音楽は金儲けじゃない──Cordae『The Crossroads』が放つメッセージ
メリーランド州シュートランドが生んだ才能、Cordae(コーデー)。かつて「YBN Cordae」としてYBNの一員だった彼は、独自の視点と表現力で、今や新世代のヒップホップシーンを牽引する存在となっています。
2019年に発表したデビューアルバム『The Lost Boy』は、彼の名を一躍知らしめる原動力となりました。この作品は批評家から高い評価を得ただけでなく、グラミー賞の「最優秀ラップアルバム」にノミネート。さらに、チャンス・ザ・ラッパーとの共演曲『Bad Idea』は「最優秀ラップソング」にもノミネートされ、彼の豊かなストーリーテリング能力と音楽的センスを世界に示す結果となりました。
翌2020年、所属していたYBNが解散すると同時に、名義を現在の「Cordae」へ変更。その勢いは衰えず、2022年には2作目のアルバム『From a Birds Eye View』をリリースして大きな話題を呼びました。エミネムやスティーヴィー・ワンダー、リル・ウェイン、リル・ダークといった超豪華ゲストを迎え、彼の創造力とアーティストとしての存在感がますます注目されることとなります。
そして2024年11月、約2年の沈黙を破って放たれた3作目
『The Crossroads』。この作品には、これまでのキャリアの集大成としての深いテーマと、新たな音楽的挑戦が凝縮されています。コーデー自身も「最もパーソナルな作品」と語るこのアルバムには、聴く者の心に直接訴えかけようとする彼の強い意志が込められています。
レーベル : Art@War Records & Atlantic Records
リリース日 : 2024年11月15日
名前 : Cordae
本名 : Cordae Amari Dunston
年齢 : 27歳
出身地 : メリーランド州シュートランド
最高傑作『The Crossroads』
コーデーは、新作『The Crossroads』を「これまでで最高の作品」と位置づけており、このリリースのタイミングが自分の成長にふさわしいと感じているようです。
前作『From a Birds Eye View』は、逮捕や奴隷牢の訪問、親友の死といった経験を反映したものでしたが、今作はさらに一歩踏み込んだ自己探求の旅の成果と言えます。近年の数年間を振り返り、「人生に実際に触れる時間が、自分をアーティストとして高める助けになった」と語り、ソングライターやラッパーとしてスキルアップを図るために努力を重ねてきたことがうかがえます。
アルバムタイトルの『The Crossroads』にも、彼は深い思いを込めています。「人生の岐路に立つ感覚があったが、1つの選択で人生が決まるわけではない。小さな決断が積み重なって大きな変化を生むんだ」という哲学的な視点を提示し、新たな方向を模索する強い意志を感じさせます。
さらに、2023年には女子プロテニス選手の大坂なおみとの間に第一子となる女の子が誕生。父親としての責任感や家庭を持ったことによる新たな視点が、本作にどのような影響を与えているのかも見どころです。大坂は、娘のシャイを第一に考えて意見をすり合わせていると語り、良好な家族関係のもとでコーデーが得た人生観が音楽に深みをもたらしている可能性があります。
「音楽は金儲けの道具じゃない」
『The Lost Boy』『From a Birds Eye View』ともに全米アルバムチャート13位を記録しつつも、商業的には突出しなかったコーデー。しかし、グラミー賞へのノミネートが示すように、批評家からは常に高く評価されてきました。新作のリリースを控えた彼は、アルバムの初週売上や数字だけで価値を測られる風潮を疑問視。ストリーミング時代の数字が必ずしもアーティストの影響力を正確に反映しないと指摘し、「音楽を金儲けの手段にしてはいけない」というメッセージを発信しています。
例えば初週の売上が振るわなくても、その後アリーナツアーを成功させるアーティストもいるという事実を挙げ、数字だけでは測れない要素があると強調。90年代や2000年代のCDセールスと異なり、ストリーミング換算が音楽の純粋な魅力を正しく評価しているわけではないと懸念を示しています。このような姿勢は、アーティストとしてのプライドと音楽に対する愛情そのもの。こうした信念は、新作『The Crossroads』にも強く反映されているでしょう。
収録曲について
