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シェンシア:ニューアルバム『Never Gets Late Here』レゲエの枠を超えた新境地
ジャマイカ、キングストン出身のShenseea(シェンシア)は、ジャマイカ人の母親と韓国人の父親の間に生まれました。
彼女は19歳で息子を出産し、その後、本格的に音楽キャリアをスタートさせます。2016年には、ヴァイブス・カーテルのシングル「Loodi」のリミックスで一躍注目を集めました。この成功を契機に、彼女はKonshensやショーン・ポールといった地元の人気アーティストとのコラボレーションを通じて、ジャマイカの音楽シーンで名声を確立します。
その後、Shenseeaはクリスティーナ・アギレラ、タイガ、マセーゴなどの国際的なアーティストとも共演し、Interscope Recordsと契約を結ぶなど、ジャマイカからアメリカの音楽シーンへと飛躍しました。
2021年には、カニエ・ウェストのアルバム『DONDA』に客演として参加し、翌年にはカルヴィン・ハリスのアルバム『Funk Wav Bounces Vol. 2』(2022)にゲストとして招かれました。同年、待望のデビューアルバム『Alpha』をリリースし、レゲエアルバムチャートで2位を記録。2023年には、アメリカ最大の音楽フェス「コーチェラ」にも出演し、今最もホットなレゲエアーティストの1人となっています。
そして2024年5月、彼女のキャリア2枚目となるアルバム『Never Gets Late Here』がリリースされました。今回のアートワークは、前作『Alpha』の爽やかなブルーのトーンとは対照的に、情熱的な赤を基調としています。
本記事では、この最新作に焦点を当て、その魅力に迫ります。
レーベル : Rich Immigrants & Interscope Records
リリース日 : 2024年5月24日
名前 : Shenseea
本名 : Chinsea Linda Lee
年齢 : 27歳
出身地 : ジャマイカ、キングストン
カニエ・ウェストとのコラボから見える新たな扉
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シェンシアは、母国ジャマイカにおいて、ペプシジャマイカやエナジードリンク会社など、数々の企業とCM契約を結び、音楽シーンを超えて多くのメディアからも注目を集めています。Interscope Recordsと契約後、2019年に発表したタイガとのコラボシングル『Blessed』は、レゲエ・デジタル・ソング・チャートで2位を獲得し、多くのオーディエンスが彼女の名を知ることとなりました。
その後、シェンシアのキャリアにおいて重要な転機となったのは、カニエ・ウェストのアルバム『DONDA』に収録された「Pure Souls」と「OK OK pt 2」へのゲスト出演でした。特に「Pure Souls」は全米シングルチャートで52位を記録し、これはジャマイカの女性ダンスホール・アーティストとしては、2004年にMs. Thingがビーニ・マンとのコラボシングル「Dude」でチャートインして以来、実に17年ぶりの快挙となりました。
カニエの『DONDA』は全米アルバムチャートで1位を獲得し、グラミー賞「最優秀アルバム賞」にもノミネートされるなど、その年を象徴する作品として大きな成功を収めました。
このアルバムに参加したことで、シェンシアのキャリアにも大きなプラスの影響があり、彼女は様々な新しいチャンスを手に入れることができました。シェンシア自身もこの経験が自分のキャリアにとって大きな転機であったと感じているようです。
物事が変わったと感じた瞬間のひとつは、カニエとコラボしたときだったわ。ファッション、ヒップホップ、さまざまなアーティストが手を差し伸べてくれて、全く別のタイプの扉を開けてくれた感じがしたの。カニエは、アーティスティックであると同時に、見ていてクールな人だと思うわ。いつも楽しませてくれるの。私が彼と関わったことで、多くの扉が開かれたような気がするの。
シェンシアは、アルバム『DONDA』への参加を通じて、グラミー賞ノミネートという貴重な経験を積みました。彼女は、この経験を糧に、自身の音楽においてもグラミー賞を受賞することを大きな目標としています。特に、レゲエの分野で成功を収めることで、自らのルーツに敬意を表したいと考えているようです。
絶対に手に入れたいものの1つは、グラミー賞なの。ノミネートされるだけでもね。他のグラミー賞を獲る前に、まずレゲエのグラミー賞を獲りたいっていつも言っているの。なぜなら、私の故郷だからね。自分のためだけに獲りたいのではなく、国のために、家族、友人、一緒に成長してきた人たち、チームのために獲りたいの。
収録曲について
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新作には全14曲が収録されており、ジャマイカ出身のプロデューサーDi GeniusやMasicka、またブラジル出身のAnitta、さらにはナイジェリア出身のWizkidやアメリカ出身のCoi Lerayなど、多彩なアーティストがゲスト参加しています。
