka Flocka FlameのプロデューサーであるLex Lugerと出会い、共にWaka Flocka Flameのデビューアルバム『Flockaveli』(2010)のプロダクションを手がけ、その基盤を築きました。この作品がきっかけとなり、SouthsideはJAY-ZとKanye Westのコラボアルバム『Watch the Throne』を手掛けるなど、その才能を世界に示しました。
彼はRick Ross、Jeezy、Wale、MGKなどの作品を次々にプロデュースし、大きな成功を収めました。さらに、Futureのアルバム『DS2』に収録された多くの楽曲を手掛け、Drake、Travis Scott、21 Savage、Kodak Blackなどのアーティストとのコラボレーションでもヒットを生み出しました。
また、前述のLex Lugerと共にプロダクションチーム808 Mafiaを結成し、その後の10年間にわたって商業的な成功を収め、2010年代におけるトラップミュージックの隆盛に大きく貢献しました。
Southsideは、その独自のスタイルと才能でシーンを牽引し続け、今後も多くのヒット作を生み出すことが期待されています。
おわりに
前回の記事に引き続き、選出されたメンバーたちはSNSを通じて広くヒットし、注目を集めたことが選考のポイントとして特に高い評価を受けています。彼らはそれぞれ異なる幼少期や生活環境を経験しながら、地元の音楽シーンで注目され、またベテランアーティストからのサポートや、インターネットを通じたつながりも活かし、個性豊かなバックグラウンドと才能を発揮しています。
彼らの音楽の旅はまだ始まったばかりであり、今後のさらなる活躍が期待されています。これからも彼らの成長と進化を注目していきましょう。
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