若き才能が放つ!Mos Defの娘Laila!が語る、デビューアルバム『Gap Year!』の魅力
音楽業界におけるR&Bは、深い表現力と豊かな感情表現が重要とされるジャンルです。しかし、驚くべきことに、数々の成功を収めたアーティストたちの多くは、非常に若い年代でデビューを果たしています。彼らは10代という多感な時期に音楽の世界に飛び込み、独自のスタイルで新たな風を吹き込みました。その影響は音楽にとどまらず、ファッションやカルチャーにも広がっていきました。
1990年代には、ブランディが15歳でデビューアルバム『Brandy』をリリースし、注目を集めました。彼女とコラボレーションしたモニカも14歳でデビューし、共にR&Bシーンに新たな息吹をもたらしました。さらに、アリーヤは14歳でデビューアルバム『Age Ain't Nothing but a Number』を発表し、その影響は今もなお、次世代のアーティストたちに大きな影響を与え続けています。彼女たちの若き成功は、音楽だけでなく、新しいアーティストにとっても大きな道しるべとなりました。
そして今回紹介するのは、ニューヨーク・ブルックリン出身のシンガー、Laila!(ライラ)です。彼女は18歳という若さで、2024年9月にデビューアルバム『Gap Year!』をリリースしました。本記事では、10代でデビューした彼女のこれまでのキャリアと、新作アルバムの魅力を詳しくご紹介します。
レーベル : IIIXL Studio
リリース日 : 2024年9月6日
名前 : Laila!
年齢 : 18歳
出身地 : ニューヨーク、ブルックリン
父・Mos Defから受け継いだアーティスト魂:Laila!の成長物語
新アルバムに触れる前に、まずはLaila!のこれまでのキャリアと人物像を振り返ってみましょう。
2006年に誕生したLaila!は、幼い頃からマイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンに夢中でした。彼らのミュージックビデオを繰り返し観ては、ダンスを真似し、パフォーマンスに魅了されていたといいます。
さらに、彼女は両親からの絶え間ない応援に感謝を示し、その支えが彼女にとって挑戦の原動力となったと語ります。
そんなLaila!の父親は、90年代から2000年代にかけてラッパーとして活躍したMos Defとして知られ、グラミー賞にもノミネートされています。また、俳優名義のYasiin Beyとしても30本以上の映画に出演し、2022年にはTalib KweliとのラップデュオBlack Starとしてアルバムを発表するなど、現在も精力的に活動を続けています。
Laila!は幼少期から独自のスタイルを持ち、常に自分をアーティストとして意識していたようです。父親と音楽を楽しむ中で、その個性を父親にも認められていたと語っています。
コロナ禍で見つけた新たな才能:ビートメイクへの挑戦
Laila! は14歳のとき、自宅でのオンライン授業を受けながら音楽プロデュースを始めました。新型コロナウイルスの影響で、母親の提案により セント・トーマス島に移住し、ビーチで授業を受けながら音楽制作にも取り組むようになります。
Laila! は Apple の音楽制作ソフト GarageBand を使い、自ら試行錯誤しながらビートメイクのスキルを身につけました。彼女は、誰かに教わるのではなく、自分で学ぶことに楽しさを感じ、失敗しながらも前向きに挑戦を続けることで、独自のスタイルを形にしていったようです。
こうして独学で培ったスキルを活かし、彼女はセルフプロデュースによるインスト曲をリリース。SoundCloud には、ブランディやアリーヤをサンプリングしたビートが今でも公開されていて、彼女の音楽への情熱が感じられます。
デビューシングル『Like That!』
2023年3月、Laila! はセルフプロデュースしたデビューシングル『Like That!』をリリースしました。この曲は2024年にTikTokでバイラルヒットとなり、70万本以上の動画で使用され、Spotifyでは3000万回のストリーミングを記録しました。この楽曲は、新アルバム『Gap Year!』にも収録されています。
Laila! は『Like That!』が人気を博したことに驚きを隠せない様子で、姉の励ましによって公開する決心をした経緯を語っています。高校を卒業後、大学に進学するかどうか迷っていたものの、最終的に音楽制作に専念する道を選びました。
Laila! - Like That!