また、今作のエグゼクティブプロデューサーには、アリアナ・グランデやドレイクの楽曲を手掛けたことで知られるLondon on da Trackが務めています。彼は、前のアルバムでもシェンシアと共同作業を行っています。
加えて、シェンシアやR&Bシンガーのサマー・ウォーカーと、過去に男女の関係で話題になったこともあり、そのプライベートな面でも注目を集めています。
『Hit & Run』
2曲目収録の『Hit & Run』は、ジャマイカ出身のDi GeniusとMasickaとのコラボレーションで、2024年1月に先行シングルとしてリリースされました。この曲のミュージックビデオはYouTubeで公開され、リリースから24時間足らずで150万回の再生を記録し、ジャマイカのYouTubeトレンドの1位を獲得しました。
歌詞では、シェンシアとMasickaが一夜限りの関係に対する異なる視点を歌っています。シェンシアは自立しており、深い関係や安定を求めておらず、ただ楽しい時間を過ごし、自由でいたいと強調しています。Masickaのパートでは、彼がシェンシアとの関係を持ちたいと思っているものの、彼女の軽い態度に戸惑っている様子が描かれています。
Shenseea feat. Masicka, Di Genius - Hit & Run
『Neva Neva』
4曲目『Neva Neva』は、フックのフレーズ「Never, Never」が中毒性が高く、耳に残るレゲエナンバーです。
この曲では、恋愛における混乱と感情の浮き沈みを描いています。主人公は、恋人が問題を引き起こすと最初から知っていましたが、それでも愛を与えてしまい、感情が高ぶる経験をしています。
昼夜問わず恋人のことを考えてしまい、永遠に続く愛を望んでいます。
Shenseea - Neva Neva
『Flava』
9曲目『Flava』は、Coi Lerayとのコラボ曲で、ベース音が効いたファンク調のR&Bナンバーに仕上がっています。この曲では、シェンシアとCoi Lerayが自分たちの魅力やスタイル、自信について歌っています。彼女たちは、自分たちが他の人々からどれだけ注目され、称賛されているかを強調し、自分たちのフレーバー(独自の魅力やスタイル)がどれだけ特別かをアピールしています。
Shenseea feat. Coi Leray - Flava
『Work Me Out』
アルバムのエンディングトラック『Work Me Out』は、Wizkidとのコラボ曲で彼らしいアフロビーツ調のナンバーに仕上がっています。
この曲の歌詞は、一夜限りの情熱的な関係を描いており、シェンシアとWizkidは、お互いに「一晩だけ」を楽しむことに焦点を当て、深い感情や長期的な関係を求めずに、身体的な魅力とセクシーなダンスを楽しむことを歌っています。シェンシアはダンスフロアで自由に踊り、Wizkidはその瞬間を楽しむことを強調しています。
Shenseea feat. Wizkid - Work Me Out
おわりに
前作では、21サヴェージ、ミーガン・ジー・スタリオン、オフセットなどのラップスター、さらにビーニ・マンやショーン・ポールといったジャマイカのベテランが参加していました。しかし、今作では、これらのスターが必要とされないほど、この2年間でのシェンシアの成長が顕著となりました。
アルバムの前半は、彼女の得意とするレゲエビートを中心に構成されています。一方、アルバムの後半では、R&Bナンバー『Flava』、ラテントラップ調の『Red Flag』、そしてポップなナンバー『Stars』など、バラエティに富んだビートが取り入れられています。
シェンシアは、ジャマイカ出身であるからといって必ずしもダンスホールやレゲエといった伝統的なジャマイカの音楽ジャンルに縛られる必要はないと考えています。彼女は、自分の本当にやりたい音楽やアートを追求することの重要性を強調しています。
私たちが一緒に立ち上がることで、もっといろんなことができる気がするの。ジャマイカ出身だからって、ダンスホールやレゲエだけにこだわる必要なんてないわ。ジャマイカには才能あふれる人がたくさんいるけど、特定のジャンルに縛られないといけないって思い込んでる人もいるのよ。ジャマイカ人だって、R&Bが好きでR&Bをやりたいって思うアーティストもいるんだから。このアルバムがみんなの視野を広げて、自分にとって一番真実を語るアートになるといいなって思ってるの。
このようにシェンシアは、自身の音楽的なルーツとアイデンティティを大切にしながら、多様なジャンルを巧みに取り入れることで、新たな音楽の扉を次々と開いています。
最新アルバム『Never Gets Late Here』は、彼女の進化と多才さを余すところなく表現した傑作であり、リスナーに多彩な音楽の魅力を存分に堪能させます。
ジャマイカの音楽シーンを飛び超えて、世界へと羽ばたく彼女の姿に、今後ますます注目が集まることでしょう。
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