イギリスのラップスター!!グライムシーンを牽引するStormzyとは?
グライムとは、2000年代初頭にロンドンで生まれたジャンルで、イギリスのダンススタイルであるUKガレージをベースに、ジャングル、ダンスホール、ヒップホップの影響を受けて発展してきました。
2000年代半ばに、Dizzee Rascal、Kano、Lethal Bizzle、Wileyなどのアーティストによってイギリスで広められ、今では「ここ数十年の英国における最も重要な音楽的発展」と評されています。
今回紹介するStormzy(ストームジー)は、グライムシーンで絶大な人気を誇り、その才能をポップスターのEd Sheeranに認められ、グライムアーティストとして史上初のUKアルバムチャート1位を獲得するなど、UKのメインストリームにおいても注目を集めています。
そんな彼が、このたびサード・アルバム「This Is What I Mean」(2022)をドロップ。
ここでは、ニューアルバム以前のストームジーのキャリアについて解説します。
レーベル : 0207 Def Jam, Def Jam Recordings, Hashtag Merky Records Limited & Universal Music Group
リリース日 : 2022年11月25日
名前 : Stormzy
本名 : Stormzy / Michael Ebenezer Kwadjo Omari Owuo Jr.
年齢 : 29歳
出身地 : イギリス、ロンドン
フリースタイルで才能を開花させる
ロンドン、クロイドンでガーナ人の母親の元に生まれ、11歳の時にラップに夢中となり、ユースクラブ、ラップアカデミーに通う生活を始めたストームジー。
こうしてラップの世界にのめりこんでいった彼は、Lethal Bizzle、Bruza、D Double Eといったイギリス人ラッパーや、Frank Ocean、Lauryn HillといったR&Bシンガーに影響を受け、アメリカのラップシーンには興味がなかったと言います。
その後、2013年からYouTubeでクラシックなグライムビートを使ったフリースタイルシリーズ「WICKEDSKENGMAN」を開始し、最終作の「WICKEDSKENGMAN 4」が2015年に1000万回再生を記録するヒット。
これをきっかけにシングルをリリースし、UKチャートで初のトップ40ヒット、フリースタイル・ソングとしても初のUKチャート40入りを果たした。
2014年、自主制作でデビューEP「Dreamers Disease」をリリースし、収録曲「NOT THAT DEEP」はYouTubeで700万再生を記録。
この曲とEPの成功により、同年にイギリスのMOBO Awardsで「Best Grime Act」を受賞しています。
MOBO Awardsは、ヒップホップ、グライム、UKドリル、R&B、ソウル、レゲエ、ジャズ、ゴスペル、アフリカンミュージックなど「黒人由来の音楽」における業績を称えるイギリスの音楽アワードです。
Stormzy - NOT THAT DEEP (2014)
前述の「WICKEDSKENGMAN 4」のB面でリリースされた「Shut Up」のビートは、グライムプロデューサーのXTCによって制作され、元々、「Functions on the Low」というタイトルで2004年にグライムグループRuff Sqwadによってリリースされました。
Ruff Sqwad - Functions On the Low (2004)
この曲のビートジャックバージョンである「Shut Up」は、YouTubeで1億回再生され、UKチャートでは自身初のトップ10内にチャートインしています。
Stormzy - SHUT UP (2015)
グライム史上初の快挙を達成し、エド・シーランもその才能を認める
その後、アルバムの制作に専念するため1年間のSNSの休止を経て、2017年にデビューアルバム「Gang Signs & Prayer」をリリース。
J Hus、Kehlani、MNEKなどがアルバムに参加し、イギリス国内のヒットメーカーで知られるFraser T. Smithがエグゼクティブプロデューサーを務めています。
このアルバムは、グライムのアルバム史上初となるUKアルバムチャート1位を獲得。また、リードシングル「BIG FOR YOUR BOOTS」はUK Hip Hop/R&Bチャートで1位、UKシングルチャート6位となり、Spotifyでは1億回のストリーミングを記録しています。
Stormzy - BIG FOR YOUR BOOTS (2017)
2019年に発表したシングル「Vossi Bop」は、発売開始週に1270万ストリーミングを記録し、ラッパー史上最高、歴代5位となる記録を達成。
これにより、前週チャートで1位だったLil Nas Xの「Old Town Road」やTaylor Swiftの「Me!」といった競合を抑え、UKチャートでは自身初の1位を獲得し、イギリスでの圧倒的な人気を見せつけました。
Stormzy - VOSSI BOP (2019)
こうして、人気ミュージシャンの1人となった彼は、イギリスのガールズグループLittle Mixのシングル「Power」(2017)や、2019年にはEd Sheeranのアルバム「No.6 Collaborations Project」にゲストに抜擢されています。
Ed Sheeranのアルバムのレコーディングセッションでは、JAY-Zと出会い、「単なるキャリアではなく、カルチャーを作れ」とアドバイスを受けたようで「カルチャーは全世界を動かす」と、ストームジーはその言葉に感銘を受けたようです。
アルバムから、ストームジーが参加してシングル化された「Take Me Back To London」はUKチャート1位を獲得し、Jaykae、AitchとのリミックスはYouTubeで1億回再生を記録しています。
Ed Sheeran feat. Stormzy, Jaykae & Aitch - Take Me Back To London (Sir Spyro Remix) (2019)
同年「VOSSI BOP」を収録したセカンドアルバム「Heavy Is the Head」(2019)で再びUKアルバムチャート1位を獲得し、この年の年間アルバムチャートでは5位を記録するヒットを収めました。
約2年ぶりのアルバムは、「世界の頂点に立った気分だ」というコメントからも垣間見えるように、自信に満ちた作品に仕上がっています。
中でも、Ed SheeranとBurna Boyをゲストに迎えた収録曲「Own It」はUKチャートで1位を獲得。
この曲では、Ed Sheeranとの2人編成では満足できず、彼のお気に入りであるラッパーBurna Boyを加え、3人のカルチャーのミックスが世界的なヒットに繋がると語っています。
Stormzy feat. Ed Sheeran & Burna Boy - OWN IT (2019)
おわりに
その後も、Headie One、Dave、Tion WayneといったUKラッパーとのコラボで成功を収め、Burna Boy、Aya Nakamuraなど、国を超えたコラボレーションも実現し、ヨーロッパの音楽シーンで絶大な人気を誇るストームジー。
日本ではUSのラップシーンが注目されがちですが、グライムシーンをメインストリームに押し上げることに成功した彼らのUKシーンにも注目してみるのはいかがでしょうか。
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