『Like That!』では、愛や人間関係に対する複雑な感情が描かれており、歌詞の中で彼女は、相手に対して「本当に欲しいのか」「愛してほしいのか」と問いかけ、速く進む人生の中で感じる愛の強さや不安を率直に表現しています。
Laila!の歌詞は、彼女自身の内面的な葛藤や成長を反映しており、多くのリスナーが抱える普遍的なテーマに触れています。このようなリアルな感情の表現が、彼女の楽曲を特別なものにしています。
EP『IN CTRL!』
2024年2月、Laila!は全曲セルフプロデュースによる4曲入りEP『IN CTRL!』をリリース。6月にはアルバムからのセカンドシングル『Not My Problem』を発表しました。この曲では、他人の批判や噂に無関心で、自分の課題にのみ集中するという明快なメッセージが込められています。周囲に惑わされず、自分自身の世界を守り抜く姿勢が強く表現されており、多くのリスナーの共感を呼びました。
さらに8月、ニューヨーク出身のプロデューサー兼ラッパーCash Cobainがリリースしたシングル『problem』でこの楽曲がサンプリングされ、FabolousやBig Seanをはじめとする10名以上のラッパーが参加。Laila!の音楽が他のアーティストに影響を与え、広がっていく様子は、彼女の成長と存在感を一層際立たせています。
Laila! - Not My Problem
Cash Cobain & Laila! feat. Fabolous, Kenzo B, Big Sean, Lay Bankz, Luh Tyler, Anycia, Chow Lee, Kaliii, 6LACK, Flo Milli, YN Jay, Flee, Don Q & Rob49 - problem
収録曲について
Laila!は自身のInstagramを通じて、デビューアルバム『Gap Year!』に関する感情を率直に伝えています。彼女は、高校を1年早く卒業し、大学に進学することは全く計画していなかったと明かしました。その結果、ギャップイヤー(学業や仕事を一時中断して自己成長や経験を積むための休暇。)を取ることにしたと語っています。母親もこの選択にパニックにならず、支えてくれたことに感謝しているようです。
こうした背景から名付けられたアルバム『Gap Year!』は、全17曲が収録されており、Laila!自身が全曲をプロデュースした渾身の作品となっています。
『R U Down?』
3曲目『R U Down?』は、リードシングルの2曲とは異なり、ミッドテンポの心地よいビートが特徴です。シンセサイザーの音色とLaila!の歌声が絶妙にマッチしたこのナンバーは、相手に自分の感情を率直に伝えてほしいという願いが込められています。
歌詞の中では、主人公が相手に対して「一緒に困難を乗り越えていけるかどうか」を問いかけています。また、感情を共有し、関係を深めたいという願望が歌詞全体に流れています。
Laila! - R U Down?
『Want 2』
5曲目『Want 2』は、浮遊感のあるトラックに乗せて「一緒に行こう、1人にしないでほしい」といった切実な思いを相手に伝えつつ、自己表現の強さを際立たせています。この曲には、Laila! 自身が魅力的で自信に満ちた存在であり、相手もそのことを理解しているというメッセージが込められています。
さらに、音楽を通じて相手への思いを伝え、自分の存在感や「大胆でカッコいい」一面を表現しています。Laila! の高い自己肯定感と他者とのつながりを大切にする姿勢がこの曲には込められており、聴く人に強いインスピレーションを与えるでしょう。彼女の音楽を通して、自己表現の大切さを再認識させる1曲です。
Laila! - Want 2
『Blackberry (Date 4 Prom)』
9曲目『Blackberry (Date 4 Prom)』は、ジョージア州アトランタ出身のR&BグループMistaの名曲『Blackberry Molasses』(1996)をサンプリングしています。Bobby Valentinoがかつて所属していたこのグループは、マネジメントの問題で短命に終わりましたが、彼はソロアーティストとして大きな成功を収めました。
この曲では、「愛されたい」という切実な願いと、相手への不安を抱えながらも、自分の強さを見つけ、前へ進む決意が描かれています。18歳を迎えた自己変化や、自らの未来を切り開く力強さも表現されています。
Laila! - Blackberry (Date 4 Prom)
Mista - Blackberry Molasses (1996)
おわりに
Laila! は、まだ若いながらも、その音楽キャリアで他のアーティストとは一線を画す存在感を放っています。幼少期からさまざまな音楽に影響を受けながら、彼女はセルフプロデュースに挑戦し、自分だけの独自な音楽スタイルを磨き上げてきました。その結果、彼女の楽曲には若さを超えた成熟したメッセージが込められており、聴く者に強く訴えかける力があります。
特に注目すべきは、彼女が表現する自己肯定感とエンパワーメントのメッセージです。自分の強さを信じ、未来を切り開こうとする姿勢は、同世代だけでなく、幅広いリスナーに共感を与えています。TikTokでバイラルヒットを飛ばしたシングル『Like That!』『Not My Problem』は、彼女の才能が多くの人々に支持されている証拠です。
さらに、彼女はグラミー賞を見据え、その夢に向かって着実に歩みを進めています。「グラミー賞に出ている私たちの姿が見えるわ」と語る彼女の言葉には、冗談めかしたユーモアの裏に、揺るぎない自信と決意が感じられます。彼女はただの若きアーティストではなく、次世代のアイコンとして音楽業界に新たな風を吹き込もうとしているのです。
そして、これからのLaila! の活躍も見逃せません。彼女の音楽とその背後にあるストーリーは、これからさらに多くの人々に影響を与え、次世代をリードするアーティストとしての道を切り開いていくことでしょう。
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