ビートとライムの共鳴:アミーネとケイトラナダの「KAYTRAMINÉ」誕生秘話
ハイチ系カナダ人の音楽プロデューサー、Kaytranada(ケイトラナダ)は、2016年の初の長編アルバム「99.9%」で高評価を受け、その後もChance the RapperやKendrick Lamarなどの著名ラッパーに楽曲を提供するなどして、人気プロデューサーとしての地位を確立しました。
彼の次なるアルバム「Bubba」は2019年にリリースされ、全米ダンス/エレクトロニックチャートで首位を獲得するなどの成功を見せ、さらにグラミー賞でも2つのカテゴリーでノミネートされました。
一方、オレゴン州ポートランド出身のラッパーAminé(アミーネ)は、2016年にデビューシングル「Caroline」をリリース。これがR&B/Hip Hopチャートで5位にまで上り詰めたことで、彼は注目を浴び、Republic Recordsと契約を結ぶことに成功しました。
その後も彼の活動は止まることなく、2017年には初のアルバム「Good for You」をリリースし、2020年には2作目のアルバム「Limbo」が全米チャートトップ20入りを果たしました。また、2021年にはさらなるEPやミックステープをリリースするなど、精力的に活動を続けています。
そして今回、彼らはKAYTRAMINÉとしてコラボレーションアルバム「KAYTRAMINÉ」(2023)をリリースしました。本記事では、この待望の新アルバムについて詳しく解説していきます。
レーベル : Club Banana & Kaytranada Music & Publishing
リリース日 : 2023年5月19日
名前 : KAYTRAMINÉ
本名 : Kaytranada / Louis Kevin Celestin
Aminé / Adam Aminé Daniel
年齢 : Kaytranada / 30歳
Aminé / 29歳
出身地 : Kaytranada カナダ、モントリオール
Aminé オレゴン州ポートランド
2人の出会いと制作の舞台裏
アミーネとケイトラナダの初めての接点は、アミーネがまだあまり知られていなかった2014年にさかのぼります。彼はケイトラナダのトラック「At All」をリミックスした「Not at All」をSoundCloudにアップロードしました。その曲を聴いたケイトラナダは、アミーネに連絡を取り、彼に無償でビートを提供することを申し出ました。アミーネは、ケイトラナダが彼の音楽を最初に認めてくれた人物の一人であるとを話しています。
2015年には、アミーネはケイトラナダがプロデュースした3曲を収録したミックステープ「Calling Brio」をリリースしました。このミックステープのリリース前、アミーネは自身のラッパーとしてのキャリアを断念しかけていたようで、彼はケイトラナダのサポートがなければ今の自分は存在しなかったかもしれないとTwitterで述べています。
最初の出会いから約7年後の2021年、アミーネとケイトラナダはカリフォルニア州マリブで家を借り、2週間にわたりノンストップでレコーディングを行いました。
その過程で、ケイトラナダはトラックを制作するためのサンプルを数ヶ月かけて探し、ボリウッド映画(インド映画業界のこと)を含む様々なソースからインスピレーションを得たようです。
制作方法については、ケイトラナダが昼間にビートを作り、アミーネが夜にそのビートに対する歌詞を書いていったようで、2人だけの制作は驚くほどスムーズに進んだことをアミーネは明かしています。
2023年4月、2人は各自のSNSでデュオ「KAYTRAMINÉ」の結成を公表し、「新作アルバム近日発売」との情報も同時に発表しました。このデュオ名を発表するため、彼らはサンプラーを用いて、二人の名前のボイスサンプルを操作し、デュオ名を明かすというユニークなティーザー映像をSNSに投稿しました。
アルバムについて
こうしてリリースされた今作には、全11曲が収録されており、Snoop Dogg、Pharrell Williams、Big Sean、Freddie Gibbsなどがゲスト参加しています。
「Who He Iz」
アルバムのオープニングトラック「Who He Iz」は、ニューヨーク出身の伝説的ラッパー、The Notorious B.I.G.が生前にロンドンで行ったライブからのサンプリングを特徴としており、アルバムが始まる瞬間からエネルギーを注入しています。
KAYTRAMINÉ - Who He Iz
The Notorious B.I.G - full concert live in London 1995
「letstalkaboutit」
2曲目の「letstalkaboutit」は、インディアナ州ゲーリー出身のラッパーFreddie Gibbsをフィーチャーしています。
この曲では、イギリスのバンドBoth Hands Freeと、R&BプロデューサーのJermaine Dupriをサンプリングし、これらの要素がケイトラナダの世界観をさらに広げています。
KAYTRAMINÉ feat. Freddie Gibbs - Letstalkaboutit
Both Hands Free - Phobos (1976)
Jermaine Dupri feat. Clipse Let's Talk About It (2001)
「4EVA」
「4EVA」はアルバムの3曲目で、Pharrell Williamsがゲストとして参加しています。この曲は、アップテンポでダンサブルなトラックから始まり、後半にはビートがスイッチしてアミーネの優しい歌声が響くメロウな曲に変わります。ミュージックビデオの監督はJack Begertが務め、彼の過去の作品にはKendrick LamarやLil Nas X、Doja Catなどが含まれています。
KAYTRAMINÉ feat. Pharrell Williams - 4EVA
「Master P」
「Master P」はアルバムの5曲目で、Big Seanがゲスト参加しています。この曲では、インド映画界で数多くの楽曲を提供してきたシンガー、Asha Bhosleの音源が巧みにサンプリングされています。これにより、アルバムにエキゾチックなエッセンスが加えられています。
KAYTRAMINÉ feat. Big Sean - Master P
Asha Bhosle & Suresh Wadkar - Yeh Hawa Yeh Fiza (1983)
「Rebuke」
アルバムの6曲目に収録されている「Rebuke」は、2分未満という短さながらも、深い感動を伝えるトラックです。この曲は、ブラジルの著名なシンガーLô Borgesのフレーズが全体を通じてサンプリングされ、さらに曲のフック部分ではテキサス出身のシンガー、Trina Broussardの美しい歌声が取り入れられています。この楽曲は落ち着いたムードを醸し出し、リスナーをゆったりとした世界に浸らせます。
KAYTRAMINÉ - Rebuke
Lô Borges - Tudo Que Você Podia Ser (1979)
※「Rebuke」の0:18〜
Trina Broussard - Inside My Love (1997)
おわりに
ケイトラナダは、これまでにもIDKやJoyce Wrice、JIDなどの若手アーティストを手掛け、その経験を生かしたプロダクションでアミーネの個性を損なうことなく素晴らしい仕上がりになっています。
しかしながら、アミーネは「Caroline」以降、全米チャートで成功を収めることができていませんでした。彼がケイトラナダと再びタッグを組むことで、果たして彼の音楽キャリアは新たな活力を取り戻すことができるのでしょうか?
今後の彼らの音楽活動は、音楽ファンにとって見逃せない展開となるでしょう。
今回紹介した楽曲のDJプロモーション音源はこちら⬇️⬇️⬇️
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