ケンドリック・ラマーへの楽曲もiPhoneだけで制作!! 今ヒット中のスティーブ・レイシーとは?
ケンドリック・ラマーの「Damn」(2017)やカニエ・ウェストの「Donda」(2021)への楽曲提供など、数々のプロデュースワークでその才能を開花させた、業界屈指のアーティスト、Steve Lacy (スティーヴ・レイシー)。
2022年にはシングル「Bad Habit」(2022)が全米チャート2位を記録し、メインストリームにその名を刻みましたが、彼の功績はあまり知られていません。
ここでは、彼のこれまでのキャリアを紹介します。
レーベル : L-M Records & RCA Records
リリース日 : 2022年6月29日
名前 : Steve Lacy
本名 : Steve Thomas Lacy-Moya
年齢 : 24歳
出身地 : カリフォルニア州コンプトン
Steve Lacy - Bad Habit (2022)
PCを買えないためiPhoneでビートメイクしていた?!
アフリカ系アメリカ人の母とフィリピン人の父の間に生まれたスティーブ・レイシーは、カリフォルニア州コンプトンで育ちました。
コンプトンはギャングや貧困、犯罪率の高さで知られる地域で、子を危険にさらしたくない母親に過保護に育てられたと、自分の生い立ちを振り返っています。
決して自由とは言えない環境で育ちましたが、母親をはじめ、コンプトンがネガティブな地域としてイメージされていることに悲しみを覚えたようです。
また、そう語る彼の胸には「コンプトン」タトゥーが刻まれています。
その後、7歳のときにビデオゲーム「ギターヒーロー」で初めてギターに興味を持ち、すぐに本物のギターで弾けるようになりたいと思ったといいます。
そして、iPhoneとiRigオーディオ・インターフェイスを使って曲を制作するようになったのです。
また10代の頃、毎年来るクリスマスに母親にMacbookを頼んだようですが、一度ももらえず、代わりに彼はiPodを使って、iMPC、BeatMaker 2、GarageBandなどのアプリでビートを制作していたそうです。
また、高校生の時にバンドThe InternetのメンバーJameel Brunerと出会い、彼らの3枚目のアルバム「Ego Death」(2015)をプロデュース。
同作は2016年のグラミー賞で「ベスト・アーバン・コンテンポラリー・アルバム」にノミネートされ、業界の注目を集めました。
The Internet - Get Away (2015) (Pro. Steve Lacy)
ケンドリック・ラマーのビートもiPhoneで制作していた?!
これをきっかけに、J. Cole、Twenty88、Denzel Curry、Isaiah Rashad、GoldLinkなどのプロデュースやソングライティングを担当し、ケンドリック・ラマーのグラミー賞受賞アルバム「Damn」(2017)収録の「Pride」では、プロデュースとバックコーラスを担当しました。
まさかと思いますが、この曲のビートもiPhoneで制作しており、第一線で活躍するアーティストとのコラボレーションについて次のように語っています。
Kendrick Lamar - Pride (2017)
スティーブ・レイシーは、2017年に本格的にソロキャリアをスタートさせ、デビューEP「Steve Lacy's Demo」をリリース。
彼はこの作品のほとんどをiPhoneで制作し、ギターやベースのアレンジを行い、内蔵マイクでボーカルを録ったようです。
また、収録曲の「Dark Red」は、2021年8月にTikTokでバイラルヒットし、この曲を使った動画は11万回以上再生されています。
Steve Lacy - RYD / DARK RED (2017)
続く2019年には、全曲セルフプロデュースしたデビューアルバム「Apollo XXI」をリリースし、グラミー賞「ベスト・アーバン・コンテンポラリー・アルバム」にノミネート、ソロとしては初めてのノミネートとなりました。
また、同時期にSolange、Kali Uchis、The Internet、Mac Millerと幅広いアーティストを手掛けていますが、「カメレオンのような存在でいたいんだ」と彼は言い、こうした状況を新たなバイブスを生み出す原動力としているようです。
Steve Lacy - N Side (2019)
その後、2020年にコンピレーションアルバム「The Lo-Fis」(2020)をリリースし、翌年にはKanye Westのアルバム「Donda」(2021)の「Believe What I Say」のソングライターとして抜擢され、その才能はKanye Westからも認められたようです。
2ndアルバムは自身初の全米チャートトップ10入りを果たす
トップアーティストから次々に来るオファーをこなし続けていた彼は、2022年に待望のセカンドアルバム「Gemini Rights」をリリース。
全10曲収録で、自身のバンドThe Internetのキーボーディスト、Matt Martiansが唯一ゲスト参加しています。
Steve Lacy, Matt Martians - 2Gether (2022)
アルバムを制作するにあたって、とある人物からの質問にスティーブ・レイシーはこう気付かされたと答えています。
「感情に近づいた」と語った彼のアルバムは、全米チャートで7位、R&B/Hip Hopyチャートで3位を記録し、自身、初のトップ10入りを果たしました。
また、アルバムからのリードシングルの「Bad Habit」(2022)は、全米チャートで2位、ビルボードのR&B/Hip Hopチャートを含めた5つのチャートで1位を獲得。
6月に公開されたこの曲は、Spotifyで早くも2億回のストリーミングを記録し、世界中のオーディエンスを魅了しているようです。
おわりに
iPhoneでビートメイクをすることでキャリアをスタートさせ、一見すると
イロモノプロデューサー見えますが、その才能に惹かれたアーティストは
多く、今作でようやくオーディエンスに知られるようになりました。
また、彼はアルバム「Gemini Rights」の制作過程から、"人間はわざわざ愛を小さくしてしまっている"という事実に気付き、こう語っています。
スティーブ・レイシーの『愛』は今後どのような形で届けられるのでしょうか。
彼のプロデュース力や作品が全米で注目されている中、今後も目が離せませんね!
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