新アルバム『The Crossroads』には、ボーナストラックを含む全17曲が収録されています。カニエ・ウェスト、リル・ウェイン、ジューシー・J、タイ・ダラー・サイン、アンダーソン・パークといったベテランアーティストが名を連ね、27歳という若さでこれだけの面々を魅了する実力がうかがえます。いくつかの楽曲を抜粋して紹介します。
『Summer Drop』
4曲目の『Summer Drop』は、アンダーソン・パークとのコラボで、2024年8月に3枚目のリードシングルとしてリリースされました。テーマは「夏の思い出」。J. コールがプロデューサーを務め、若い頃の苦労や楽しさが共存する地元コミュニティを回想する内容で、希望と現実のギャップが印象的に描かれています。
Cordae feat. Anderson .Paak - Summer Drop
『Nothings Promised』
5曲目の『Nothings Promised』は、約20年前の名曲、Heard 'Em Say (Kanye West)をサンプリング。孤独や偽りの人間関係、家族との関係を振り返りながら、成功を追求する中でも自分の信念を守ることの大切さを表現しています。「明日が約束されているわけではない」という思いが、希望を捨てずに歩み続ける強い意志へとつながっていきます。
Cordae - Nothings Promised
Kanye West feat. Adam Levine - Heard 'Em Say
『Saturday Mornings』
11曲目の『Saturday Mornings』は、リル・ウェインとのコラボで、2024年7月にリードシングルとしてリリース。1960年代に結成されたファンクバンドFather’s Childrenの楽曲をサンプリングしたソウルフルなビートを使用し、互いの人生や挑戦を語り合う1曲です。物質的な成功以上に、真のつながりや愛を求める姿勢が印象的。子供の頃からリル・ウェインに憧れたというコーデーの想いが色濃く込められています。
Cordae feat. Lil Wayne - Saturday Mornings
Father's Children - I Really Really Love You
『Two Tens』
アルバムを締めくくる『Two Tens』は、再びアンダーソン・パークとのタッグで、J. コールがプロデュースを手掛けた作品。人生の楽しさや人間関係を多角的に描き出し、互いを高め合いながら音楽を作り上げる姿勢が伝わります。物質的なものに惑わされず、本質を追求するというメッセージが鮮明で、聴く者に前向きなエネルギーを届ける曲となっています。
Cordae feat. Anderson .Paak - Two Tens
おわりに
コーデーにとって3作目にあたるアルバム『The Crossroads』では、これまでのキャリアや人生で経験してきた苦悩と学びが深く掘り下げられ、より本質的な音楽へ昇華しようとする姿勢が感じられます。古今の名曲を巧みにサンプリングしながら、ヒップホップの伝統と新しい時代の感性を掛け合わせることで、懐かしさと先進性を同時に楽しめる仕上がりになっています。
商業的な成功や初週売上などの数字に左右されず、音楽の力を純粋に信じる意志からは、アーティストとしての強い思いがうかがえます。さらに、大切な家族が増えたことをきっかけに得た新しい視点が、作品の奥行きを深める要素にもなっています。聴き手の心に響くメッセージや卓越したラップスキル、そして豪華ゲストとの協演による化学反応が重なり合い、
『The Crossroads』には成熟したアーティスト像が映し出されているように思われます。
過去から現在、そして未来へと進む音楽の旅を、コーデーは今後も探求し続けていくのではないでしょうか。ヒップホップシーンを牽引する若き才能による本作が、ファンや批評家の耳をさらに引き寄せ、多くのリスナーに新鮮な刺激を与える一枚になることが期待されています。
関連記事はこちら
今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️
※ DIGTRACKS.comは、音楽プロモーター、音楽業界に携わるプロフェッショナル(DJなど)専門のデジタル・レコードプールサービスです。
ご利用の際は必ず「ご利用規約」をご確認ください
最新HITチャート Digtracks.com ランキング #hiphop #rnb #dj #新譜